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Posted by ブクログ
江戸幕府に終焉を告げた最期の戦いであり、戊辰戦争の始まりを告げたまさに時代の転換期ど真ん中、鳥羽伏見の戦い。
意外なことに、この本が出るまで、この戦について体系だって書かれた文献はなかったそうです。
旧幕側の敗因はなんだったのか、もし旧幕側が勝つとしたら、勝っていたらどうなっていたのか、そういった歴史の「イフ」にも踏み込みながら、鳥羽伏見の4日間の戦争を、数々の史料の読み下し文と共に時間単位でドキュメンタリーのように綴っています。
内容はどちらかというと旧幕側寄りですが、薩長の官軍側に寄ったものが今まで多かったこと、それを裏付けたり覆したりする意図があることを踏まえれば妥当かと思います。
読み下し文を理解するために何度か立ち止まりましたが、ドキュメンタリーのような形式は当時の緊迫した雰囲気を伝えてくれるようで、物語のように次が気になってページを繰る手が止まりませんでした。
「なんでそこでこうしないんだ!」とじれったくなるほど、機を逸し続ける旧幕軍。その一方で、前線で薩長軍をたじたじとさせるほどの勢いを見せる場面も見られました。
死に物狂いで奮戦する前線と、負けが込んであまりにも早く見切りを付けて逃げ腰の上層部。冷静な判断を欠く上層部に、もう悔しい悲しい……。
会津と桑名の藩主兄弟らを拉致同然に連れ出したあとの慶喜の足取りや海上での出来事が、なかなか興味深かったです。
前半で一章割いたりして散々持ちあげたシャスポー銃や伝習隊の足取りが、後半で全然取り沙汰されなくなってしまったところにやや不満は残りますが、全体的に当時の武具にもスポットを当ててくれているのが嬉しかったです。
刀槍や鎧から銃や大砲、動き易い近代的な軍服といったところにも時代の移り変わりを感じることができます。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
「歴史にイフはない」なんて誰が言ったのか―幕府の命運を決した慶応四年(一八六八)一月三日から六日にかけての四日間の戦いは、さまざまな偶然に満ちている。
なぜ幕府歩兵隊の銃は装弾していなかったか、吹きつける北風は幕府軍にどう影響したのか、そして慶喜の判断はなぜ揺れ動いたのか―。
誰もがその名を知っているけれど、詳しくは知らないこの戦いをドキュメンタリータッチでたどる。
[ 目次 ]
プロローグ 鳥羽伏見の墓碑銘
第1章 開戦前夜
第2章 伝習歩兵隊とシャスポー銃
第3章 鳥羽街道の開戦―戦闘第一日目一月三日
第4章 俵陣地と酒樽陣地―戦闘第二日目一月四日
第5章 千両松の激戦―戦闘第三日目一月五日
第6章 藤堂家の裏切り―戦闘第四日目一月六日
第7章 徳川慶喜逃亡
エピローグ 江戸の落日
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
明治元年のタイトル名の戦いは、圧倒的な優勢であるはずの旧幕府軍がどうして敗れたのか?錦の御旗を掲げた新政府軍に敗れてしまったのか、著者は長州戦争では賊軍とされた長州が決して負けなかったことから、賊軍とされても旧幕府軍は勝てた要素が多くあったこと、その中でなぜ?を説得力ある論調で展開しています。薩摩と会津・桑名の私闘であったかのような最初の取り上げ方であったように、旧幕府軍といいながらも主力は会津・桑名藩で、大かたは様子見であったこと、激しい北風が続いたこと、旧幕府軍が背後から京都を突こうとせず、一方からのみ攻めたこと、そして鉄砲の性能、最後に徳川慶喜の優柔不断と大阪からの逃亡!などを書いています。慶喜に随分厳しい断罪をしていますが、旧幕府軍に従軍した兵士の記録などを引用し、元にしていることから少なくとも、配下にそう思われていたことは間違いないのでしょう。260年続いた幕府が4日間で崩壊するそのドラマティックな瞬間だったと痛感しました。