あらすじ
iPS細胞や死生観をめぐる対談集。
再生医療やバイオテクノロジーが話題に事欠かない昨今、人気作家と再生医療の研究者が、先端技術から死生観までを縦横無尽に語り合う!
死にたくない――という人の切実な願いに現在の科学はどう応じるのか? 再生医療の研究者と人気作家の率直な対話は、生物学、SF、話題のiPS細胞、そして死生観へと広がっていく。生命のかたちを楽しく考えるヒントが詰まった、画期的な対談集。
■著者紹介
八代嘉美(やしろ・よしみ)
1976年生まれ。京都大学iPS細胞研究所上廣倫理研究部門特定准教授。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了、博士(医学)。東京女子医科大学特任講師、慶應義塾大学特任准教授などを経て現職。
専門は幹細胞生物学。再生医療研究とSF小説などを中心とするポピュラーカルチャーを題材に、「文化としての生命科学」の確立を試みている。著書に『iPS細胞 世紀の発見が医療を変える』(平凡社新書)、共著に『再生医療のしくみ』(日本実業出版社)などがある。
海猫沢めろん(うみねこざわ・めろん)
1975年生まれ。文筆家。さまざまな職業を体験した蓄積を生かし、小説やエッセイなどの分野で活躍中。著書に 『左巻キ式ラストリゾート』(イーグルパブリシング)、『全滅脳フューチャー!!!』(幻冬舎文庫)、『愛についての感じ』(講談社)、『ニコニコ時給800円』(集英社)などがある。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
はからずも、すっごく面白かった!!
字がデカいし、対談だから、軽~く読み流そうと思って借りたんだけど、対談とは思えない位良く解る。
今なら私、ES細胞とiPS細胞の違い説明出来ちゃうもん。(3週間くらい限定だと思うけど)
そして、興味を持てば、生物学の世界って面白いんじゃん!!っていう発見!
Posted by ブクログ
どらえもんは生物?→生物ではない。代謝と自己複製ができないから。
ES細胞・ips細胞はいろんな細胞になることができる。(分化能が残ったまま分裂する)
ES細胞は胚盤胞の内部細胞塊を培養したものである。しかし、受精卵を破壊するので倫理的に批判を浴びている(バチカンなど)。
分化しきった細胞の時計の針を巻き戻したものが、「クローン細胞」
ips細胞は、ES細胞に特有の4種類の遺伝子を組み込むことで、細胞の初期化につくられた。細胞も壊さないので倫理的問題もクリアしたとされる。が、4種類のうち1種が癌化にかかわる遺伝子だったため問題視されることもあったが、現在ではこれはクリアされている。
(埋め込につかったキャリアはウィルス)
日本は倫理規定が欧米に比べて厳しく、自由な実験がしにくい環境にある。
個々人に完全にオーダーメイドでなくても、HLAが合致していれば他人のデモ拒絶が起こりにくい。なので、骨髄バンクと同じく、ipsバンク構想がある。
「死」を恐れる気持ち。
自己イメージと実際的な自分、いうなればデータとハードがうまく同期しなくなっていくので、「怖い」のではないか。
Posted by ブクログ
まず、字がでかい。タイトルからして老人向けだということなのか。しかし中身はどうみたって老人向けではない。福岡伸一のいう動的平衡に納得出来ない、人は変化もするし死ぬではないか、という海猫沢めろんが、友人でもある生物学者・八代嘉美に「死にたくないんですけど、どうしたらいいかな」と質問をする対談集。万能細胞でいろんなことが出来るようになったとしても、偶然性に担保された緩衝作用がなければ世の中がギスギスと恐ろしいことになりそうだ。
僕もこうみえて長寿世界一を狙っているので、もちろん死にたくないんですけど、めろん先生の生命に対する考え方が突き抜けていて、僕の長寿世界一なんてその前では霞んでしまった。
生物学者はオーブリー・デ・グレイを除いてプレゼンがヘタだとか、iPhoneが引き合いに出てきたりとか、生命ということを語るのに視点の違いがすごくてとても愉快だぞ。
Posted by ブクログ
iPS細胞の本は何冊か読んだけれど、本書が一番初心者向けだと思った。対談形式なので読みやすい。海猫沢めろんが提起するデータとしての「不老不死」は受け入れがたい。やっぱり肉体があってこそだと思った。
Posted by ブクログ
生物学、興味はあれど普段なかなか接する事の無い分野なのですが、読みやすそうだったので購入。海猫沢めろんさんの「死にたくない、不老不死になりたい!」という希望から、八代教授とiPS細胞やES細胞の研究で病気、ひいては死を克服できる未来は来るのか、と語り合うという一冊です。……読んでいる最中は「なるほどー」と思うのに、ちょっと時間が経つとすぐまたイメージし辛くなってしまう、そんな自分の脳を呪いたい。
とはいえ、知らなかった事も色々出てきて楽しめました。海外ではガレージやキッチン、クローゼットなど、自宅で研究をしている在野の科学者達がいて、「バイオパンク-DIY科学者たちのDNAハック!-」という本もあるとは。細菌は「生物」だけれどウイルスは「生物」とは定義できない、などもそう。
対談をまとめたものなので、話があちこちにいってしまいiPS細胞についての本、としては纏まりがなくなっていますが、海猫沢さんが引き合いに出してくる映画やSF小説なども読者に興味深く思わせる一助になっているので、生物学への興味のとっかかりとしては良かったかな、と思います。個人的には人間は「ハード」と「データ」で成り立っていて、「ハード(生身の本人)」に会う事が「データ」を同期することだ、でも「データ」だけでもその人はある意味「生き続ける」という本の要旨とは違うひとつの結論に共感しました。