【感想・ネタバレ】芸能界のレビュー

あらすじ

芸能界を知る著者が描く、現代エンターテインメントの裏側とは――? 落ちぶれて25年在籍した事務所を退所する俳優、人気タレントを10年かけて育て上げた辣腕マネージャー、若い男子が集うミュージカルを仕切る女性プロデューサー、容姿をイジるネタで30年笑いをとってきた漫才コンビ、震災の町からデビューした中学生女子の父親……きらびやかな世界を生きる人びとの、七つのバックヤードストーリー。

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Posted by ブクログ

染井為人『芸能界』光文社文庫。

元芸能マネージャーだったと言う染井為人による芸能界を舞台にした7編の短編を収録した短編集。

昭和から平成までは芸能人のスキャンダルも話題作りや芸の肥やしとばかりに何時までも問題視されることはなかった。しかし、今や芸能人がスキャンダルを起こせば、一部の例外を除いて、再び檜舞台に立つことは難しいようだ。昔なら事務所が揉み消したような不倫や性スキャンダル、暴力などが発覚すれば芸能人としては死刑判決を受けたに等しい。ちょっとした偏った発言や軽はずみの行動もネットで大炎上し、仕事を干されることもあるのだ。

この短編集では、そんな怖い芸能界の生々しいスキャンダルや事件を題材に7編全てが全く違う味付けのストーリーが描かれており、非常に面白かった。


『クランクアップ』。ありがちな設定と先の読めるストーリーだなと思いながら読み進んでみれば、見事に騙された。なかなか面白い。

黒い交際が問題になり、落ち目になった43歳の俳優の相原恭二は事務所を退所し、五十嵐という映画監督の誘いで、『リアルフェイク』という映画に主演することを承諾した。事務所の女社長の河村洋子とマネージャーの鈴木達雄は恭二を引き留めようとするが、恭二は事務所を退所してしまう。映画の撮影が進み、クランクアップの日、いよいよ映画はクライマックスを迎える。★★★★


『ファン』。まさかの真相に戦慄を覚えた。全てを語らず、ギリギリを攻めて、真相を悟らせるところが非常に巧い。

長い間、俳優の蒼生ちづるのマネージャーを務めていた坂田純一は若手の二葉にちづるのマネージャーを任せ、自らはピン芸人の古島和哉とアイドルグループの夢色キャンバスを務めることになった。しかし、古島が不倫スキャンダルを起こし、仕事を干されてしまう。そんな中、夢色キャンバスが念願の単独ライブを成功させるが、リーダーのアイノがファンから贈られた大きなぬいぐるみに仕掛けられた盗聴器によりスキャンダルが発覚し、僅か1週間で解散に追い込まれる。★★★★★


『いいね』。芸能人のSNSが炎上することは頻繁にあるようだ。また、一般人も含めて、SNS依存症に陥ることも多いようだ。たまに東京などで電車に乗れば、皆がスマホを凝視している姿を目にして、背筋が寒くなる。何時の間にか人間がスマホに支配されているのだ。将来、人間はAIに支配されるとか騒いでいる以前の話だ。この短編では、といった世相を背景にSNS依存症になったベテラン女優の運命を描いており、面白い。

若者たちから認知されていないことに気付き、危機感を覚えて、インスタグラムを始めたベテラン女優の石川恵子。コロナ禍の中、恵子が友人とレストランで食事する様子をインスタグラムに投稿するとたちまち炎上してしまう。それを知った芸能界のゴッドファーザーとの異名を持つ事務所の会長の桑原一騎は、恵子にSNSの使用を禁じるが、恵子は構わずにインスタグラムに投稿を続ける。★★★★★


『終幕』。中年女性が容姿端麗な若い男性を侍らせて、と言えば、あの某大手芸能事務所を思い出す。この短編のストーリーは大方予想がついていたのだが、その予想を覆す驚愕の結末が待ち受けていた。してやられたという感じが心地良い。

若い頃から苦労を重ね、多くの男性を騙して資金を集めて来た47歳の叶野花江は、7年前に容姿端麗な俳優の卵を集めたミュージカル『ボーイズランド』を立ち上げ、大成功させる。今では若手男性俳優の登竜門となった『ボーイズランド』のオーディションには多くの容姿端麗な若手俳優が殺到するまでになった。『ボーイズランド』に採用された俳優の中に少し背が低く線の細い22歳の中町壮太という俳優が居り、花江のことが好きだと言って、求婚する。突然の幸運に舞い上がった花江は壮太に『ボーイズランド』の主役の座を提供する。★★★★★


『相方』。ここに来ていきなりの人情噺に、思わず涙がこぼれた。コンプライアンスが叫ばれる昨今、お笑い芸人も容姿では笑いが取れず、苦しんでいるようだ。この短編にも書かれている通り、ネットが普及し、一般人が言いたいことを自由に発言出来るようになったこともあるのだろう。昭和から平成にかけての言いたい放題の毒舌漫才が懐かしい。

芸歴30年のミチオとノリオのベテラン漫才コンビ『ミチノリ』はコロナ対策で無観客の中、漫才を披露しながら虚しさを覚える。さらには、ハゲ、ブス、デブといった容姿で笑いを取るなとディレクターに注意される。以降、『ミチノリ』は漫才でもバラエティでもスベりまくる。特にネタを書き、『ミチノリ』を支えているのは自分だと自負しているミチオの落ち込み方は酷く、まるでそれを見ていたかのように30年間途絶えたことの無い励ましのファンレターが届く。★★★★★


『ほんの気の迷い』。まさか、そう来るとは思わなかった。アイドル俳優も第一線で活躍し続けるためには相当な無理をしているのだろう。

25歳の田中勇太は本来の自分を偽り、アイドル俳優の栗原翔真を演じていた。ある日、結婚を間近に控える姉から電話があり、新興宗教にのめり込んだ母親がいよいよおかしいと伝えられる。勇太には年子の弟がおり、兄の栗原翔真を利用し、女性を誑かすなど問題を起こしていた。★★★★


『娘は女優』。芸能人になるには実力よりも大きな運と努力が必要なのだろう。震災の被災地を舞台にするのは少々卑怯な感じもするが、心温まる短編だった。

三陸沿岸の小さな町で細々と村田サイクルを営む村田幹一は津波で妻を失い、11年の間、娘の皆愛と暮らしていた。2ヶ月前、皆愛が中学校の修学旅行で東京に行った時、芸能事務所の柊木にスカウトされる。少しずつメディアにも露出が増える皆愛だったが、幹一は娘を奪われるような複雑な気持ちを抱えていた。★★★★

本体価格820円
★★★★★

0
2026年09月17日

Posted by ブクログ

面白かった!!!
元芸マネという作者なのもあり、リアリティがあった。
でも結局、堕ちるも輝くもその人次第。
有名になっても驕らず正しく過ごしていかねばならない世界なんだな。
正しき者が必ず勝つわけでは無いのだろうけど。

闇ばかりの結末かと思いきや、
これから輝く人、正しく歩く人など、良い終わり方もあってほっとした。

読みやすい文章だった!

0
2026年09月21日

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