あらすじ
物価高と軍備増強、中国敵視……。いまの日本には、1930年代とよく似た空気が広がっている。高市首相の「台湾有事」発言以降、急激に悪化する日中関係。日中戦争が勃発し、戦時体制へと移行した1937年と2026年を歴史的に比較検証する!
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Posted by ブクログ
日本人は空気に流されやすいと言われる。郷にいれば郷に従え、朱に交われば赤くなる、などの諺が示す通り、集団の中にいれば、周囲の空気感や慣習に従うべき的な圧力を感じる事もしばしばある。大衆に訴える能力の高い煽動家でも現れれば、国が誤った方向に行きかねないリスクは高いと感じてしまう。今の政治体制が良いか悪いかは置いておいて、高市総理は日本初の女性総理ということもあり、発言も明確だから(分かりやすい)、国民からの支持率も高い水準を維持している(直近やや下降)。総理なりたての頃は国民の熱狂ぶりにやや恐怖を感じることもあったが、案の定、国防関連では人気のある小泉進次郎を当てて、やんわりというより、むしろ明確に危機を煽って防衛費を「仕方ない費用」として、その負担を国民に求める方向に動いたりする。こんな動き方を見ていると、本書の筆者でなくとも、何だか、かつての太平洋戦争以前の日本の状況との類似性を感じてならない。
日本の戦争は誰が始めたのだろう。この問いに対する回答は難しいかもしれないが、重要な役割を国民自身が負っている事は間違いないだろう。民主的な政治体制であっても国民が方向性を誤れば、国は簡単に危機に瀕する。それはかつての太平洋戦争時の日本を見れば明らかな事だ。国民は熱狂した。真珠湾の緒戦での勝利だけでなく、それ以前に始まっていた中国との戦争についても、国民が束になってそれを推していた。だから誰も止められず、そのまま1945年8月の敗戦へと突き進んだ。
本書は現代の高市政権を見て、かつての太平洋戦争を開始した際の、「戦争を甘くみる空気」感を感じ取っている。そして国民がその様な感情に至るまでの、政治や軍部による巧妙なプロセスがあった事を説明している。前述した様な同調圧力や流されやすい国民性を利用した、巧妙な手法。危機を煽り、敵を憎ませ、自信を持たせ、怒りをパワーに変える。そして死ぬ事を美化し、恐怖を抑制する。そうやって戦場を美しい死に場所として飾り立て気分を高揚させる巧みな手法に、国民自らが戦争を望み後戻りのできない地獄への道をブレーキなく進む列車を作り出した。その時の流れを辿るかの如く、じわじわとアクセルを踏む現政権。勿論憲法改正など、必ずしも私は全てを否定するわけではないが、一度外れたサイドブレーキは坂道を転がる車の様になってしまわないだろうか。ならばサイドブレーキに触らないほうが良いのではないだろうか。本書がいう気づかないうちに戦場に連れ出されないか不安が心を過ぎる。
我々は政治を選べるし、自分の頭で考えられる。危機察知能力も備えているし、危険な場所は避けて通れる。だが、一人一人がしっかり考えなければ、大きな人の波に飲まれ戻りたくても戻れない場所に連れて行かれる。本書を読みながら、ふとテレビを見ると広島の原爆の映像が流れていた。かつて道を誤った国民全員が向かってしまった場所に、戦争をするイスラエルやアメリカの代表と肩を並べる高市総理が何を思ったか。