【感想・ネタバレ】愛こそすべて、と愚か者は言ったのレビュー

あらすじ

始まりは深夜の電話だった――。七年前に別れた久瀬の息子の慶太が誘拐された。犯人から身代金の運搬係に指定されたのは探偵の久瀬だった。現場に向かった久瀬は犯人側のトラブルに乗じて慶太を助けることに成功するが、事件の解決を待たずに別れた妻・恭子が失踪してしまう。久瀬は恭子の行方と事件の真相を追いながら、再会を果たした慶太との共同生活を始めるが…。『償いの椅子』の著者の恐るべきデビュー作!!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

人は存外不器用にしか生きられないのでしょう。

たとえ器用に生きていると思われても
その方法はイレギュラーだった挙句に
最終的には存在概念を
消し去ってしまった人もいるのです。

その人にとって、
人生はなんだったのでしょうね。
優しく手を伸ばそうとした人はいたけど
全部その人は払いのけました。

そしてそう思った復讐の大本の人の前で
その歪んだ持論は砕け散るわけで。

ちなみにタイトルは最後まで読めばわかるでしょう。
なぜあの人物が「どことなく感情がないか」
の答えがここにあるのです。

0
2023年11月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「約束の森」が良かったので、沢木冬吾の過去作読んでみようと、まずはデビュー作を手に取ってみた。さすがに荒っぽい部分も目立つが、熱い小説である。ハードボイルドであり、冒険小説であり、家族小説。

時に家族小説としての側面が興味深い。「約束の森」では疑似家族が大きなテーマとなるのだが、その兆候はこのデビュー作でもちょっと複雑な過程を経て萌芽している。主人公と息子慶太の親子愛再生の物語がその主軸になるのだが、それだけではなく、引きこもりの従妹との関係や、探偵会社の同僚とも家族同然の付き合いをしているし、敵役の街の顔役とその息子、誘拐事件を追う警察官の家族や同僚との関係、殺人鬼とその相棒…、どこを切り取っても「家族」というテーマがうかがえるのである。

ハードボイルドに生きようとする主人公の滑稽さ、息をのむアクションシーン。それらもデビュー作にしてはリズムやための技術も、情熱や勢いも含めて読みごたえ満載で見事なのだが、そんなシーンが終わるごと…後半に至っては幕間にすら「家族とは?」テーマの断片がうかがえるようになる。

ハードボイルドって、しぶく孤独を感じる主人公に共感する小説というイメージがあるが、実は家族小説としての楽しみ方ができる作品が多い。スペンサーシリーズや清水辰夫諸作を例に出せば分かりやすいか。本作も「約束の森」も系譜のハードボイルドなんだと思うし、系譜の中で恥じないオモろい小説である。

沢木冬吾…、この小説家を今まで知らなかったのはちょっと恥ずかしいが、これから未読策を読むのが非常に楽しみである。

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2019年10月28日

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