あらすじ
祖母の葬式が終わり、家族で祖父の生家に向かった天宇(たう)。母屋の蔵で、祖父が十代のころに書いた手記を見つけた。中学生だった祖父に興味をもち、「開くなら、あそこがいいな」と、町を見下ろす休憩所にやってきた。そこで出会った女性に「わたしがあなたなら、読むかもしれません」と、背中を押された天宇。
昭和二十六年八月と記された表紙が風でめくれると、こう書かれていた。
「あれから六年がたった。
……できるだけ正しく、あの年のことを記しておきたい。
だからまず、あの人との出会いを書かなければならない──」
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Posted by ブクログ
父方の祖母の葬儀で広島に向かった桜庭天宇。
葬儀の後に家族で今は誰も住んでいない生家に行き、天宇はそこで祖父が10代のころに書いた手記を見つけた。
手作りのノートの表紙には、昭和二十六年八月の年月と桜庭萃という名前だけ。
そこには、あれから六年がたった。から始まり正直な気持ちで、できるだけ正しく、あの年のことを記しておきたい。と祖父の思いが書かれてあった。
知らなかった、聞いたこともなかった祖父のあの頃のこと。
今は耳も遠くなり会話も覚束なくなってきたけれど、もっとたくさんいろんなことを話したいと思ったであろうことがわかる。
残しておきたい、伝えておきたい思いを家族は知っているのだろうか…。
何も記録がなければ、どんな思いで戦争を生きていたのか知らずに生きていくことになる。
少しでも知っていれば…と思ってしまう。
タイトルが詩のようなのは、手記の一部だからだろう。
弱虫だと言う少年の心の叫びを聞いたようだ。
一部抜粋〜
ぼくは決心した。
今後どんなおかしなことに巻きこまれようと、そこから受ける痛みに、ぼくは二度と泣きべそをかかない。そんなばかばかしい苦しみなんかに、ぼくの心はつぶさせない。
たとえまた、この世界が狂っても、狂った世界にぼくは泣かない。だって、よわむしなぼくの涙は、家族や、大切な人のためのものだから。
苦しむなら、君を想ってぼくは苦しむ。
泣くのなら、君のために泣く。
そうだ、君のせいだ、涙がでるのは。