【感想・ネタバレ】ヒロイン【毎日文庫】のレビュー

あらすじ

次はいったい誰になればいいのだろう。
世間を震撼させた白昼のテロ事件から17年。
名を変え他人になりすまし、〈無実〉の彼女はなぜ逃げ続けたのか?

1995年3月某日。
東京渋谷駅で、毒ガス散布事件が発生。実行犯として指名手配されたのは、
宗教団体「光の心教団」の男性幹部と、
何も知らされず行動を共にしていた23歳の信者岡本啓美。
この日から、無実の啓美の長い逃亡劇が始まった。
他人を演じ続けて17年、流れ着いた土地で彼女が見つけた
〈本当の罪〉とはいったい何だったのかーー。

解説/梶原阿貴

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Posted by ブクログ

いやぁ、すごい読み応えだったなぁ。
誰かの半生を描いた物語っていつもなら長くて途中で飽きてしまうんだけど、これは一気読みだった。
主人公を含め女性の登場人物が多く、みんな強くてかっこいい。読んでいて気持ちが良かった。

最初の教団での生活から逃亡劇へ。プロローグで17年間逃亡するのはわかってるのに、もう捕まってしまうんじゃないかというハラハラと、何もやってないのになんで、という理不尽さでどんどん読めてしまう。
最後まで読んで改めてプロローグを読むとなんとも切ない。

巻末の梶原阿貴さんの解説を読んでさらに驚き。
何、本当に逃亡していた人!?
しかもラストまで一気読みして初めのページに戻って読んでるし、その時私が感じたのと同じ事が書かれているし。
解説でこんなに心持ってかれることなかなかない。なんてこの本に相応しい人なの。

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2026年09月27日

Posted by ブクログ

力作だった。17年間、逃亡していた女性の逃亡生活。しかも産むんかい!!と思った。どうか、無罪でありますように。

岡本啓美は光の心教団に入信して5年間体操部を任されている。教団立ち上げから10年。本部施設に出家という形で住み込むのが信者のステータスだ。創始者光野現師の子を宿すと最上階で暮らせるが、手狭になってきている。

その現師の子供がほとんどを占める幼年部の子達が体操部に来なくなった。本来立ち入ってはいけない5階に様子を見に行ってみるともぬけの空だった。側近の貴島がいて、俗服に着替えてきてくれと言われる。ジーンズとTシャツに着替えた。ジーンズは入らなくなっていて諦めて白ジャージのままとした。20キロは太った。教団が鏡など見なくていいと言ったのだ。車に乗せられる。私語は禁じられる。車から降りて歩き回り、ラーメンを食べ、トイレに行き、ペットボトルから飲む。暗くなってきて一軒家に着く。携帯電話が鳴り、貴島が電話に向かってさまざまな疑問を畳み掛けるが何も得られなかったようだ。日下部と呼ばれる家主が戻り、新聞を差し出した。捕まったら死刑だと言われて追い出される。新聞には渋谷駅で大量殺戮とあった。現師は無人島にいるという。貴島がトイレに立った隙にお金を2束掴み取る。

現師はリゾート施設跡で逮捕された。新潟の父のところへいく。啓美の顔写真が出回っていたので、髪を切り黒眼鏡をかけた。一晩泊めてもらう。母は大阪だが行く気はない。再婚相手がもう少しここにいてくれというので甘えた。父は再婚相手みどりと異母妹すみれに暴力を振るっていた。みどりとすみれの協力があり、ほぼ父と顔を合わせず生活できている。啓美はダイエットしてだいぶ減る。

啓美は鈴木真琴になった。5年過ぎた。鈴木真琴本人はフリーライターで、自分のフリをして祖母梅乃と住んで欲しいという。中国人のワンウェイと関係を持つが、一回につき一万円とられる。梅乃が入院する。余命は半年。梅乃が亡くなる。

2年半経った。教祖が死ぬ。貴島は手記を書き終えたが、出頭が嫌だったのか、教祖のいない世界がダメだったのか自死する。

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2026年09月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

描写が丁寧で表現がとても綺麗。
冒頭で物語の行き着くところが明示されているからこそ、そこまでの道を苦しく愛おしく読むことができた。
寂しさを受け入れながら生きてゆく強さを感じた。
満足に“逃げおおせた”形で終わってくれたのはよかった。お疲れ様、と声をかけたい。

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2026年08月22日

Posted by ブクログ

桜木紫乃『ヒロイン』毎日文庫。

指名手配犯となった主人公の女性の数奇な運命を描いた逃避行小説。

主人公の岡本啓美は何処で道を踏み外したのか、それとも単に運が悪いだけなのか。タイトルの『ヒロイン』が虚しく感じる。

岡本啓美が指名手配犯となった事件のモデルは言わずもがなオウム真理教による地下鉄サリン事件であろう。本作では事件そのものについては深く描いておらず、主人公の17年間に及ぶ逃避行に焦点を当てている。


既にプロローグで指名手配犯となっていた岡本啓美が警察に捕まることが明らかにされている。

1995年3月、東京の渋谷駅で毒ガス散布事件が発生する。実行犯として手配されたのは宗教団体『光の心教団』の男性幹部の貴島紀夫と全く何も知らずに行動を共にしていた23歳の信者の岡本啓美だった。

この日から無実の啓美の長い逃亡劇が始まる。かつてバレエ教室を主宰する母親の勧めで、バレエを習っていた啓美は母親の強制と食べ物の制限が嫌になり、叔母の紹介で『光の心教団』の信者となり、教団の建物で暮らしていたのだ。一方、啓美の父親は若い女性と一緒に暮らすと言って、母親と離婚して新潟に住んでいた。

啓美は実の父親を頼り、新潟へと向かい、父親と妻のみどり、その娘で啓美の妹にあたるすみれの3人が暮ら家で約1ヶ月の間、身を潜める。その後、啓美はその家を出て、ライターの鈴木真琴の誘いにより、鈴木真琴に成り代わり、埼玉でスナックを経営する真琴の祖母の梅乃と暮らし始める。ライターの鈴木真琴は地下鉄毒ガス散布事件を取材するために啓美の他にあの貴島紀夫を匿っていたのだ。

永住の地も見付からぬまま、家族も作れぬまま、浮き草の如く駄目な男に翻弄されながら、微かな光を求めて啓美は長い長い旅路を続ける。

本体価格1,200円
★★★★

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2026年07月29日

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