あらすじ
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能力不足や苦手意識で悩む前に、知っておきたいマルチタスクの本質
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●良いアイデアが出てこない
●始めるのに時間がかかる
●気が散って集中できない
●なんとなくやる気がでない…
そのうまくいかない背景に「マルチタスク」があります。
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私たちは、つい「目の前のタスクをこなすこと」に集中しがちです。
「もうちょっとうまく取り組みたい」「もっと早く対応したい」と悩む人もいるかもしれません。
でも、日々の仕事でより重要なのは、自分の力ややる気をいかに消耗せずに、「使う」か、「保つ」かです。
今日も明日も「やること」は続いていく。それなら、どう乗り越えるのか。
「働き方」を研究し続ける学問の視点から、マルチタスクに振り回されずに向き合う方法を一緒に考える1冊です。
【目次】
第1章 「仕事量が減れば楽になる」は幻想かもしれない
第2章 「仕事が終わらない」「タスクが減らない」ときに、起こっていること
第3章 「仕事で1日を」「ストレスで自分を」忙殺しないために、何ができるか?
第4章 「やる気が続かない」「何の仕事をしているか分からない」のは、いったいなぜ?
第5章 「隠れマルチタスク」はチームや組織で乗り越える
終章 マルチタスクの渦にのみこまれずに、いきいきと働き続けるために
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Posted by ブクログ
本書を通じて得た最大の学びは、マルチタスクによる消耗を個人の能力や努力の問題として捉えるのではなく、仕事の進め方や組織の構造そのものを見直す必要があるということだ。
日々、多数の案件を抱え、資料作成、メール対応、判断、関係者との調整など、性質の異なる業務を絶え間なく処理している。これまでは、いかに多くの仕事を効率よくこなすかに意識が向きがちだった。しかし本書を読み、その考え方自体を改める必要性を強く感じた。
第一の学びは、スイッチングコストと認知資源の理解である。
マルチタスクとは、複数の高度な処理を同時に行っているのではなく、注意を高速に切り替えている状態である。タスクを切り替えるたびに、新たな仕事に必要な情報や判断基準を読み込み直す負荷が生じる。また、未完了の仕事への意識が残る「注意残余」によって、次の仕事への集中も妨げられる。
こうした小さな負荷の積み重ねが、長期的には大きな疲労や生産性の低下につながる。人間の認知資源には限界があり、集中力や判断力を無制限に発揮できるわけではない。
自分自身、創造的な発想を要する業務に取り組む一方で、メールへの返信や細かな判断、突発的な相談対応などに追われ、思考が頻繁に分断される経験を重ねてきた。こうした状況では、収束的思考と拡散的思考の切り替えも頻発する。精神的な疲労の原因は、単純な業務量の多さだけではなく、思考の切り替え方にもあったのだと気づかされた。
第二の学びは、認知資源を守るために、日々の仕事を主体的に再設計することである。
本書が提示する「まとまりを作る」「順序を考える」「切り替えを減らす」という3原則は、今後の働き方を改善するための重要な実践指針となった。
まず、仕事を性質ごとに分類し、同質の業務をまとめて処理する。深い思考を要する企画・資料作成、判断や確認を要する業務、コミュニケーション中心の調整業務、比較的単純な定型処理などに分解する。同じ思考モードを使う仕事を連続させることで、不要な切り替えを減らすことができる。
次に、認知的負荷に応じて1日の業務の順序を設計する。
具体的には、午前中の集中しやすい時間帯を、重要な企画立案や複雑な資料作成など、認知資源を多く必要とする仕事に優先的に充てたい。 この時間帯には、可能な限り不要不急の会議や細かな事務処理を入れず、まとまった思考時間を確保する。
午後の早い時間帯には、会議、関係者との調整、確認や意思決定など、対話や判断を伴う仕事を集約する。そして夕方以降は、メール処理、定型的な事務、進捗確認、翌日の準備など、比較的認知負荷の低い仕事を中心に配置する。
もちろん、集中しやすい時間帯には個人差があり、緊急案件への柔軟な対応も欠かせない。重要なのは、仕事が発生した順に処理するのではなく、自分の認知資源の状態と業務の特性を踏まえて、取り組む順序を主体的に決めることである。
さらに、メールやチャットは可能な範囲で確認時間をまとめ、集中作業中の不要な通知を抑える。作業を中断する際には、どこまで考えたか、次に何をするかを記録する。未完了タスクも頭の中に抱えず、次の具体的行動とともに一覧化する。
こうした工夫を積み重ね、注意残余とスイッチングコストを減らしていきたい。時間管理から認知資源の管理へ。 これこそが、自分にとって最も実践的な学びの一つである。
第三の学びは、ジョブクラフティングによって仕事の意味を主体的に捉え直すことである。
次々に降りかかる仕事を、単なる「やらされ仕事」として処理するのではなく、組織における役割や目的、自分自身の成長とのつながりを考え、納得感のある仕事として内在化する。
日々の業務を漫然と処理するのではなく、一度立ち止まり、それぞれの仕事がどのような価値を生み出すのかを考える。その意味づけが、主体性や仕事への意欲を高めることにつながる。
ただし、仕事を自分ごととして捉えることと、すべてを自分で抱え込むことは違う。仕事の意義を理解するからこそ、不要な作業を省き、他者に適切に委ねる判断も必要となる。
第四の、そして特に考え方を変えられた学びは、チームマネジメントの再設計である。
本書で紹介された「組織市民行動」と「隠れマルチタスク」は、自分自身の仕事の割り振り方を振り返る契機となった。
これまで、経験と能力が豊富で意欲の高い特定のメンバーに、多くの仕事を任せてきた。確実性や処理速度を考えれば合理的だった一方、その結果として本人の負担を増やし、他のメンバーの成長機会を損なっていた可能性がある。
現在の能力差を前提に仕事を割り振り続けることが、将来の能力差を再生産してしまう。この点は、特に心に刻んでおきたい。
今後は案件を丸ごと特定の個人に任せるだけでなく、判断、実行、調整、例外対応といった機能に分解し、適切に再配置したい。経験の浅いメンバーにも段階的に挑戦の機会を設け、短期的な効率性だけでなく、中長期的な成長を重視する。
また、自分自身が抱える仕事についても、周囲に委ねるべきものを見極める必要がある。優秀な個人の頑張りに依存するのではなく、チーム全体で相互に補完し、成長できる仕組みをつくること。 これを今後の重要な実践課題としたい。
第五の学びは、回復を日々の生活に意識的に組み込むことである。
心理的切り離し、リラクゼーション、熟達経験、睡眠の質という4つの回復経験も印象に残った。
現在取り組んでいるランニング、音楽、読書、睡眠習慣の改善などを引き続き大切にしたい。特に、楽器演奏や音楽制作、新しい知識の習得といった熟達経験を通じて、自発的な挑戦と成長の喜びを感じる機会を増やしたい。一方で、何もしない余白や純粋に趣味を楽しむ時間にも価値がある。仕事と生活の境界を自ら主体的に調整できることが重要だと思う。
多くの仕事を一人で器用にさばくのではなく、限られた認知資源を重要な仕事に適切に配分すること。そして、個々のメンバーが成長し、チーム全体で持続的に成果を生み出せる環境を設計すること。
マルチタスクを完全になくすことはできない。しかし、仕事のまとまり、順序、切り替え方、役割分担を自ら見直すことはできる。
今回得た学びを、単なる知識で終わらせず、日々の時間の使い方とチーム運営を変える具体的な行動につなげていきたい。