あらすじ
運命の南3局。「和了った者は死ぬ」と言われている九蓮宝燈の手が入った彼女は、それになぞらえるかのように命を落とした…果たして事件の真相は!?
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Posted by ブクログ
「アガれば死ぬ」と言われる伝説の役満・九蓮宝燈。対局中にその手が入った女性が毒殺される。犯人はどうやって毒牌を引かせたのか?4編の事件からなる麻雀ミステリー。
印象的なのはやはり、麻雀をフックにした殺人事という独自性。九蓮宝燈を和了るのに、何故かツモを選んだ被害者。盗まれたのに何故か事件現場に一式揃っている雀牌など、独特な謎が展開されていくのは本作ならではの魅力です。トリックが破天荒だったり、麻雀要素が薄かったりと、事件ごとに一長一短といった印象はありますが。ただ、麻雀をほとんど知らない私でも解説は分かりやすく、置いてけぼりにされることが無いのは好印象です。
もう一点惜しいのは、主人公の「バイト刑事」というユニークなキャラクター設定がほとんど活かされていないこと。初回以降はごく普通の探偵役に収まってしまい、せっかくの個性が導入部だけで終わってしまったのは残念に思いました。
特に印象に残った話では「国士無双殺人事件」が挙げられます。
犯人が証拠を自動で隠ぺいする仕組みを用意したものの、隠ぺいが完璧すぎて自分ですら確認できない、という皮肉なオチは面白かったです。こうしたアイデアは本格ミステリとしても十分応用可能で、もっと掘り下げられればさらに光ったかもしれません。
総じて、本作は「麻雀×ミステリ」というニッチを開拓した、唯一無二の怪作。完成度にばらつきはあるものの、「麻雀ミステリ」とい独自のジャンルを切り開いた一冊として十分に楽しめました。