【感想・ネタバレ】犬婿入りのレビュー

あらすじ

多摩川べりのありふれた町の学習塾は“キタナラ塾”の愛称で子供たちに人気だ。北村みつこ先生が「犬婿入り」の話をしていたら本当に〈犬男〉の太郎さんが押しかけてきて奇妙な2人の生活が始まった。都市の中に隠された民話的世界を新しい視点でとらえた芥川賞受賞の表題作と「ペルソナ」の2編を収録。(講談社文庫)

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

衝撃の一冊だった。今までに読んだことがない本だった。プロットどうこうではなく、書き方やリズム感が今までに味わったことのない異質なもので面白く、難解だった。一度学校の授業で多和田葉子さんについては触れたことがあり、その時も日本語の「ふと」と「思わず」を使わずにドイツ文学は、それに値する表現をするというものだった。そして「ペルソナ」を読んで意味がわかった。付随する動作を書き出して「ふと」を表現している。また「ペルソナ」を読んだ時、翻訳された文庫本のカフカの「変身」を思い出した。日本人が日本語で書いたはずなのに翻訳後の日本語のようだった。内容も国際色が強いというか、差別意識についての内容だった。正直最後の解説が的確すぎてあんまりここに書くことは思いつかない。
「犬婿入り」も不思議な文章だった。文章がなかなか区切れない。「。」で終わりそうなところも「、」で繋げられて今までの経験からだとリズムを崩される。それなのに何故か少し心地良い気もする。内容もガッツリと寓意に富んでいて、考えながら読むのが面白い作品だった。個人的に感じたのは童話がテーマになっていることから、言葉の脆さを感じた。子どもたちは情報を曖昧に伝え、大人たちは都合の良いように解釈しようとする。物語としての言葉を繋ぐ際、言葉は次の話し手に自らを委ねることしかできない。言葉は社会を形づくり、価値を生み出す大変強力なものであるが、本質的には脆い。他の言語体系と触れれば尚更脆い。そんな風に感じた。そして兎に角、解説がかなり良い。すっきりとするからぜひ読んでほしい。
新しいかたちの日本語をこんなに浴びれるのは、多和田葉子に異国の経験があるからこそであるからなので、是非この本でドイツ語と日本語の間の溝にはまってみてほしい。

0
2026年06月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

⚫︎受け取ったメッセージ
混ざり合い、影響しあう人間と文化

⚫︎あらすじ(本概要より転載)
多摩川べりのありふれた町の学習塾は“キタナラ塾”の愛称で子供たちに人気だ。北村みつこ先生が「犬婿入り」の話をしていたら本当に〈犬男〉の太郎さんが押しかけてきて奇妙な2人の生活が始まった。都市の中に隠された民話的世界を新しい視点でとらえた芥川賞受賞の表題作と「ペルソナ」の2編を収録。

⚫︎感想
「犬婿入り」
全てのものに境界線がない世界観。民話風な雰囲気で現在と過去、現実と虚構、動物と人間、父と娘、妻と夫、先生と生徒、男と女、清濁、といった境界全てを曖昧にしてひとつの世界を作っている。非常に不思議なお話。排泄物の話や鼻くそノートなんてものも出てくる。これも自分のもののようで自分から離れて、でも自分のものなのか?という象徴か。すべての登場人物が普通のようで普通でなく、すべて「生き物」として描いている。

「ペルソナ(能面)」
ドイツに住む日本人である主人公が、言葉が違う国で暮らすことで「日本人」としては認識されず、「東アジア人」として曖昧に認識され、曖昧な状態におかれる。日本らしさを象徴する能面を被って街へ出るが、もはやそれは主人公とは認識されない。
最近の多和田さんのインタビュー記事を読み、著者はこの「間合い」の世界を捉え、作品にしていると知った。この作品は主人公の苦しみが中心だが、多和田さんはその間合いを好ましく捉えて執筆している。

「純粋にたった一つの文化から生まれる言語があるとは思いません。言語は常に混ざり合い、他の文化や言語の影響を受け合っています。」というインタビュー記事から、このこと自体をテーマとして物語が創出されているのが多和田作品なのだとわかった。

0
2023年11月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2編収録。
・ペルソナ
ドイツに姉弟で同居する道子。二人はそれぞれ留学中の身である。ドイツ中世文学をやる弟、道子はドイツ現代文学を研究中だが、成果なく、奨学金を得られなくなり細々したバイトに明け暮れている。
自分に向けられる差別、自分以外の外国人に向けられる差別、日本人の奥さんたちと弟が持つ差別感情。道子は常にそれらを感じながら生きている。
作者の体験から出てきた作品なのだろう。肌感覚の嫌な感じがうまく文章から伝わりゾクゾクする。

・犬婿入り
面白すぎる。だが笑って済まされるものではない不穏な物語だ。民話にありがちなエロさ、不潔さ、理不尽さをきちんと備えた、しかしちゃんと現代の話である。なんのメタファーか寓意かわかりそうでわからない。作者の只者ではない力量に感服するほかない。

0
2022年01月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人は自分と共通点のある似通った人とは仲間になりたがるけれど、ちょっとでも異なる人とは区別したがる。
生まれた国や言語、文化、風貌、立ち振舞い等あらゆる基準により自分とは異なる者を「異物」と見なし排除し、時に攻撃する。
まるで多数決で多い方が正義となるかのように。
『ペルソナ』でのドイツに住む日本人・道子に対して、表情が乏しく何を考えているのか分からない、と言って傷付けたり、表題作の風変わりな塾教師に対して母親達が無責任な噂話を広めたり。

個人的には芥川賞受賞作の表題作より『ペルソナ』(これも芥川賞候補作)が好き。
道子が日本人の顔になるために化粧をする姿(素顔ではベトナム人に間違えられるため)や能面(ペルソナ)で顔を隠すことにより柵から解放され堂々と歩く姿がとても印象深い。
長年ドイツで暮らす多和田さんも、ドイツに住み初めの頃は色々と苦労したのだろうか。

0
2018年11月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

犬婿入りとペルソナの二つの短編。ペルソナは求められる人物像や無意識に演じていた役割からの解放が印象的。犬婿入りはユニークで笑ってしまうがこちらも広義な意味でペルソナに通づるものがあると思っていて集団と個、無意識の同調圧力と自由の対比がおもしろい。

0
2026年03月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

プロ向けの小説という印象の作品。
視点は面白いし、価値観を揺さぶってくる感じも悪くないが、読み終わった後の満足感はあまりない。
読んでも読まなくてもよかったなという感じ。

ペルソナ
ペルソナとは能面のことらしい。
人種や国民性についてステレオタイプな価値観を持つ人々がたくさん登場する。日本人は能面のように表情がなく感情が読めないと言われる。
道子が混乱して街を歩き回るところはカフカを想起させた。

犬婿入り
犬がお姫様の尻をなめるという「犬婿入り」という民話は本当にあるのかどうか。その話をした北村みつこの家に、何やら犬っぽい太郎という男が住み着いて犬っぽいことをする。

0
2025年08月21日

「小説」ランキング