【感想・ネタバレ】天平の甍のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年04月26日

本書は8世紀の奈良時代に第九次遣唐使として留学する4人の日本人僧侶を中心にして、後半は6度にもわたる挑戦で訪日をはたす鑑真の物語です。当時の日本人にとっては海外に行くことは命がけで、しかも船はそんなに頻繁に出ていない。無事に唐に渡れても帰ることができるのは何十年後の可能性もあって、帰りも無事に帰れる...続きを読む保証はない。そんな中当時の日本人の中でも外国文化を日本に持ち帰る重要な役割を果たしていたのが僧侶でした。

本書の中では唐に渡る4人の日本人留学僧と、唐で写経をひたすら続けている業行という5人の日本人僧侶が中心になりますが、それぞれの性格が違っていて、自分だったら誰のタイプになるかなと考えさせられました。もちろん訪日を果たした鑑真和上の偉大さはわかるのですが、個人的には無名の日本人留学僧が積み上げてきたもの、あるいは無念となったものが歴史となって日本を形作ってきたと思います。本書は用語が難解なところもかなりありますが、無意識のうちに自分を留学僧の誰かに重ね合わせながら、自分自身が8世紀の奈良および唐にいるような気分になりました。

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Posted by ブクログ 2022年12月16日

読みにくかったなぁ。
言葉使いの難しさ、人名の読みにくさ。
文学というより記録文ではないかと思うようなデータの記述。
もう途中で投げ出そうかと一度だけ思った。
不思議なことに一度きりで、そのあとは読みにくいと感じながらも話が普照と鑑真の日本渡来に絞られてくると、多くの身内からさえも白眼視されるその目...続きを読む的を果たすための彼らの命がけの熱意が私にページをめくらせてくれました。
そうか、鑑真が日本に渡って仏教の何たるかを教えたからこそ日本における仏教が本物のものになったのか。
小学校で習ったかなあ?
視力を失った鑑真和上像の写真が思い出されるだけだ。

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Posted by ブクログ 2022年04月18日

我が国の元祖国費留学生達の使命感と壮絶な人生に圧倒された。若い人、特にこれから留学する人達には是非読んでほしい。
それにしても、鑑真和上の不屈の意志にはただただ頭が下がる。歴史の教科書でサラッと語られている苦難の渡日がこれほどのものだったとは。「偉人の偉さ」を改めて感じることができる良著です。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年10月25日

高僧を日本に連れてくる使命を受け、遣唐船に乗って普照ら若い僧4人は荒れる海を渡り、唐に留学した。無事に帰国できるか、何者かになれるかもわからない。4人僧の、そして写経に没頭する貧相な中年の日本人僧の運命は…

史実の詳細が物語のスケールの大きさを感じさせてくれます。仏教の用語や唐の時代の中国の地名が...続きを読む多く、1ページ目を開いた瞬間くじけそうになりましたが、地図をみながら主人公たちの足取りをたどりながら読み進めました。

くじけそうな人はネタバレを読んでから本を読んだ方がいいかもしれません。

学ぶことって何だろう。自分にできることってなんだろう。人の価値観ってなんだろう。
考えさせてくれます。

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Posted by ブクログ 2020年08月16日

それぞれの信じた道を進んだ結果が人生だが、その結果は自然や時の流れといった抗いようのないことに大きく影響される。はるか昔に起こった出来事だが、海を隔てて命がけで行き来した遣唐使という特殊な環境だからこそ浮かび上がる人生の真相がある。鑑真という人物に興味をもちながら今まで手にしてこなかった天平の甍であ...続きを読むったが、読み終わった今、改めてそのことに想いを馳せている。時の流れの中に折り重なって刻まれている幾多の物語の結果として今私はここにいるのであるが、きっとこの本に出て来た人たちと同じように流れに飲み込まれながら自分の物語を紡いて時の流れの彼方に消えて行くのだろう。読む人の年代によって捉え方が変わる小説だと思う。

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Posted by ブクログ 2020年04月01日

鑑真来日に尽力した留学僧や同時に唐へやって来た僧侶たちの小説
漢字だらけな割に読みやすい
人生色々、皆違って皆いいと感じました

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Posted by ブクログ 2018年10月08日

言わずと知れた井上靖の代表作。
唐招提寺のお土産屋にも置いてありましたf^_^;(さすが)
そんなわけで
この寺に纏わる小説だってことだけは知っていたのですが
イコール、もっと鑑真和上寄りの話だとばかり思ってました。
主人公は「普照(ふしょう)」と「栄叡(ようえい)」という日本人留学僧2人です。
...続きを読む前だけは、唐招提寺HPの「唐招提寺とは」から「鑑真大和上」を辿って鑑真和上の紹介文の中にチラッと出ています。
結局この本を一言だけで表せ、というなら、
この2人の冒険物語と言い切ってもいい。
と言っても、2人を前面に押し出したワケでもなく
視点は常に曠然たる中国の大地。そこに聳える大伽藍。
留学僧たちの…というより、人間たちの、なんと小さい…
しかしその一滴から始まる歴史の波があっちへこっちへぶつかって
ついに2つの国の歴史を揺さぶっていく様は
わずか200ページの小説でありながら、まさに「大河」と呼ぶに値します。

表紙を開けると
この小説に関わる地図が折り込まれています。
現代の感覚では何のことはない、飛行機で数時間程度の距離ですが
1250年前では
数日、数週間、数ヶ月…場合によっては、死に至る距離だったワケです。
「冒険ロマン」と呼ぶにはあまりに重く、過酷を極めた距離を
よくぞ渡ってくれたと思います。

静かな口調の奥底に、深い情熱を感じる1冊。

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Posted by ブクログ 2024年03月23日

なぜ今これを読もうと思ったのかわからないが、心惹かれて読む。遣唐使、鑑真、唐招提寺…教科書では数行の説明で済まされることだけど、それに載ってない人々の想いがすごいことだなーと。今と距離感の全く異なる異国の地にそもそも往来することが奇跡的なことだしそこで何かをなすことの過酷さ。第1章で脱落しそうになっ...続きを読むたが、第2章からはサラサラ読めた。唐招提寺に行かねばと思った。

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Posted by ブクログ 2023年03月07日

井上靖(1907~91年)氏は、北海道旭川町(現・旭川市)生まれ、京都帝大文学部哲学科卒の、戦後日本を代表する作家。1950年に『闘牛』で芥川賞を受賞し、社会小説から歴史小説、自伝的小説、風刺小説、心理小説・私小説など、幅広い作品を執筆した。日本芸術院賞、野間文芸賞、菊池寛賞、朝日賞等を受賞。文化勲...続きを読む章受章。
私は基本的に新書や(単行本・文庫でも)ノンフィクションものを好むのだが、最近は新古書店で目にした有名小説を読むことが増え、本書もその中の一冊である。
本作品は、名僧・鑒眞(鑑真)の来朝という、日本古代文化史上の大きな事実の裏に躍った、天平留学僧たちの運命を描いた歴史小説で、1957年に刊行、1964年に文庫化された。また、1980年には、日中国交正常化後初の中国ロケによる映画として公開され話題を呼んだ。
読み終えてまず感じたのは、人間の歴史というのは、無名とも言える人間の(一人ひとりの意志を超えた)無数の捨て石の上に築かれているものだということであった。
本書には、主に、天平5年(733年)の第9次遣唐船で大陸に渡った留学僧4人(普照、栄叡、玄朗、戒融)と、その前から入唐していた業行の、5人の運命が描かれているのだが、彼らの中には、同じ頃に唐に渡った阿倍仲麻呂、吉備真備、僧・玄昉のような文名・学才・政治的才幹を史上に留めた者はいない。
栄叡は、自分ひとりが勉強することは無駄だと考え、鑑真を招くことを自らに課しながら、志半ばで病死し、業行は、同様に自分ひとりが勉強することの限界を感じ、日本へ持ち帰るための経文の書写をひたすら行い、帰朝の船に乗るものの、遭難してしまう。また、玄朗は、還俗して唐の女と結婚し、子供を得、帰国を夢見ながらも、唐土に落ち着く決断をし、戒融は、唐土を知るために出奔して托鉢僧となりながら、最後に日本へ帰ることを試みる。そして、主人公の普照は、栄叡の熱意に引きずられながらも、鑑真を招くことに力を注ぎ、結局、20年後に鑑真を伴って日本に帰ることに、ただ一人成功するのである。
当時の航海は困難を伴うもので、多くの留学僧は、自分たちが吸収したものを日本に持って帰れるのか、日本の国土に生かすことができるのかすらわからない中で、それぞれの道を見つけ、その運命を貫いて一筋に生き、そして、悠久の歴史の流れに消え去ったのだ。
翻って、1,300年を経た現代に生きる我々にとっても、人の一生とは大きく異なるものではないのだろう。無名の人間が毎日を一生懸命に生きる、その上に歴史は築かれていくのだということを教えてくれるような、歴史小説の力作である。
(2023年3月了)

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Posted by ブクログ 2022年10月31日

なんとなく歴史の授業で習った鑑真
教科書ではさらっとしか習わないのだが、唐から日本へ来るのはやっぱり大変なんだなあ。
仏教の知識がないので、半分はよくわからなかった。仏教の知識を増やしてから再読したい。
あと注釈がすごく読みごたえがあります。

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Posted by ブクログ 2022年06月23日

受戒は資格のある僧が行う必要がある。そのために奈良時代の日本は唐から鑑真を招いた。鑑真は苦労に苦労を重ねて日本に辿り着いた。日本への渡航の許可が下りなかったため、無許可で日本に行こうとしたが、計画が漏れて失敗する。出港しても船が遭難することを繰り返した。

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Posted by ブクログ 2022年06月17日

第9次遣唐使に同行する留学僧として渡唐し仏典を学び、日本に戒律を広めるために鑑真大和上と共に何度も難破の苦難を乗り越え、渡日(帰国)を果たした僧普照を主人公とした物語。日本のために反省をささげ、天平時代の幕開けに大きな役割を果たした留学僧たちの苦労の記録。

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Posted by ブクログ 2022年05月17日

井上靖の歴史小説として代表的な作品。
井上靖は小説家としての自身の想いや情景を描いたもの、自伝的なものと歴史小説の3つに大別される優れた小説を多数書きました。
歴史小説では、日本を舞台したもの、中国を中心としたものを多く執筆していて、本作は大別するのであれば井上靖の中国歴史モノの代表作であり、氏の作...続きを読む品全体としても代表的な一作です。
氏が芥川賞を受賞したのが1950年の『闘牛』、『天平の甍』は1957年刊行なので、初中期の作品と言えますが、1907年に生まれたため、遅咲きの作家であったといえると思います。

『天平の甍』は天平5年(733年)の遣唐使として唐に渡った若い留学僧たち、とりわけ普照と栄叡を中心とした物語となっています。
仏教はあるにはあるが、課役を逃れるため百姓の出家が流亡しており、法を整備しても歯止めは効かなかった。
また、僧尼の行儀の堕落も甚だしく、社会現象となっており、国は仏教に帰人した者が守るべき規範を必要としていました。
そんな折、白羽の矢が立ったのが4人の留学僧で、普照、栄叡もその4人の内の2人です。
鑒眞(鑑真)の来朝という、古代日本おける歴史的な出来事を実現させるため、荒波に揉まれる僧侶たちの運命を描いた作品となっています。

普照や栄叡は実在の人物で、鑑真来朝における苦難の日々は史実が元になっています。
鑑真という人物や、日本の仏教の起こりは中学社会の教科書でもおなじみですが、その舞台裏にこういった壮大なドラマがあったというのは読んでいて興味深かったです。
東シナ海には激しい海流があり、季節風の知識もない当時、遣唐使の航行は文字通り命がけだったそうです。
船は度々難破し、多くの人が命を落としました。
高僧を連れて帰る指名を帯びた普照たちが鑑真と巡り会えたのも長い年月を経た上でしたが、辿り着けるかもわからないような日本へ連れて帰ることを嫌う弟子の密告等があったりして渡日は難航します。
また、渡日にこぎ着けても、過酷な船旅も何度も死にそうになりながら失敗を繰り返し、体調も崩れてゆく。
それでも、日本へ向かうという強い意思が感じられる、壮絶な歴史ドラマでした。

長い作品ではないですが文体は難しく、読むには骨が折れます。
ただ、登場する僧たちのそれぞれの選択、生き様も多種多様で、楽しんで読み進められました。
特に「業行」という僧の最後は本当に悲痛で、怨詛の声が聞こえてきそうな迫力を感じます。
"凄まじい"という形容詞がピッタリくるような、歴史文学小説でした。

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Posted by ブクログ 2022年05月04日

物語的な描写も多々あるが、史実がベースの小説。これを読んでから唐招提寺を再訪したら新たな気付きがあった。こういう小説はやっぱり貴重だと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年08月06日

留学僧普照が栄叡らと協力して鑒真招聘に奔走する話。鑒真は無事渡航できたが、一番熱意を持っていた栄叡は先に病死し、業行が一生かけて書き写した経典は海に沈み、そういう文字通り一生懸命なのに報われなかった人もいる、っていうことも描かれている。というより、阿倍仲麻呂や玄朗や、思い通りにいかなかった人の方が多...続きを読むい。
唐招提寺に掲げられる鴟尾を普照に贈ったのは誰だろう?

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Posted by ブクログ 2021年07月17日


733年(天平5年)聖武天皇の時代
第九次遣唐使のお話
船に関連する人材は元より、訳語者、医師、画師、僧侶ら総勢580名くらいが船四艘で出航する
当時の目的として、宗教的、文化的なものであり、政治的意図は少なかったよう
というのもこの時期の日本の大きな目標は、近代国家成立である
外枠だけができて、...続きを読む中身は混沌としていたため、先進国唐から吸収しなければならないものが多くあった
また、課役を免れるために百姓は争って出家、かつ僧尼の行儀も堕落(乱れているなぁ…)
仏教に帰入した者の守るべき師範は定まっていなかった
そのため唐よりすぐれた戒師を迎えて、正式な授戒制度を布きたい
伝戒の師を請して日本は戒律を施行したかったようである
それが留学僧の主な目的でもあったようだ

奈良から日本最後の港まで騎馬で1ヶ月
洛陽に着くまで蘇州から実に8ヶ月である
想像を絶する船旅である

さてその留学僧に選ばれた4人
彼らは選ばれし時から、それぞれの運命に翻弄される
そして20年近い時を経てそれぞれに変化が…

【4人の留学僧】

■普照(ふしょう)
当初戒師を招ぶことに興味を持たず
自分が学び得る経典にだけ魅力を感じていた(マイペースだ)

仲間の僧、栄叡の思いを引き継ぎ、鑒真を日本へ招聘しよう
業行の写した経巻を日本へ持ち込みたいと思うように

■栄叡(ようえい)
当初やる気があったが、「楽」に流される面も

戒師の招聘に使命感を持ち始め、鑒真を日本に招聘する夢に取り憑かれ出す

■戒融(かいゆう)
他の留学僧たちとはつるまず、単独行動
「机に齧り付くことばかりが勉強か?」と普照に物申す(どの時代にもこういう人いますね!)

「この広大な土地で僧衣をまとい布施を受けながら、歩けるだけ歩いてみる」といい
いち早く一人出奔する

■玄朗(げんろう)
頭脳明晰ながら、一つのことに深く入り込めない
帰国したいが、小舟の渡航に不安(僧らしからぬ立ち振る舞いが多い)

皆と別れ長安へ
唐人の妻子を得る
結局20年間留学僧として何も身につけなかったと嘆くが…



【4人の僧以外の重要人物】

■業行(ぎょうこう)
20年以上唐におり、どこも見ないし誰にも会わない日本人
寺を渡り歩いてただ、ただ経論を写している
「いま日本で一番必要なのは、一文字の間違いもなく写された経典だ」といい、写経に没頭
他のことはすべて無関心


■鑒真(がんじん)
留学僧たちの戒師の招聘の依頼に対し、
「他に誰か行く者はないか
法のためである
生命を惜しむべきではあるまい
お前たちが行かないなら私が行くとしよう」
このように決意する

この業行及び鑒真との出会いが留学僧たちの日本への帰国を決心
業行が生涯をかけて写し取った経巻類を運ぶ
鑒真を招聘する
この2つのために普照と栄叡は長時間かけて準備し、遂行努力を重ねる

幾多もの困難が立ちはだかる
秘密裡のため、裏切りに遭い、投獄
海賊の出没で航路が塞がれる
時間をかけ準備した多くの将来品、仏像、仏具、食糧、薬品、香料(他にもよくわからない品々)
途中坐礁し、船に積み込んだものが悉く浪にさらわれる
食糧も飲料水もなくなる(雨水を飲んで渇きをしのぐ)
飢餓と渇きに苦しむ
それでも鑒真は再挙をはかる

鑒真と普照並び栄叡は行を供にする
師を得た気持ちで今までとは全く異なる勉強ができたという

入唐から17年
栄叡が志半ばで病死

普照は高齢の鑒真を無理をしてまで日本へ渡来させることが本当に正しいことなのか迷い始める
そのため、一旦鑒真と別れることを決意
普照は次の船が来るまで業行の写経を手伝う
自分の果すべき仕事に思えたという
自分のことしか考えていなかったような普照が多くの人と出会い成長していく

業行の最後
「私が何十年かかけて写した経典は日本の土を踏むと、自分で歩き出しますよ…
多勢の僧侶があれを読み、あれを写し、あれを学ぶ
仏陀の心が仏陀の教えが正しく弘まって行く…」
こんな会話をした普照は彼の思いをしっかり受け止めることができたであろう

そしてとうとう20年の時を経て、普照は日本の地へ

結局鑒真は
12年間に5回も渡航し失敗
視力を失う
6回目にようやく日本へ上陸
76歳までの10年間のうち、5年間は東大寺、残り5年間は唐招提寺で過ごし、多くの日本人は授戒を施した


733年からおよそ20年間の話だ
今から1200年以上前である
このころ我々の祖先は何をするにも命がけであった
命をかけて何かを成し遂げること…崇高で勇気ある姿
誰もかれもが美しい
普照も当初はなんとなく心が定まらず煮え切らない僧であったが、栄叡の熱意と志を引き継ぎ、はたまた業行の実績も引き継ぐのである
彼は人に対してとても情が厚く、人との和を大切にすることができる人物であった
運命に翻弄されながら、皆それなりの人生を手に入れる
普照は人(誰しも)の素晴らしさを見いだすことを知った
栄叡は信念を持てばそれが実現することを知った
戒融はその目、その肌で感じることができる世界を知った
玄朗は異国で家庭を持ち、生きる世界を知った
業行は将来の日本の仏道を知っていた
良し悪しじゃない「生きる」という姿にまぶしさを感じた
歴史ロマンでもあるが、人間の底力を感じた
命がけの人の行為が歴史を作り、日本という国を発展させたのだ
心が震える書であった





そのころ日本では、仏教の力で国を治めようとして寺や大仏を作りました。その建設のため、農民たちには重い税や労働が課せられ、苦しい生活を強いられていました。一方、その当時、僧(そう)には税がかかりませんでした。そのため、仏教をろくに知らないのに僧になって税をのがれようとする者が急に増え、仏教界はみだれました。そこで朝廷(ちょうてい)は、正しい仏教を教えてくれる僧を日本に招こうと、唐に遣唐使(けんとうし)を送りました。

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Posted by ブクログ 2021年04月17日

歴史の一部として知る遣唐使
若い僧達がそれぞれの思いを持って、唐に渡る。
死と隣り合わせ、命懸けの事業
遣唐使という三文字が、教科書で習った意味と違って感じられるようになった。

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Posted by ブクログ 2020年12月07日

遣唐使の話。
登場人物それぞれにドラマがあってページ数は少ないけど読みごたえあった。
読んで良かった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年10月01日

少ない史書の情報から豊かな想像力を駆使して物語が作られていることに感心する。主要登場人物の留学僧はどの人物も実際の近隣にいそうな人間の姿を描写しているが、鬱屈なタイプが多いため話が頁をめくる手が重くなるところを鑑真上人の漢気あるキャラクター造形により緩和されていると思う。 
歴史が好きな人にはともす...続きを読むると教科書で1、2文で済まされるような出来事をストーリー仕立てで妄想に浸れる楽しみもあるかと思う

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Posted by ブクログ 2020年03月25日

この辺りの時代はあまり読んだことが無かったのだが、この時代に生きた人達も危険に立ち向かい、死の可能性を乗り越えてでも為すべき使命のために行動する人がいる事を知った。

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Posted by ブクログ 2019年10月09日

こういうときになって、
以前にはあれほど軽蔑していた単なる写経というものを、
いやそれこそが、守るべき全てだと心底感じるようになる・・・

この心境、きっと誰も経験する。
漠然と存在に期待していた大きな何かが、
近づく段になって実は最初から目の端に止まっていた
ちっぽけな糸きれが全てだっ...続きを読むた、という状況。
それでもその糸切れが全て、それを
守ることが今の自分の全意義だという思い。


対象ではなくてそう思える境地こそが
尊い何かなのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2019年05月07日

幾多の困難を乗り越えて鑑真が来日に至るまでの内容が史実に基づいて描かれており、200ページ弱だが、非常に重い内容であった。一つ一つの行動に何年もかかり、その時代の鼓動の大変さが伝わってきた。それらの困難を乗り越える不屈の精神と、遣唐使の僧のそれぞれの生き方が心に残った。

当時は知識を身に着ける事は...続きを読む命がけで、それも持ち帰れるかどうかわからず不安の中で、
自分がいくら勉強しても大したことはないと考え写経を日本に届けようとする生き方、
自分の知識の完成をあきらめ鑑真を招く事に捧げる生き方、
5回の失敗や失明、高齢にもかかわらず、日本に戒律を伝えようとする生き方、

1000年以上昔の話だが、学ぶことが多かった。

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Posted by ブクログ 2018年10月01日

当時の海を渡ることの困難さとそれを賭すエネルギーに感服。普照はもちろん業行に対して凄くシンパシーを感じました。 唐招提寺の鴟尾、しんみりと眺めてみたいと思います。

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Posted by ブクログ 2018年04月16日

仏教関連の小難しい用語が多用されていて、よく分からないままに読み進めたが(それでも話を追う分には支障はない)、文章がだらだらしておらず簡潔で読みやすい。唐招提寺を訪ねたくなった。

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Posted by ブクログ 2017年12月07日

たぶん、大学生の時に読んだ記憶があるので、2度目の通読になる。
(その割に家に見つからなかった)

鑑真が何度か航海に失敗しながらも日本にたどり着く話。
日本人は誰でも知っている鑑真だが、中国人に聞いてみると、「知らない」と。
鑑真って中国人なんだけどなぁー
また、途中で広東省に立ち寄るシーンがある...続きを読むのだが、その中で出てきた広州の開元寺、栄叡が死んだ端州の竜興寺(肇慶の慶雲寺)はまだ現存していると知って驚く。
1300年前のものが普通にあるのが中国なのである。

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Posted by ブクログ 2023年11月14日

奈良時代の最盛期である天平。その頃、唐から高僧・鑑真を日本に連れてきた僧侶・普照の物語。鑑真の渡航は当時では非合法的だった。天平二年、七年と出航するが難破。天平七年の遭難の際には海南島まで流されてしまう。そして天平十二年に渡航に成功。時間的、距離的に想像を絶する話です。

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Posted by ブクログ 2022年11月23日

業行が印象的だった。怖いほどの執念が年々滲み出て、でも結局彼の意志が成し遂げられなかったのが、足元が崩れていくようで怖かった。
普照は渡唐に際して確固たる目的がないように見えたけど、その時その時にとるべき最善を尽くして、結局最後は運も味方して元々の任務だった戒律師を日本に連れ帰ることを果たしたし、日...続きを読む本に帰ってからのモノの感じ方考え方がいいなと思った

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Posted by ブクログ 2020年11月04日

井上靖の流れるような文面が非常に魅力的。かつ、その知識の深さには感服する。

日本史がある程度わかっている人なら、読んでいても疲れないと思うが、知らない人が読むと確実に挫折する。

私は好きだが…

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Posted by ブクログ 2019年04月10日

鑑真の不屈の闘志による渡日をメインに、遣唐使の普照を通して
淡々と進める井上靖の代表作。
面白いのは大化改新からさほどたっていない、まだ赤ん坊の日本に対して、中国は唐の玄宗で繁栄を謳歌していたというコントラスト。横の串刺し歴史を感じる作品。

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Posted by ブクログ 2020年07月15日

時代小説というと、戦国時代や江戸時代のものが多いので、その時代のものには馴染みがあるけれど、この小説の場合、天平時代の出来事を描いているところが新鮮でいい。
阿部仲麻呂や吉備真備のような、教科書以外では見たことのない人々が、物語の中の登場人物としてしゃべっているところも、なんだか奇妙で面白い。

...続きを読むの話しは鑑真が主人公なのかと思っていたら、鑑真についてはあまり詳しく書かれていずに、どういう人だったのかということもよくわからないぐらい、あっさりとした扱われ方だった。
本当の主人公は、それよりも、無名ではありながら人生の大部分をかけて、何十年もひたすらに写経した経典をなんとかして日本に持ち帰るということに異様な執念を燃やした、業行のほうだろう。

物語の配分から言っても、鑑真や普照が日本に戻ってきた後のことについてはほとんど触れられていずに、遣唐使というものがどれほどに命懸けで、日本と唐との間で文化や教義を伝えようとしていたかという部分にほとんどの紙数を費やしている。

五度の失敗の後、失明をした後に60歳を過ぎてようやく鑑真を日本にたどり着かせたものは、運以外の何者でもなく、幸運にも日本に着いたものより何倍も多くの書物や人が海の藻屑と消えていった。

海を超えて異国の地に渡るということが、常に死を賭した決死行だった時代には、たった一巻の書物や一人の人間を運ぶということだけでも、ものすごい覚悟が必要だったのだということがよくわかる。その、先人たちの執念のすさまじさが伝わってくる物語だった。

こうしたことを、いままで多勢の日本人が経験して来たということを考えている。そして何百、何千人の人間が海の底に沈んで行ったのだ。無事に生きて国の土を踏んだ者の方が少ないかも知れぬ。一国の宗教でも学問でも、いつの時代でもこうして育ってきたのだ。たくさんの犠牲に依って育まれて来たのだ。(栄叡)(p.25)

俺はこの国はいまが一番絶頂だなと思った。これが一番強いこの国の印象だ。花が今を盛りと咲き盛っている感じだ。学問も、政治も、文化も、何もかもこれから降り坂になって行くのではないか。いまのうちに、俺たちは貰えるだけのものを貰ってしまうんだな。たくさんの蜂が花の蜜にたかっているように、各国からの夥しい留学生たちが、いまこの国の二つの都にたかって蜜を吸っている。(戒融)(p.34)

われわれの場合だって、無事に帰国できるとは決まっていないんだ。帰国できるかも知れないし、できないかも知れない。われわれはいま海の底へ沈めてしまうだけのために、いたずらに知識を掻き集めているのかも知れない。(玄朗)(p.52)

併し、普照にも、鑑真の渡来と、業行が一字一句もゆるがせにせずに写したあの厖大な経典の山と、果たして故国にとってどちらが価値のあるものであるかは、正確には判断がつかなかった。一つは一人の人間の生涯から全く人間らしい生活を取り上げることに依って生み出されたものであり、一つは二人の人間の死と何人かの人間の多年に亘る流離の生活の果てに始めて齎されたものであった。それだけが判っていた。(p.179)

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