あらすじ
記憶を失った少年・Kの前に現れた、霧の体を持つ“図書館”の遣いたち。彼らにいざなわれ始まったのは、“世界の中心”をめぐる現代の冒険だった――。きわめて野心的な着想と、グレッグ・イーガンを思わせる華麗なサスペンスによって絶賛を浴びた第三回創元SF短編賞受賞作「〈すべての夢|果てる地で〉」をはじめ、外界から孤絶した宇宙施設を舞台に、五分後の未来を見せるキューブの奪い合いをスリリングに描く「ディセロス」など、驚くべきアイデアを凝縮した全六編を収録。日本SF界が登場を待ちわびた俊英によるデビュー短編集。/【目次】折り紙衛星の伝説/〈すべての夢 │ 果てる地で〉/四元数の悪魔/ディセロス/キャプテン・セニョール・ビッグマウス/黒い星の伝説/解説=堀晃
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Posted by ブクログ
創元日本SF叢書33は理山貞二の短編6作品。初めて知るSF作家。以前読んだのかもしれないが、覚えていないということは心に残らなかったか、若しくは途中で読むのを諦めたのかもしれない。あるいは不運にも、理山貞二の作品に出会っていなかった可能性も考えられる。いずれにせよ、今回改めて理山貞二の作品に触れ、どの様なストーリーを展開してくれるのかとても楽しみである。勿論、権威のある創元日本SF叢書に選ばれたのだから、SF作家としての将来はある程度明るいものとなるはず。
さて、この本の巻末には堀晃の解説があり、ここで作者の略歴を知ることが出来る。ここで目を引くのは出身大学、大阪大学の基礎工学部。昔から阪大のこの学部名である「基礎工学部」の「基礎」意味が判らなかった。理学部寄りの工学部ということなのか?まあ、阪大には全く興味が無かったので深く知ろうともしなかったが、なんと解説の堀晃も大阪大学の基礎工学部だった。そうか、学校繋がりで解説を担当することになったのか。余談になるが、小松左京は堀晃をだいぶ目をかけていた、気に入っていたようで、堀晃の作品「太陽風交点」を大絶賛していた。当時は小松左京の後継は堀晃とされていたが、その後なぜか堀晃の作品はあまり世には出なかった。寡作家なのか作品が評価されなかったのかは不明だが、実にもったいない話である。更にこの小松左京の流れが分断されたことにより、ハードSFの流れが徐々に萎んでいったのは極めて残念な事である。理山貞二は2014年に第3回創元SF短編賞を受賞したが、専業作家ではないのでそれ以降はあまり作品を世に出していない。堀晃は小松左京と理山貞二との関係を強調して後継になり得ると期待しているのだが、堀晃は1944年生まれ、理山貞二は1964年生まれでは尚更大幅な作品は望めないが、定年退職を機会に遅咲きの専業作家となって沢山の作品を世に出して欲しい。最近ちらほらと、若手のハードSF作家(春暮康一、宮西建礼、関元聡など)が素晴らしい作品を出している。なんとかハードSFの火種を絶やさないで欲しいと願っている。
さて、作品については、ハードSF口調のためか、ハードSFに慣れていない人はあまり踏み込んで作品を読み解くのは少々難しいかもしれない。科学のテクニカルタームが読むスピードを遅らせ、ストーリーの理解度を減退させる。ただ、作品を理解して戴く工夫も各所で見られるので、そこがどれだけ一般に認められるかは読者による。
定年退職したら、一度は長編ハードSFにトライして戴きたい。