【感想・ネタバレ】うたの人物記 短歌に詠まれた人びとのレビュー

あらすじ

三十一文字できりとられた個性的な人々の生を、エスプリとユーモアに富んだ語り口で読み解く。知的好奇心をくすぐる短歌エッセイ集。

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Posted by ブクログ

人物のことだけではなく、時代背景から、関係する諸々の科学、芸術、政治にまで造形が深く語られ、引き出しの多さに圧倒された。
うつくしきひとみを持てる原節子映画にてわれいくたび見けん/佐藤佐太郎
原節子はまなこの全長が5センチあったそうで、当時では日本人離れした容貌だったとか。ちなみに小池さんは3.5センチだとまで書かれている。42歳で忽然と銀幕から消えて長い余生を送ったそうだ。どこか山口百恵みたいだ。小池さんはグレタガルボと書いているが。そんな原節子とすこし噂があったのが小津安二郎監督で、彼も歌を詠んでいたらしい。
こよひかもわれみまかればこのゆきのしろきをまきてさうらうべしや/小津安二郎
この本で一番ウケたのが斎藤茂吉に対する半端ない愛だ。
『粘着質でしつこい。食い意地が張る。嫉妬深い。上に弱くて下に強い。外面よくて内面わるい。思い込み激しく、被害妄想家。頑固頑迷。ノボセ体質。過剰防衛。昆虫に弱い。ケチ。激高と小心の共存。空想癖…などなどが常人の間尺に合わない独特の過剰さをたたえて、そこに本人の主観とは別の、なんともいえない愛嬌が生ずる。そして、そういう一種の「奇行」の折々にえらいインパクトを持った「言葉」が差し挟まれる光景に、爆笑しつつ、さすが斎藤茂吉と感じ入る』
具体的なエピソードも幾つか語られいるが割愛する。斎藤茂吉が立体的にリアルに感じられた箇所だった。

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2026年01月19日

Posted by ブクログ

 夕暮れのプラハの街を足ばやに役所より帰るフランツ・カフカ  ──玉城徹
 ミケランジェロに暗く惹かれし少年期肉にひそまる修羅まだ知らず ──春日井健

 タイトルの通り、人名を詠みこんだ短歌を紹介するエッセイ集。目次を見ると、科学者、作曲家、政治家、スター、詩人e.t.c.とバラエティに富んでいる

 小池光さんは歌人で、そもそも私は彼の短歌が好きでこの本を手に取った。そして、あまりに簡潔にして要領を得た、それでいて想像力豊かな文章に驚く。たとえば、ニュートンを説明するこんな文章。

「ニュートンはその物理学の原理いわゆるニュートン力学を記述するのに、適当な数学がなかったためまず微分積分学という数学の体系を打ち立てた。茶碗を作るためまずロクロを発明したごとくであり、小説を書くためにまず口語文を発明したごとくである。」

 ニュートンの業績がいかにすごいか、根本的なレベルの違いがよくわかる。私はこういう文章が大好きだ。

 短歌を題材にしつつ詠まれた人物の略歴に淡々と触れ、その印象を語ることに重きが置かれているので、短歌になじみがない人でもとても楽しく読めると思う。そのうえで、短歌と言う短い詩形に固有名詞、その最たるものとして人名が詠まれることの面白さを味わえばよいのでは。

 国境(くにさかひ)追はれしカール・マルクスは妻におくれて死ににけるかな ──大塚金之助
 リヴアイスのジーンズ試着してゐたら三島由紀夫が腹切つたのだった ──島田修三 

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2019年01月19日

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