あらすじ
サバンナを歩き、極地の海に潜り、大空を飛んで渡る野生動物たち。
彼らは、どのように食べ、逃げ、眠り、子を育てるのか?
本書は、生き物に超小型センサーやカメラを装着するバイオロギングという手法で謎に迫る。
「ヒヒは多数決で行き先を決める」「アザラシは一晩に四千回も狩りをする」などの発見から、厳しい環境を生き抜く進化のメカニズムが明らかに。
そこから見えてくる、ヒトの身体や行動に潜む進化的な意味も探る。
はじめに――バイオロギングが明かす野生動物の非凡な日常
第一章 サメは横に傾いて泳ぐ――怠ける
野生動物は働き者か?/カモがネギを背負ってやってきた/機器回収の天国と地獄/体を横倒しにして泳ぐサメ/第三の胸びれ仮説/薄気味悪い北極海の主/体育会系サメ実験/常識外れのスローライフ/ハチドリは鳥界の変わり者/異様なエネルギー節約術/鳥の編隊飛行は本当に楽か/トキは渦の性質を知っている/アフリカゾウしか知らぬ悩み/コアラの直面する大問題/木に抱き付く二つの理由/直立二足歩行は楽なのか/狩猟採集民のエネルギー収支/ヒトのヒトらしい生き方/ランニングに潜む壮大な皮肉
第二章 アザラシは一晩に四〇〇〇回狩りをする――食べる
給食大好き人間の末路/淡水湖のアザラシは何を食べるか/エタノールと百万本のバラ/捕獲と機器回収ははらはらの連続/アザラシの狩りは超高頻度/右利き、左利きのある魚/ファストフードは天から降ってくる/ナガスクジラという口の妖怪/クジラはなぜ大きいか/バイソンの呑気にも意味がある/おとぎ話のような科学的発見/都市を生き抜く奥義を身に付けた鳥/うまいものはなぜうまい?/舌という検問所/子どもが野菜を嫌う理由/体が欲する甘みと塩味/酸味とうまみの意味するところ/なぜ麻婆豆腐はうまいのか
第三章 鳥は飛びながらまどろむ――眠る
Z氏の謎/眠ることは生きること/片目を開けてまどろむ鳥/オットセイが海面で横臥する理由/鳥は飛びながら眠るのか/男はつらいよ/鳥が見せる二つの寝相の謎/くちばしの意外な機能/アザラシの「ふらふら潜水」/潜りながら眠るという妙技/すべての動物は眠るのか/クラゲの睡眠を調べる/旅先で寝付けぬ理由/月の満ち欠けとヒトの睡眠/一か月周期の不思議なリズム/体内でゆらめく残り火
第四章 閉経というミステリー――産む、育てる
どろんと消えたアザラシ母子/超特急の子育て作戦/卵を無駄死にさせるペンギン/マカロニペンギンが教えてくれること/「托卵」という化かし合戦/進化の軍拡競争/氷の消えた南極/海氷消失はペンギンにとって吉か凶か/温暖化が天の恩恵!?/親鳥は太り、雛はすくすくと育つ/極地の動物がくれた教訓/コウモリの母は心配性/外の世界へ飛び立つ日/孤立した池に魚がいるのはなぜ?/鳥の糞からの復活劇/魚は統計を知っている/閉経という巨大な謎/おばあちゃんの生物的役割/シャチやゾウの祖母は孫を世話するか/波平とフネに第四子が産まれたら/ハクジラ類が教えてくれる閉経の進化/五〇歳の閉経、八〇歳の寿命の意味
第五章 ヒヒのあっぱれな民主政治――群れる
キャンプ地を襲う静寂の悪魔/集団行動という進化の産物/群れの行先は誰が決める?/ヒヒの民主主義/ハトの群れにリーダーはいるか/渡り鳥の先輩と後輩/ツルの社会教育/海鳥の群れが情報交換!?/ウの情報センター/魚の群れが成立する仕組み/ヒトに友達がいるという謎/世界中の狩猟採集民を調べてわかったこと/他人同士を結び付けるもの/物語の力
おわりに――生物進化という永遠の謎
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
超小型センサー(バイオロギング)の発明によって動物の生態を克明に記録できるようになったことにより、動物の睡眠、繁殖、捕食活動の興味深い特徴について進化の観点から解説した生物学者の著作。
Posted by ブクログ
表紙だけ見ると、よくある最新の研究結果が記録されたお硬い内容だと思っていたが、読んでみたらぜんぜん違った!面白かったー!
最新の研究結果には間違いないと思うが、語り口調が混じってユーモアに書かれていて、難しいグラフなども一切なくて、非常に読みやすかった!
どの項目も面白かったが、特に
ペンギン達からわかる、温暖化は決して彼らを窮地に陥れるものではないという事、
人間の閉経と寿命の年齢が理にかなっている事、
そして、生物を通して自分達とはいったい何なのかを探求し続け進化していく人間そのものの不思議さ。
また時間をおいて読みたいと思う。
Posted by ブクログ
出来るだけ感情を排して、正確性と再現性を追い求めがちで、無味乾燥になりがちな理科系研究の知見を、ストーリー調で、ある種の謎解き風にテンポ良く提示してくれる。
文体がオジサンくさいのも、親近感を誘う、素晴らしき一冊。
Posted by ブクログ
大変面白かった。
著者は、生き物に超小型計測器を装着し行動を観察するというバイオロギングの手法により、生態の研究を行う研究者。
他の本でけん玉1級を持っていると書いてあった。失礼ながらちょっと面白い研究者。
各章のタイトルが面白いので書くと、
第1章 サメは横に傾いて泳ぐ━怠ける
第2章 アザラシは一晩に4000回狩りをする━食べる
第3章 鳥は飛びながらまどろむ━眠る
第4章 閉経というミステリーー産む、育てる
第5章 ヒヒのあっぱれな民主政治━群れる
これらは全てバイオロギングの手法により発見されたもの。
一番印象的だったのは、第5章の群れるのテーマで、ヒトはなぜ血縁関係や損得勘定を越え、他人と協力し合うのか。それは「物語の力」だという。
えっ、どういうこと?
人の集まるところには必ず物語がある。
物語は、協力、平等、思いやりといった道徳性をかたる。これが、血縁を越えて人を結束させる不思議な力を持つ。
なんか壮大な話しになってきた。詳しくは本書の5章にて。
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 サメは横に傾いて泳ぐ~怠ける
第2章 アザラシは一晩に四〇〇〇回狩りをする~食べる
第3章 鳥は飛びながらまどろむ~眠る
第4章 閉経というミステリー~産む、育てる
第5章 ヒヒのあっぱれな民主政治~群れる
<内容>
野生生物に超小型センサーやカメラを装着して、その行動を記録するバイオロギングの第一人者の本。わかりやすく、適切な文章。最後は人間に帰ってくる話。野生生物の驚きの生態とその理由。一気読みの出来る本である。
Posted by ブクログ
「ペンギンが教えてくれた物理のはなし」の著者の最新文庫本ということで、購入した。書籍の内容は著者の専門の「バイオロギング」を使用した研究内容で、自身が研究したことや他の研究者の内容で驚いた&興味深い研究を紹介する書籍である。
自身の研究体験談を交えながら最新の研究内容も紹介するスタイルであり、今回の書籍も面白く&興味深く読むことが出来た。
Posted by ブクログ
自然界で生き抜こうとする野生動物の驚くべき生態を、最新の研究手法「バイオロギング」で解き明かす。
バイオロギングとはなんぞや? とまずは興味が湧く。
対象動物に超小型センサーやカメラを装着し、自然の中での活動を記録するものと知れば、あぁなるほどとすぐ理解できる。その手の画像も近ごろSNSでよく上がってくる。この手法で、動物たちの知られざる日常が次々と明かされていることは容易に想像がつく。
タイトルにあるように、グンカンドリが左右の脳を片方ずつ眠らせながら寝るというのも、昨今の脳波センサーのナセルワザ(その小型化も含め)。これなどは、自分も近年健康管理のためウェアラブルデバイスを身に着けて過ごすようになり、睡眠状態の評価は毎朝見るのが楽しみなくらいだ。よくもまあ、安価な腕時計程度で、レム睡眠や深い睡眠の度合いまで計測できるものと感心する(その信憑性はどうか、というのもあるが、体感的に大きく間違っていない気はする)。
動物に装着した機器類の回収も、再度、捕獲するのか? と思ったが、それは冒頭に解消される。
サメに装着した例であるが、タイマーが仕掛けれられており、時間と共に被検体から切り離され、海中から水面に浮きあがる。さらにはGPSセンサーも内蔵されており、その電波を追って回収する。
これって、〖ジュラシック・パーク〗の最新作でも、ライフルで血液採取用の注射器を恐竜に打ち込み、採血が済んだらシリンダがシュポンと空中に発射されパラシュートが開くという仕組みで、観ていて、よく考えたなと感心していたが、なんなら現実でも似たように手法がすでに現場で活用されているかもしれない。
そんなことも思った本書で紹介される数々のバイオロギングの驚くべき技術であった。あれこれ、膝を打った。
膝を打ったついでに、本書著者の、古色蒼然とした文書のクセはどうかしたようよい。というか、編集さんが筆入れしなかったものかな? 要らぬ修辞というか、筆者の悦に入った表現が散見されて興覚めする箇所がなきにしもあらず。
上記、「はたと膝を打ちたくなるような」とか、「はたと」とペアで使う固定された表現のオンパレード。尊敬する研究者の修辞に「爪の垢を煎じて飲みたい」。もう、筆先で表現が出てしまうのだろう。
研究に赴いた僻地の天候が思わしくなく、曇って雨が降っていたら、「鈍色の雲が垂れ込めて冷たい雨が降り」と、そこでは逆に文学作品かのような言葉を使う。
「世界の美酒佳肴」「誰もが寝静まる暁闇の中」、暁闇(ぎょうあん)なんて言葉、初めて聞いた。「畢竟、温暖化が進行する将来」って、畢竟、つい使いたくなるのは分かるが、要らないよね。「ここぞという瞬間に脱兎のごとく」って、これもあまりにも定型文のみならず、アザラシの習性を語る場面で「兎」を使うかね!? と思わずツッコミたくなった。
「くらげの神経細胞は体中に分散し、いっかな集中していない」、これなんぞは意味は取れるが、聞きなれない言葉だと「いっかな」を調べたら、山陰地方の方言だそうな(意味は、まったく、少しも +否定)。
おいおい、校正さん編集さん、ここは直させたほうがよかったのでは?(苦笑)
と、次々と明かされる動物の面白い生態の合間合間のこうした表現に、ひっかかってしまうのはマイナス点。要らぬ、著者の個人的体験もやや多すぎるか。平易な言葉、著者が酔いしれてない表現で、すんなりと読めるともっと良かったかな。
最後、ヒトの進化の特性として「物語の力」という〆には、拍手を送りたいと思う。
(という点で、この著者、そうとう文学寄りの人なのだろうな、というのも想像はついたが)