あらすじ
かつて、科学技術も情報処理も未発達だったころ、人々はどのようにして、自分の周囲の事象を受けとめ、その仕組みを理解しようとしたのだろうか。そんな時、最も有効で普及可能だったのは、神話という物語を利用することだった。そこで語られるさまざまな事蹟は、自らと森羅万象とをつなぐ手がかりとなったのである。本書は、「本の中の本」とも呼ばれる聖書に描かれた事柄を、古代人が世界を映した神話として再読する試みである。
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Posted by ブクログ
キリスト教の旧約・新約聖書に出てくる主要な神話を,著者の英文学の知識を織り交ぜて解説しており,楽しく読めた.神学の専門家の解説は分かりにくいことが通例だが,著者が敢えてこの分野に挑んだことは素晴らしい.
Posted by ブクログ
図像学等の知識よりも文学のほうに話を持っていきやすい。まあ、これが悪いわけではないが、少し、読みづらくはあった。しかし、それなりの刺激にはなった。で、著者自身語っているように曰く「聖書学の専門家ではない」との言葉の通りに、随所に?マークが出てくるところがある。で、この個所を覚えていないのが私の悪いところ。
Posted by ブクログ
著者亜h、キーツを中心に19世紀のロマン主義文学を専門とする英文学者です。本書では、旧約聖書および新約聖書のいくつかのエピソードを紹介し、その神話としての意味について考察をおこなっています。
ロマン派の詩人たちはその文学活動を通して、彼らの生きた時代にふさわしい、あらたな「神話」を生み出しました。彼らの文学活動をみちびいたのは、神話的想像力というべきものでした。このことから、古代の人びともまた、同様の能力にもとづいて神話を語ったのではないかと考えることも可能でしょう。
著者は、「世界とその中に生きる人間は有機的に結ばれている」と述べています。こうした世界観は、ロマン主義に特有のものなのかもしれません。しかし、ロマン派の詩人たちが駆使した神話的想像力にエネルギーを賦活したのはキリスト教にまつわるさまざまなエピソードだったこともたしかです。その意味では、西洋の精神史の潮流のなかで聖書の意味を考察する試みということもできるように思います。