あらすじ
困難を抱える男女が出会った。認知症の父親の世話と仕事に忙殺される町田周吾。他人との会話が困難な場面緘黙症の娘を女手一つで育てる乾あかり。介護施設での出会いを契機に二人は距離を縮めていく。しかし、彼らには幾多の苦難が待ち受けていた。真実の愛とは何かを問いかける第1回ツイッター文学賞受賞の傑作長編。
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Posted by ブクログ
「また発掘本みぃ〜っけ!」と言いたくなる本との出会いでした。600p超でしたがスルスル読め、堪能しました。リアルな重い題材を扱いながらも、温かさと救いを得られる内容で、物語にガッツリ引き込まれました。
主人公は、食品会社勤務の町田周吾。認知症が進む父(恭三)の介護に苦心しています。父が短期入所した施設で担当者になった乾あかり。彼女は、場面緘黙の娘(志歩)を育てながら、DV離婚した元夫からのストーカーにも悩まされているのでした。
介護、障害、制度や待遇、学校や周囲の無理解等の諸問題(特に介護の厳しさ)が、これでもかという程克明に描かれています。
よくある設定ながら、物語の中に温かさを感じる理由は、タイトル『二人静』にある気がしました。
フタリシズカは多年草で、花穂が2本が寄り添うように咲き、「いつまでも一緒に」という花言葉もあるようです。源義経の側室<静御前>とその亡霊の舞う姿にたとえられたそう‥。
作中で、多くの「二人静」が心を通わせる場面が描かれます。周吾とあかり、あかりと恭三、周吾と志歩、恭三と志歩、もちろん2組の親子も‥。どの寄り添う描写も、ささやかでつましい中の日常で、心洗われます。
けれども、過酷な現実を背負っているいろんな形の「二人静」の関係は、決して高望みでなくとも、置かれた境遇や環境が、小さな望みの実現を困難にさせます。
登場人物の人物造形が素晴らしく、特に周吾の不器用なほど真っ直ぐな性格が、この上なく切ないのですが、救いのある終末にホッとさせられます。
人生にはいろんなことが降りかかり、頑張ったり諦めたり、それらを繰り返し人生に立ち向かっていく姿、その描かれ方が素晴らしい一冊でした。
2010年第1回Twitter文学賞(2019年終了)受賞作とのことですが、冠名の印象から想像する軽さがなく、どっこい傑作だと思いました。おすすめです!
Posted by ブクログ
京極夏彦さんの小説のように、分厚い文庫本
読みはじめてすぐが、認知症の父親を介護施設に預ける場面で
なんだか、身につまされて、つらくて悲しくて、読んだことを後悔
でも、淡々と進んでいく小説の世界が、とても現実的ながらも
嘘がなく、一生懸命生きている人たちの姿に、心打たれ
あまりの現実の残酷さに、落ち込んだり・・・
生きていてくれるだけで、ありがとう と言いたくなりました
静かで、とても好きな小説です