あらすじ
戦後知識人は今よりずっと国防に熱かった!
日本は生き延びられるのか?
反核か核武装か?
戦後憲法をどうする?
アメリカは頼れるか?
いまにつながる論点は、すべてここにある!
敗戦後の日本の最大の課題は「安全保障」だった。東西冷戦のなか、軍備放棄、平和憲法に始まり、講和条約、安保闘争、核武装論、そしてアメリカとの対峙――。最高の知性たちが戦わせた白熱の論議から、いまに通じる論点を取り上げる。緊迫度を増す現代にこそ読み返したい「日本人の選択」。
第一章 全面講和か多数講和か
「八紘一宇」を裏返した南原繁
福沢イズムのリアリスト小泉信三
第二章 軍隊と捕虜の体験から
「異端者」の目で日本軍を告発した山本七平
捕虜・会田雄次がみた「西洋という野蛮」
第三章 「核の選択」をめぐって
「死にたくない」反安保の旗手清水幾太郎の「変節」
「戦後の風潮」を撃ち続けた福田恒存の「滅亡論」
第四章 アメリカとどう向き合うか
NOと言い続けた「反抗児」石原慎太郎
江藤淳が拒否した「ごっこの世界」
第五章 「核兵器反対!」はどこが欺瞞か?
終末に魅せられた「平和主義者」大江健三郎
吉本隆明は高度資本主義に賭けた
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
日本の戦後を、「戦争と平和・安全保障・アメリカ」という切り口で、論敵であったり、明らかに対極的であったり、始めは近かったのにずれていったりする人達を対比させています。
著者の人物の対比の妙、そしてその洞察力には舌を巻きます。
① 南原繁と小泉信三
講和条約をめぐる南原の全面講和論と現実主義の小泉の多数講和論の考え方の相違。
現代から振り返れば、小泉の方が正しい判断だと思います。ただ全面講和の主流派の考え方は非武装中立論とセットになっていますが、南原は武装中立なのが異色で面白い。
② 山本七平と会田雄次
山本は一兵卒の目からみる日本の軍隊の非合理性を訴え、会田はイギリスのアーロン収容所での捕虜になった体験から。会田はアングロサクソンは捕虜に暴力を振るうような事はしないが、内側からでなければ見えない差別(有色人種を猿や犬と同じように人間と見なさない、また非欧米人は合理的な判断ができない等)の凄さを訴える。
③ 福田恒存と清水幾太郎
講和条約問題や60年安保では非武装中立論のオピニオンリーダーであった清水が核武装論に転じる背景(現実のソ連の侵略政策や、60年安保で丸山真男は岸を退陣させたことで成功だとするのも清水からみれば裏切りであった)と、保守として一貫して揺るぎない福田が、それを一刀両断に切り捨てる凄さと清水への思いやり。
④ 石原慎太郎と江藤淳
終戦時にともに12歳であった両者で、戦後の混乱期、そして高度成長期に青春期を過ごす。若くして頭角を現した二人の思想は共に保守だが、作家と批評家という違いだけでなく、性格も全く違う二人の共通項はアメリカからの自立。その背景を浮かび上がらせる。
※追記〈三島由紀夫vs石原慎太郎〉
この章で、脱線した話だが三島と石原の比較は一つの章ができるほど面白かった。
著者の見立ては三島は石原にコンプレックスを抱いており、常に石原の後追いで対抗しようとしている(スポーツ・映画出演・監督等々)。
これについての別途述べます。
⑤ 大江健三郎と吉本隆明
共に左派だが心情左派の大江と極左の吉本の違いが際立つ。吉本の心情左派への批判の凄さも見ものです。
別の本ですが極左の吉本と保守の論客である江藤は、お互いにリスペクトし5回の対談を行っています。「吉本隆明 江藤淳 全対話」(中公文庫)もお薦めです。
Posted by ブクログ
新書といえども、さすが博覧強記の片山杜秀氏らしいところが遺憾なく発揮された好著に仕上がっています。
敗戦後日本の論壇を席巻した人物を対比しながらこの国の戦争と平和、安全保障、アメリカという切り口から、どういう議論をしてきたのかが見事に整理されています。
しかも一方的に断定するのではなく、ふんだんに原文を引用しているところが、わかりやすい論証となっているのです。
素材は①南原繁-小泉信三、②山本七平-会田雄次、③福田恒存-清水幾太郎、④石原慎太郎-江藤淳、⑤大江健三郎-吉本隆明です。
特に力が入っているのが四番目で、三島由紀夫まで引きずり込んで、最も紙数を費やしています。
文章は、片山杜秀氏の軽妙な語り口をそのまま文字に置き換えた感じで、非常に読みやすいものになっています。
あたかも喋ったもののテープ起こしをして、肝心なところは書き加えて仕上げたような感じです。
後期高齢者の私には、同時代に活躍した人たちばかりですので、引用された文章の半分ほどは目にした記憶がありますが、同時に記憶も曖昧で、ここまで見事に整理して解説されると、そういうことだったんだと、今頃になって気づくことだらけです。
ただし、書名はダサ過ぎます。
編集者のセンス?おおい
Posted by ブクログ
大論争 この国の守り方〜戦後日本の戦争論〜
日経記事から片山杜秀氏に興味も持ち、本書を手に取った。不安定な世界情勢下、現代人が直面する問いでもある「日本は生き延びられるか?」「反核か核武装か?」「戦後憲法をどうする?」「アメリカは頼れるか?」等々、戦後昭和を回顧するかたちで議論の土台を整えてくれる良書。
まえがきより
一 南原繁と小泉信三で戦後日本の出発点の立ち位置を確かめ、会田雄次と山本七平で先の戦争と軍隊と捕虜体験を振り返り、清水幾太郎と福田恒存で安全保障論議を見直し、石原慎太郎と江藤淳で戦後日本に覆いかぶさるアメリカなるものをいくらか文学的に吟味し、大江健三郎と吉本隆明から第三次世界大戦シンドロームといいますか核時代の想像力に思いをはせる。そういう要領でございます。
不足している知識を補充しながら最後まで読ませる構成力と筆力に驚かされた。特に両論を時代を追って記載していることで、日本という国が「理想」と「現実」、生き残るためにそのバランスをいかにとるか苦慮してきたことがわかる。
最終節、高度資本主義が帝国主義を終わらせる?でAI、斎藤幸平と現在までつなげ、
一 もっともシンプルな問題が最も難しい。人間が生命ある身体であるかぎり、「戦争と平和」は避けて通れない問題なのです。と結ぶ。
これらを踏まえて東浩紀が「平和と愚かさ」で言うところの「一般人が考えない領域をつくること」平時と戦時の線引き、客体裏方的二重体についてなどを思い起こすと味わい深い。
小泉信三 1888年生まれ 57才
南原繁 1889年生まれ 55才
三木清 1897年生まれ 48才
吉野源三郎1899年生まれ 46才
小林秀雄 1902年生まれ 43才
清水幾太郎1907年生まれ 38才
福田恒存 1912年生まれ 32才
丸山真男 1914年生まれ 31才
会田雄次 1916年生まれ 29才
山本七平 1921年生まれ 23才
司馬遼太郎1923年生まれ 22才
吉本隆明 1924年生まれ 20才
三島由紀夫1925年生まれ 20才
石原慎太郎1932年生まれ 12才
江藤淳 1932年生まれ 12才
大江健三郎1935年生まれ 10才
(1945年8月15日時点)