【感想・ネタバレ】自分の弱さを研究してみた。:当事者研究という新しい冒険のレビュー

あらすじ

さまざまな「生きづらさ」を仲間とともに解きほぐす

「弱さ」や「苦労」は、
自分ごとからみんなのことになると、
解決のヒントが見えてくる

自分研究をはじめてみませんか




●本文紹介


「自分自身で、ともに」─。この言葉は、北海道の「浦河べてるの家」で産声をあげた「当事者研究」の精神を象徴するスローガンです。

医師やカウンセラーといった専門家から一方的に「治療される対象」として扱われるのではなく、みずからの抱える「苦労」を自分自身の手に取りもどし、仲間とともにその仕組みを研究する。それが当事者研究です。



本書は私・横道誠と、YouTubeで『未来に残したい授業』を運営し、日本中の一線級の研究者たちとつながっているだいまりこさんというふたりの「当事者」による対話の記録です。対話には、会場に集まった何人もの「共事者」たちが参加し、この当事者研究という自由でユーモアあふれる手法を用いながら、現代社会のさまざまな「生きづらさ」を解きほぐしていきました。
本書のベースとなったのは、東京・中延にある「隣町珈琲」で開催された連続トークイベント「当事者研究のワンダーランド」です。(略)




第1章「発達障害とニューロダイバーシティ」は、2023年12月8日に開催された第1回「ニューロダイバーシティとは何か」をもとにしています。発達障害(神経発達症)のみならず全人類の「脳の多様性」(ニューロダイバーシティ)を問題設定に据え、「定型発達」中心の社会でマイノリティが感じるハードルと、当事者活動の意義を語りあいました。

第2章「宗教2世」は、2024年1月8日に開催された第2回「魅惑と危険のあいだの宗教~信教の自由、政治と宗教の癒着、そして宗教2世~」をもとにしています。安倍晋三銃撃事件によって、社会問題として注目されるようになった「宗教2世」を取りあげました。私自身の経験を踏まえ、信仰という名の暴力がいかに子どもの人生を侵食し、現在進行形のトラウマを残すのか、そして当事者でない人々が「共事者」としてどう関われるかを模索しました。




第3章「ジェンダーとセクシュアリティ」は、2024年2月15日に開催された第3回「ジェンダー・セクシュアリティの現在系~フェミニズム、LGBT、弱者男性論~」をもとにしています。女性という存在の当事者性をメインテーマ、性的少数者がジェンダーやセクシュアリティの揺らぎを抱えて生きる問題、および弱者男性の問題をサブテーマとして、社会がいかに個人の選択を縛っているかを浮き彫りにしています。


第4章「海外生活を経験した人」は、2024年3月1日に開催された第4回「どのように海外文化と向きあうか」をもとにしています。私の本来の専門にあたる「海外文化」を取りあげ、海外留学体験のあるだいさんと私の異文化体験がいかに「当事者研究」的な自己相対化をもたらしたかについて対話を深めました。




第5章「こうやれば発信者として大活躍できる!」は、2024年4月13日に開催された第5回「こうやれば発信者として大活躍できる!」をもとにしています。私とだいさんの「発信者」としての技法に焦点をあて、SNSや執筆を通じたアウトプットが自己救済につながるプロセスを話題にしています。


第6章「人はどのように成熟できるのか」は、2024年5月11日に開催された「人間はどのように成熟できるのか?」をもとにしています。「当事者研究」がマイノリティにとっての「成熟」の技法になるという新しい展望を示し、本書のクライマックスの前半を形成しています。


第7章「当事者たちによって生みだされるもの」は、2024年6月8日に開催された「当事者同士のつながりが生みだすもの」をもとにしています。実際の当事者研究ミーティングを実演し、当事者研究をアナキズムの観点から理解するという、やはり新しい展望を開いています。本書のクライマックスの後半を形成していると言えるでしょう。
(略)




対話のなかでも強調していますが、当事者研究は、本質的には「遊び」の要素を含んだレクリエーションです。真面目すぎる資本主義の世界に、ポリフォニー(多声性)という風穴を開け、バラバラなままでともに在ることを肯定するアナーキーな試みです。本書をつうじて、読者のみなさんがご自身の「苦労」を研究するヒントを見いだし、少しでも肩の荷をおろすことができれば、著者としてこれ以上の喜びはありません。(本書「はじめに」より)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

発達障害診断を受けた文学研究者横道誠さんと、多分発達障害だろうなと自覚するYouTuberだいまりこさんのお二人が、生きていく上で引っかかりのある人たちをテーマに弱さというワードから考察していく一冊。
隣町珈琲という場所で対談をしながらその場のお客さんやオンライン配信を見ているお客さんの質問を受けリアルタイムで受け答えしつつ進めていくそれぞれの回の記録を起こしたもののよう。

自分も隣町珈琲の配信を何回か見たことがありますがお二人の対談は見たことがなくいつか見てみたい。
浦河べてるの家を始めた向谷地さんが書かれた、弱さについての本を先日読みましたが、本書にも浦河べてるの話がちらちら出てきて、何らかの生きづらさを抱えた人たちにとってはいまや当事者研究というワードは避けられなものとなっているのだろうか、などとまず思いました。

気になる言葉が目白押しでした。
たくさんありすぎるので少しだけ抜粋。
(20p)いろんな問題に関して、「これは自分ごとだ」と感じて、考える人の数が増えると社会全体の空気が上向いていく。
(p23)たとえば発達障害の子供が「何か困ってる?」と聞かれたら「何も困ってない!」って答えることが多いと思います。発達障害の大人でも そうかもしれません。小さい頃から自分が困っていることが当たり前の状況だから、自分がいつも困っていることを認識できていないんですよ
(同じ内容として)(p180)おとなになってから、いろんな知恵や知識が身についた後に、「本当はずっと困ってきた」と把握できるようになるわけです
(p123)(頭木弘樹さんの話の流れから)障害も異文化だということ(p178)親にしても学校の先生にしても、イライラ せざるを得ない状況に置かれているという構造的問題があってその土壌から叱る行為が芽吹いてくる(略)多くの場合、叱りたくて叱っているわけではない

発達障害者の人の場合、結構困ってることに気づいていない、または何に困っていると明確に言葉にできなくて困っているけど困っていると言えないということは多くあるように思います。しかしこれは周りも察することは難しいことが多いので、困ったままずーっと暮らしている人はかなりいるのては、と感じます。

p34にアライ(当事者を支援する非当事者。主にLGBT支援で使われることが多い言葉)について書かれている指摘について考えさせられました。要約としては、関心の高い人はアライが増えることでみんなが幸せになると分かっているからやってるけど、ほんとうに分かってほしい人たちは関心が向いてないからどうしたらそこの回路を開けるのだろうかということ。
これはLGBTの話だけでなく、障害者や要介護者など全ての福祉に関わる問題点だと思います。
まず関心のない人たちにどうやったら関心を持って自分にも関係あることとして関わってもらえるのか。
横道さんは諦めずに戦っていくことで変わってきたこともあるからそうしていくしかないという意味のことを話しています。
何でもやはり諦めたら終わり、ですね。
自分も身内に障害者や社会的弱者がいるから関心を持っているけれど、もしそういう人間が近くにいなかったら福祉に関心の薄い人間になっていた可能性は高い気がします。
やはり関わってもらう、関心を持ってもらうには自分は関係ないというスタンスをどうにかしてそういう人たちに変えてもらうしかないんでしょうね。

p220、子供を持ったら希死念慮が減るのでは?とだいさんが考えた著書を横道さんが読んで「自分には全く理解できない感覚」と話す場面がありました。
自分も似たようなことを考えたことがあり(ということは希死念慮があった時期があるということですが)、そういう考え方は産む性である女性ならではの考え方というか乗り越える方法の一つなのかなと思いました。
それが書かれただいさんの著作を読んでないので「だから(たいさんは)子供を産んだ」ということなのか、その考えとは別にお子さんを産んだのかはわからないのですが、自分はそう考えたあとに「自分の生きる道を確保するために生きる理由として子どもを産むのは違うのではないか」と思ったと同時に「もしそう思って子どもを産んでもやはり希死念慮が薄められなかった」となって万一自分が死んでしまったら残された子供はどうなるのか無責任ではないか、と考えてそんな理由で子供を産んではならないのでは、と強く思ったことを思い出しました。
子供を産むからには、純粋に産まれてほしい、子供が欲しいという気持ちで持たなくては子供に申し訳ないのではと考えました。結果的には色んな理由で子供を持たない人生を生きているわけですけども。

繋がりを持つ、関わる人を増やす、孤独だと感じる時間をどうにかして減らすか薄める。
それが大事なのだなぁとお二人の対談を総括してそう考えました。
そして著者やこの本の内容に関心のある人達がこの本を本当に手に取ってもらいたいと考えるのは、おそらくまずこういう本を絶対に手に取らないような人たちでしょう。
(だからその回路!をどうしたら…)

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2026年09月19日

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