【感想・ネタバレ】狭間国家の地政学―ロシア近隣国に学ぶ4つの生き残り戦略のレビュー

あらすじ

独立か、従属か、中立か、複線か。国際秩序が崩壊に向かう今、大国に隣接する国家が下した30年間の決断から学ぶ日本のゆくえ。

米中露という大国の思惑が交錯する現代、軍事力や経済力で劣る小国はいかにして主権を守り抜くのか。
本書は、ロシアの隣で過酷な地政学的制約にさらされながら生き抜く旧ソ連諸国を「狭間国家」と定義。
その驚くべき生存戦略を解き明かす。
本書では、諸国が採用する戦略を「複線化のリアリズム」と呼ぶ。
特定の大国にのみ依存する「一本足」を避け、安全保障、エネルギー、物流、情報といった多層的な「回線」を自国で設計・管理する知恵を考察。
2022年のウクライナ侵攻、そして2025年以降の国際情勢の激変を踏まえ、コーカサス、東欧、中央アジア、バルト三国の最前線を、現地調査に基づき緻密に分析する。
ロシアが仕掛けるハイブリッド戦、エネルギーの武器化、さらには「難民の武器化」といった現代特有の脅威に対し、小国がいかに社会全体のレジリエンスを構築しているか。
その冷徹な生存の記録から、同じく大国に囲まれた「狭間」にある日本にとっても他人事ではない新たな国家設計図の補助線を見出す。

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Posted by ブクログ

【狭間国家の地政学】 廣瀬 陽子 著

 本書がきっかけで、廣瀬先生とお仕事をさせていただくことになりました。「狭間国家」とは、大国に挟まれた環境にあって、独自の戦略・思考をもって生き抜く国々のこと。本書では、「南コーカサス三国、東欧、中央アジア、バルト三国と周辺国」の章立てを設け、ロシア周辺の16ヵ国の動きを描出されています。地政学では、「ハートランド(ロシア)」と「リムランド(周辺国)」という概念がありますが、「単に大国に翻弄される存在としてではなく、地理的・歴史的な制約の中でも、自ら選択肢を作り、大国との関係を調整しながら生き抜いていく主体」として描きたかったとのこと。

 本書が素晴らしい点は、大国に挟まれた各国の思考・行動パターンが詳述されるのに加え、隣国・周辺国とは必ず物議・紛争・係争が起こるということも論評されている点です。得てして日本だけが周辺国と揉めているように感じてしまうのですが、国境を挟み、力のある国々と対峙すれば何がしかの軋轢が生じるということがよく理解でき、大変示唆に富みます。また、ロシアと国境を長距離に接しているスウェーデンでは、「包括的安全保障」と称して、万一の場合の備え、食料・エネルギー・核シェルターが万全に準備され、ポーランドでも、訓練やサイバー対策など、驚くほどの対策をとっている点にも驚かされました。

 廣瀬先生は、こうした「狭間国家」の分析を行った上で、何か一つに頼ることなく、「複線化」することを提唱されています。ロシア・ウクライナの関係では、よく小泉悠氏とともにTVなどで論評されますが、実はこの二国に留まらず、とてもダイナミックなご研究をされていることがよくわかる一冊です。

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2026年09月10日

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