あらすじ
巨大米軍が弱小ゲリラに負けるのはなぜか?
本書はМL・カヴァナーという米陸軍戦略家を務めた退役軍人のアイディアから生まれた。
それは彼が韓国に赴任したときのことだ。最前線師団の運用について、戦争計画を立てようと韓国軍将校と戦略の話をするのだが、どうもかみ合わない。それもそのはず。彼の話す戦略は、米国人の経験――南北戦争だったり、米西戦争だったりする――から生まれたもので、それが基礎知識としてなければ、話がわからないのだ。
「ゲティスバーグの戦いで北軍が大勝したよね。それと同じで……」などと話しても、韓国軍の将校にしてみると、「???」。
彼は悩んだ。
お互いに知っている戦争の物語(彼はそれを「共通の地形」と呼ぶ)がなければ、戦略について話し合うのは非常にむずかしいのだ。
そこで思いついたのが「スター・ウォーズ」シリーズだ。これならば、世界のどこの国の将校でも、知っているはずだ。このシリーズは、銀河帝国とそのエピゴーネンと、反乱軍および新旧の共和国の間の「戦いの物語」である。
幸いなことに、カヴァナーは大変なSFオタクでもあった。その結果、韓国軍とのコミュニケーションは急速に深まったのである。
この経験をもとに、彼は退役後、世界中の軍人、研究者、ジャーナリスト、作家らに呼びかけ、「スター・ウォーズ」シリーズの物語の中から戦略の教訓を読み取るプロジェクトを始めた。それが本書なのである。
ここでは現代の戦略の問題が、「スター・ウォーズ」シリーズの物語を通じて見事に説明されている。たとえば、ウクライナ戦争で使用されるAIやドローンの問題は、グリーバス将軍(四本の腕にライトセーバーを持って戦うサイボーグの将軍)や彼が操るハゲタカ型ドロイドと比較して語られている。大量破壊兵器による抑止力の問題は、あのデス・スターとヒロシマ、ナガサキの原爆を引き合いに論じられる。現実の世界における予防攻撃と先制攻撃の違いは、砂の惑星タトゥイーンでのハン・ソロと賞金稼ぎグリードの撃ち合いを例に説明される。
たしかに、これまでちんぷんかんぷんだったストラテジーの諸問題が、「スター・ウォーズ」シリーズのシーンを使うと、実によくわかる!
元アフガン駐留軍司令官で、本物の勇者であるスタンリー・マクリスタル大将(退役)は、こう語る。「戦略の教訓を、大衆映画、さらにはSFから学ぼうというのは、実に軽薄な考えに思えるかもしれない。しかし、知恵は見つけようとする場所にある。そして、思いがけない場所を探すことを恐れてはいけない。本書は、それを探し始めるのに最適な場所だ」と。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「スター・ウォーズ」を観た方は分かると思いますが、圧倒的に軍備の質・量で有利だった銀河帝国が、最終的にはレジスタンス的な反乱軍に敗れてしまいます。銀河帝国の戦略の何がまずかったのかを検証し、対テロ戦争で苦戦する現代のアメリカ軍の戦略を再検証してみよう、という趣旨の本です。
30弱の細かい章立てになっていて、各章約10ページ程度で完結し、個別のテーマについて「スター・ウォーズ」登場人物の言動や、場面に落とし込んで議論されています。
銀河帝国の艦隊編成が大型艦に偏り過ぎて反乱鎮圧にそぐわない内容だ、とか帝国軍の規律がダースベイダーに対する恐怖で縛られているので、基本的に”指示待ち”の硬直化した組織運営に陥っている、など装備面、組織面の指摘から、軍隊のシビリアンコントロールに関する考察など、様々な角度からの考察が盛り込まれています。
映画として、”巨大な悪に立ち向かって打ち勝つ”という構図が無いと盛り上がらない以上、デス・スターやスター・デストロイヤーみたいに銀河帝国の装備は巨大ですし、組織運営もパワハラが横行するような非民主的な側面は否定できません。その欠点・弱点を一つ一つ指摘するのは、酷というものという気もしますが、その分析が地に足をつけたものだけに説得力はありました。
本書の試みとしては非常に興味深いし、「スター・ウォーズ」がこれだけの考証に耐え得る対象だという点も改めて凄いな、と感じます。ただ、ちょっと残念なのが訳が少々読みづらいことでした。