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Posted by ブクログ
昔からあるようでなかった、日本特有の人間関係「世間」について考察した本。
近代西洋の自由で平等な「個人」を前提とする「社会」が普遍的で抽象的なのに対し、日本独特の「世間」は具体的、その外にいる者に対し排他的、長幼の序・互酬の原理が根付いている、情理や感性と関係が深い、無情、世知辛い、ままならないものと捉えられていた、といった特徴を持っている。
そんな「世間」の共通項は万葉の時代から続いているとされる。そして、第一章以降で、日本の奈良~平安時代、鎌倉時代、江戸時代、明治時代において、「世間」がどう捉えられていたかが述べられている。
良い意味で情緒的、悪い意味で閉鎖的な「ムラ的」であるとされる日本だが、人々が世知辛さを感じながらも、そんなムラ的な「世間」が続いたのは、彼らが「世間」に生活の指針を与えていたからなのだと思った。
我々は世間をなくすのではなく、世間とどう向き合っていくかを考えていく必要があるのだろう。なかなか面白く読めた。
Posted by ブクログ
”ソーシャル”、”世間”、”空気”などのワードを漁っていたところ、この教科書にも掲載されているような阿部さんの「世間」とは何かに行き着いた。
本書は古典的な書籍から「世間」に関する記述を引用し、その時代時代に応じての「世間」とは何かを客観的に捉えようとした大変興味深い内容だった。
個人的な興味としては歴史的な内容(古典系)は少し省き、明治以降(特に漱石)を中心に読んでみた。
前の鴻上さんの書籍でも指摘がされていたのだが、
社会=Societyには前提として個人=Individualがあるという点があったのだが、日本の場合、組織・社会という単位がメインなので、なかなか社会の定義が難しいという点は興味深かった。
複雑系の社会とはいえ、構成要因は昔も今も変わらず、私たち人間であるために、こういった書籍は時系列を経てもなお色あせることなく、その時代に応じて新たな側面で切り開けることもある。
社会と世間では社会学の分野ではあるが、この境界については様々な分野、またアニメなどでもテーマとして取り上げられることがあるので、一読する価値はあるのではないだろうか。