あらすじ
「どうしておまえだけが、祝福を受けたの」
そう言って僕を痛めつけるねえさんは、
まるでうつくしいまま死んでいる蚕のようでした。
生きるための信仰とは、なにか。
第69回群像新人文学賞受賞作
***
この町で異教の神様を信じることは、
生きながらにして死ぬことと同じだった。
北海道南西部の小さな港町で暮らす姉弟。
ふたりは異端者の子として迫害され、
やがて暴力を伴う依存関係へと陥ってゆく。
そこに救済は、すべてに先立つ愛はあるのか。
装画:山口十和
装幀:六月
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Posted by ブクログ
装丁とタイトルに惹かれたら、群像新人文学賞の受賞作とのことで読んでみた。
なんと言えばいいのか、、、
とても奥深い作品だった。これが新人?どれだけ沢山の文学を読み込み、繊細な心で作品と向き合っているのだろう、と驚かされる。しかも20代前半の女性。作品の前に、作者がこれまで触れてきたものを知りたい!それくらい、作品から作者の内面が静かに滲み出る本だった。
北海道の田舎町で、過酷な家庭環境の中、中学生の姉弟が二人暮らしでギリギリの生活を送っている。摂食障害の姉は死に近づくことで生を感じ、弟は蚕のように一人では生きていけない弱い姉を通して生を感じる。母親がキリスト教に傾倒し、信仰のために家族を捨てて行ったことで、子どもたちは母への愛憎と宗教への嫌悪を抱えながら、共依存して生きていく。
姉が高校進学を機に離れて暮らし始め、姉は下宿先で、弟は友人との共同生活で、それぞれ新しい歳上の友人たちと出会う。
狭窄した世界から旅立ち、初めて家族を通さず個としての自分を認めてもらい、自我を持っていく。嫌悪していた宗教にも、教会に通うことで、母親が信仰したキリスト教ではなく、自分が信仰したいキリスト教を見つけていく、そんな作品でした。
とにかく文体が素晴らしかった!
初めて知る言葉、回りくどくないのに重厚に伝わる言葉選びが本当に見事で、文章のひとつひとつが心に残った。純文学のため難しいように思えるけれど、ゆっくり反芻しながら読むとちゃんと理解できる。
それぞれの生きる苦しさ、尊さ、弱さ、「一人では生きていけない」というメッセージを感じた。
旧約聖書には、神はアダムの肋骨からイブを作ったと記されている。
いろいろな解釈があるけれど、私はここに「人は一人で生きていけないから、もう一人の人間が必要」という意味を見ている。
この作品でも、姉の肋骨が光っている描写があった。肋骨が浮き彫りになるほど痩せこけた姉の肋骨に触れ、その後共依存の二人が離れ、それぞれが生きるきっかけとなる人たちと出会っていくのかな、と思った。
全編通して、キリスト教にまつわる描写が散りばめられていた様に感じた。
もう一度、じっくりと読み返してみたい。
本当に素晴らしい作品でした!