あらすじ
野間文芸賞受賞作。歌でしか会話ができないバリトンさん、遺髪で竪琴の弦をつくる元美容師、講堂では亡くなった子どもたちの魂が成長している。開かれる「一人一人の音楽会」。世の淵に生きる「おくりびと」を静謐(せいひつ)にいとおしく描く著者のど真ん中の長編小説。
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Posted by ブクログ
子供がいない街で、子どもを失った人たちがそれぞれの形で思いを馳せる。
寂れ朽ちていく街のかつて幼稚園だった場所にあるガラスケースは、墓標でも博物館の展示物でもなく、彼らにとって失った子はそこに生き続けている。
希望とは未来の可能性であるのなら、二度と子供が産まれてくることはないこの街にとって、朽ちに抗うことこそが希望なのかもしれない。ガラスケースを護り続ける私、病床の恋人と文通を続けるバリトンさん、遺骨や遺髪を楽器に加工する元美容師・元歯医者、自分だけの音楽会に参加する人たち、それぞれの営みが、終わりゆくしかない街の希望となっている。
Posted by ブクログ
小川洋子さんが作り上げた世界を堪能できる作品。それは小さなものと静寂のなかでかすかに聞こえる音をすべて表現するかのように思えた。
元幼稚園で暮らす私。講堂にガラスケースを運ぶ、歌でしか話せないバリトンさん。遺髪で竪琴の弦を作れる美容師。亡くした子どもを持つ人が自らのために行うグリーフケアを、静かに優しく支える様子がえがかれていた。
そして亡くなっても心のなかで成長していく子どもへの愛情が伝わってきた。「一人一人の音楽会」は一人一人にとって何よりも大切で愛おしい時間だということも伝わってきた。
「質素な親子工作展覧会」も「あの子の結婚式」にも温かいものをかんじた。
子どもは一人も出てこないのだけれど、子どもを思う気持ちに満ちた静かな物語。この世界観がとても好き。
Posted by ブクログ
通っていた幼稚園を思い出した。
小さい机やトイレの便器。
バリトンさんのイメージが何故か坂東彌十郎。
カバーがとても幻想的で、物語ととても合っている。