【感想・ネタバレ】パルチザンの理論 ――政治的なものの概念についての中間所見のレビュー

あらすじ

二〇世紀の戦争を特徴づける「絶対的な敵」殲滅の思想の端緒を、レーニン・毛沢東らの《パルチザン》戦争という形態のなかに見出した画期的論考。

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王朝間の戦争を、傭兵を用い、「在来的な敵」を相手どって行なうゲームとすれば、ナポレオン軍に対抗したスペインのパルチザンは、史上初めて相手を、自らの実存を脅かす「現実の敵」と認識した。19世紀までのヨーロッパ公法は、主権国家と「正しい敵」(この「在来的な敵」と「現実の敵」)概念によって秩序づけられていた。20世紀はこの崩壊を目の当たりにする。一方、19世紀初頭以来萌芽状態にあったパルチザンは、レーニンと毛沢東によって革命と戦争の主役に躍り出るとともに、敵概念にも決定的変化をもたらした。爾来、「絶対的な敵」殱滅への道程が用意される。《パルチザン》をキーに20世紀の経験の変容を叙述した、シュミット政治学の白眉。

【目次】
はじめに

序論
Ⅰ この論文の出発点──一八〇八年から一八一三年まで
Ⅱ われわれの考察の視界
Ⅲ パルチザンという言葉と概念
Ⅳ 国際法の状態への展望

理論の展開
Ⅰ パルチザン主義に対するプロイセンの不適合
Ⅱ 一八一三年のプロイセンの理想としてのパルチザンおよびその理論への表現
Ⅲ クラウゼヴィッツからレーニンへ
Ⅳ レーニンから毛沢東へ
Ⅴ 毛沢東からラウル・サランへ

最近の段階の局面と概念
Ⅰ 空間局面
Ⅱ 社会構造の崩壊
Ⅲ 世界政治との関係
Ⅳ 技術的局面
Ⅴ 合法性と正統性
Ⅵ 現実の敵
Ⅶ 現実の敵から絶対的な敵へ

訳者解説
第二刷への訳者あとがき

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Posted by ブクログ

ネタバレ

18世紀ドイツにおいては強い枠づけがなされることでの戦争の正規性が発展したため、敵はあくまでも慣習的な敵として深刻さを欠いた遊戯的な戦争であったのに対し、シュミットはナポレオンに対するスペインのゲリラ戦(パルチザン闘争)の非正規性、土着性に着目し、それが古典的な国家間による慣習的な戦争形態を変容させ、新しいラウム(空間)が開かれたとし、それを国家に代わる政治的なものの担い手として期待するのである。『パルチザンの理論』が「政治的なものの概念への中間所見」という副題をとっているのは、『政治的なものの概念』で示した、ヨーロッパ公法下での「慣習的な敵」と「絶対的な敵」という2種類の敵に加え、その間に「現実的な敵」という概念を持ち出すことで、「絶対的な敵」に移行することなく政治的な終焉に抵抗するカテコーンとして、またその「土地的性格」ゆえに敵対関係のエスカレートを回避できるということで肯定的に評価することで『政治的なものの概念』を補足しているからである。ただスペイン・ゲリラ戦争にはパルチザンの理論が、さらにプロイセン解放戦争にはその実践が伴わなかったとしている。20世紀にはいると国家の代わりに世界革命的な政党が主役に躍り出て、そのパルチザン的な闘争を不可避として重要視していたのがレーニンであった。レーニンにあっては友と敵を峻別として、常に革命の目標として絶対的な敵を規定することを重視したが、シュミットは郷土愛に根差したパルチザンの土着性に注目し、それを実践した点で毛をレーニンよりも評価するのである。しかし第二次世界大戦後になるとパルチザンが利害関係のある第三者からの援助を受けるために、その理念に沿って正当化を付与されイデオロギー化される必要が生じ、徐々に土地的な性格を失い、世界内戦に巻き込まれさらにそれは闘争技術の高まりによって加速されることとなる。しかし第三者からの政治的な承認を求めることなく、自らその正統性を打ち立てようとして失敗したのがラウル・サランであった。サランは自国では非合法的な存在として犯罪者として扱われ、世界政治的には第三者の援助を受けることなく反植民地主義という敵と対決しなければならなかった。ここに今日においてパルチザンが合法性の名のもとにその非正規性を非合法性に変えられて弾圧され、場所喪失を引き起こすという困難な状況が表されている。

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2018年06月17日

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