【感想・ネタバレ】老ヴォールの惑星のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

・ギャルナフカの迷宮
・老ヴォールの惑星
・幸せになる箱庭
・漂った男
の4編からなる短編集

いい意味でも悪い意味でも、
隔絶された世界でどう生きるのか
ということを描いた作品群と感じた。

『ギャルナフカの迷宮』
地下迷宮に幽閉された人々、1人1つの地図を渡され、食糧と水のありかが書かれている。他の人と地図を奪い合うのか、それとも手を取り合って生きていくのか。

『老ヴォールの惑星』
とある惑星に棲む宇宙人が、近い将来隕石が衝突し惑星が滅亡することが判明する。他の惑星に生命体がいることを信じて、発信を続けていく。

『幸せになる箱庭』
宇宙のプロフェッショナルの数名の人類が、とある惑星へ向かい、その惑星の調査を行う話。

『漂った男』
とある惑星に不時着をする1人の男。その惑星には陸がなく、全てが水だった。
あまりに広大すぎる水しかない惑星には、目印となるものもなく救助が困難であった。
しかし、その水には多分に栄養があり、それを飲むだけで生きることができる状態で、ただひたすらに救助を待ち続ける。


SFにハマるキッカケとなった作品。
と、将来思うと感じるほどにSFの魅力が詰まっていた。

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2023年10月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これは面白い。極限状況におかれた孤独な者が、他者とのつながりを見いだして懸命に生きようとする、そんなシチュエーションの短編集4編。

「ギャルナフカの迷宮」:政治犯として捕まった主人公が地下迷宮に放り込まれる。わずかな食糧と水、迷宮の地図の一部だけを頼りに脱出を試みるが、迷宮の中には「生肉喰い」がいて...
極限状況での孤独なサバイバルのはずが、少しずつ様相が変わっていくところにグイグイ引き込まれる。

「老ヴォールの惑星」:超臨海水の海面が支配する世界のお話。天変地異をきっかけに惑星外交信を夢見るが...
感動的な展開が待っている。

「漂った男」:8億平方キロの海原しかない惑星パラーザに遭難した男の物語。遭難ではあるが極めて安全で生命の危険は無し、故郷への帰還は絶望的で音信だけは使える、という特殊設定。遭難したタテルマ少尉を音信で励ますタワリ中尉の存在が泣かせる。そして劇的な展開が待っている。

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2023年05月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初めは全く関係のない短編集かと思ったのだが、人間の狭いスケールと時間感覚で測れるものではないと分かった。それほど壮大な宇宙感覚でまとめられた1冊で、神話のような悠久の時が流れている。
人類にとって当たり前に暮らす日々の均衡が崩れたらどうなるか、身体の能力に限界のあることをもどかしく思った。けれど『ギャルナフカの迷宮』や『漂った男』での人間の生きる力の逞しさにも出会い、「それでも生きよう」と思えるような前向きさを貰った。
特に『漂った男』が良かった。
偵察機で他の星で「生命の匂い」のする風を受ける、そういう表現が新鮮に届いた。パラーザの海はまるで羊水のようだと思った。その海に包まれて生きる地獄を、狂いながらも続けるところが特に良い。
最後の数ページで緊張感が一気に増し、なんとか帰還してほしいと思っていた自分に気付いた。

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2022年05月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初期作のためか、若干語り口がライトな印象を受けるが読み応えはあった。

「ギャルナフカの迷宮」
当初は話をどう持っていくのか見えなかったが、なるほどそっちに行くか、と。しかもそれすら予定調和であったという面白い展開。

「老ヴォールの惑星」
表紙のこれ生命体かよ!とびっくり。スケールの大きいファーストコンタクトを人間の側から描くものは数多いが、異星の側から描くものというのは稀だったように思う。最後のコンタクトは胸熱。

「幸せになる箱庭」
思考実験。ARやVRが一般的になってきた現状においてはあまり笑える話でもないし、ここに明確な答えが出せるものでもない。

「漂った男」
本作刊行後に『ゼロ・グラビティ』や『オデッセイ』といった宇宙遭難物がいくつか流行ったが、どちらにも類しない「生還も死亡もできない」という絶望。終盤の「むしろ帰るのが怖くなる」というあたりがリアル。最後の一文は『ゼロ・グラビティ』のラストにも通じるものが。

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2017年03月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

小川一水、初の短編集。
四篇ともどれも趣きが異なっていて飽きが来ない。


ギャルナフカの迷宮
反社会的な政治犯として一枚の地図とともに地下迷宮に落とされた元教師テーオ。地下には人数分の水場ときのこみたいなものが生える餌場しかない。生き残るために水場と餌場の記されている地図の奪い合いが起こり、人々は疑心暗鬼になっていた。一部の人間は、食べ物を求める欲望を抑えきれずに、野蛮な生肉食いと化していた。テーオはこの無秩序な迷宮に、文明的な社会を作ることを決意した。

閉鎖された厳しい環境下での生への渇望がナマナマしくてエグい。嫌いじゃないけど。


老ヴォールの惑星
巨大な海の惑星。その表面に生きる知的生物。体から光を発することにより、情報を種全体で共有することができる。多くの知識を溜め込んだ長老ヴォールは若者に、空の星のひとつに彼らの惑星サラーハに似た世界がある事を教えてその生を終える。サラーハに危機が迫ったとき、残された彼らは老ヴォールが発見した星を探し出そうとする。

この本のなかではやっぱり表題作であるこの短編が好き。地球起源の生命とは根本から異なる知的生命体の不思議な生活様式の描写に惹かれる。


幸せになる箱舟
火星まで生活圏を広げた人類は、木星で地球外知性体によって作られた自動機械を発見した。ビーズと呼ばれるようになったそれは、木星の大気を採取し彼らの母星に向かって超高速で射出していた。このままでは木星の重量が変化し、近い未来太陽系の惑星の軌道がずれていってしまう。人類はビーズを作り出した知性体クインビーと交渉するため、専門家達を特使として送り込んだ。危険と困難を極めると思われたそのミッションは、予想に反してとんとん拍子にことが運び、うまく行き過ぎることに疑問を抱いた時・・・。

人類を危機に追い込む地球外生命体による太陽系への干渉+人間の望んだ夢を見せてくれる未知の星。辛めに言うと、既出のアイディアを二つくっつけただけかも。


漂った男
未開の惑星の偵察任務中、タテルマの乗った機は墜落。海しかない巨大な惑星パラーザで漂流してしまった。救助を要請したが、広大な面積のため惑星のどこを漂っているのか特定できず、発見は絶望的だった。栄養価の高い海の水と空間距離に影響されないU(アルティメイト)フォンを命綱に、タテルマは漂流し続ける。

ほとんど何も起こらないことがポイントのストーリー。x年も独りぼっちで海を漂うなんて気の遠くなるような話だ。

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2023年03月08日

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