【感想・ネタバレ】八月六日上々天氣のレビュー

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Posted by ブクログ 2012年08月02日

去年の夏に買いました。
新刊の棚に並んでいるのを見て、作者にしては珍しい題材だと思いました。
あとがきまで読んで納得。
いつもより抑え気味の文体に仕立ててある気がするのが、ノスタルジックで…従姉弟のほのかな想いも初々しく、まさに昭和。
戦争さえなければきれいでいい時代だったのだと感じさせる。
そして...続きを読む、汚いことや生々しい事は一切書かれていないのだけれど、型抜きでもされたように書かれていない部分が確かに戦争の輪郭なのだろうと思う。
「白」という言葉が多いのが印象的。

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Posted by ブクログ 2012年05月07日

「原爆」がテーマの本作。けれど、その瞬間も以後の世界も描かれていません。そこにいたるまでの日常が描かれた、緩やかで温かな青春小説です。だからこそ、以後を知る私たちには言いようのない虚無感と怒りがわいてくるのです。
ところで、文庫版は、東日本大震災のすぐ後に出されました。あるボランティア団体は、3月1...続きを読む0日、つまり震災前日に鎮魂の花火を打ち上げています。「3月11日は、どうしたって忘れない。そうじゃなくて、最後の日常だった3月10日を、その日常を忘れないために、花火を打ち上げようと思う」そんな趣旨だったと記憶しています。

この本もきっと、そんな鎮魂の儀式の一つです。原爆を忘れないために、原爆以前の日常を忘れないために。

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Posted by ブクログ 2011年08月02日

単行本を去年あたりに見たことがありすごくすきになって、本屋さんで文庫を見かけて購入

八月六日に起こったことについての記述は無くて、
ただずっと珠紀という少女のお話なのに何故か心に響く

あと史郎くんがかっこいい、なんだあれは
淡い、儚いものだけど、ほんとうに彼女がすきだったんだと思う

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年11月06日

再読。投下の瞬間を詳しく描かないことで、かえって大きな喪失が迫ってきます。
史郎が原爆投下で喪われ、市岡先生も実は鹿屋「に」ではなく鹿屋「を」立つだったんじゃないかと思ったりします。どちらも、最期に珠紀に会いにきたのだと。
出来るだけキラキラとした日常を送っていても、戦争の影はひたひたと迫ってきて、...続きを読む終戦近くにもなると空襲という牙を剥いてくる。
どちらが先とかではなく、こうの史代さんの「この世界の片隅に」とも似ている物語世界だと思いました。空襲の描写、長野さんも色遣いが特徴的でしたし。
珠紀はきっと広島市といっても海側の中心部からは離れた内陸部にいて、すずがいるのは呉。原爆投下は光と振動だけで、、
焼夷弾、油が降ってくるのは薄っすら存じていましたが改めて怖い兵器です。白く烟るように降る雨の如き激しさで。。

長野さんのあとがきでいつも長野さんのお父さまのことを考え…母方の祖父の弟の事も思い出してしまいます。叔父は8月9日に長崎にいました。幸いなことに生きて帰ってきたのでそれから長生きしてました。もしかしたら叔父も、何も語れず(語らず)いたのかなと思います。叔父一家だけかなり離れたところで暮らしていたのでほぼ会ったことがなく、そんな話する機会もありませんでした。
こうやって、先の大戦は遠くなりましたが、こういう作品を読んで反戦を染み込ませていくのは続けていきたいです。

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Posted by ブクログ 2017年11月01日

原爆とかどうとか関係なく、珠紀と史郎の心の交流が美しかった。これが、年下萌えなのか…?とも思ってしまったり。
原爆で死んだ史郎が最後珠紀に会いにくるシーンが、なんとも悲しい。
市原さんのことは結局よくわからなかったな。当時の若い青年の戦争観なのだろうか。
「突然消えてしまう」ように見える乗組員のよう...続きを読むに、突然消えた史郎。肉片になって敵の甲板じゅうに飛び散らずに、彼の肉体はどこへ行ってしまったのだろう…。
珠紀は毎年八月六日、白玉の泡蒸しを作って彼を思うのだと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年08月11日

夏なので夏っぽい長野まゆみ作品を再読しようキャンペーンそのご。今他に読みかけが2冊ほどあるけど、これは日を選んで読んだよ。

久々すぎてほとんど話憶えてなかったんやけど、改めて読んだらめっちゃおもしろかった。こういう時期のこんな日常がこんなに語られるのってあんまりないんじゃないのか?いや戦争モノ好き...続きを読むじゃないけんあんまり読まんくて知らんけど。
一番衝撃やったのは、特攻隊員進発の記事が女性たちに嘆きや悲しみ以上の興奮を与えたっていうところ。興奮てどういう興奮なんやろか。こんなの語られることないんやろうけど、戦争ってわたしらに知らされん一面が絶対あったはずよ。

6日の描写もあっさりしているようですごくドラマチックで素敵ですよ。それから、夫も史郎も会いにきてくれる珠紀はみんなに愛されているなあと思う。
でも、史郎せつないのうーーー

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Posted by ブクログ 2013年08月26日

河出文庫は昔のサラサラとした手触りの表紙の方がよかったなぁ。
表紙の淡い色彩によく合ったろうに…と思ったり。

あからさまには書かれないことへ思いを馳せて、しみじみと哀しく。
序盤の少女特有のきららかさが好ましかっただけに余計に。

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Posted by ブクログ 2013年08月21日

単行本の刊行は1995年ということですので、
戦後50周年の企画として描かれたお話なのかもわかりませんが
ただ勢いに乗って書いたという風ではないので安心して読めます。
(あとがきを読んで納得です)
細かい情景の描写と麗しき少年の描写はさすが長野さんだなと思いました。

よくある日常の中に何気ない顔を...続きを読むしてぐいっと入り込む戦争の冷酷さが
ひしひしと伝わる異色の作品でした。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2013年08月08日

読むのはこの日にしようと決めていました。
珠貴、従弟の史郎、市岡先生


>市岡先生
「この戦争は航空戦だ。飛ぶ機体がなくなれば、そのときがおしまいです。機体も飛行士も消耗するばかりで、いずれ足りなくなる。」

「たまき」なのか「まき」なのかちょっと混乱。
見まちがいかな?と目をこすってみた。...続きを読む
なんどか読み返してみると、どうやら友達の敦子ちゃんだけが
「まきちゃん」と呼んでいるらしいことが判明。

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Posted by ブクログ 2012年12月29日

題名を見ると、「原爆」文学なのかな?っと思われるかもしれない。
だが、八月六日の記述は約9ページ分。全体の1/15程度。

記述が少ない分、最後に史郎が現れる部分は、本当に深い。

それまでの珠紀と史郎の人間ドラマがこの場面に集約されてるような気がして。
そして、原爆の被害をつらつらと書くよりも、こ...続きを読むの一文はより印象的に残るように感じました。

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Posted by ブクログ 2012年11月29日

その日まで戦時ではあっても日常があったのだと改めて思わせてくれた本。
八月六日を知らない人が読んだなら「初恋」と題をつけてもおかしくない。

装丁は作者による原爆ドームが描かれている。表紙を見ただけでは避けてしまう人がいるかもしれない。私も長野作品でなかったら避けてたと思う。
でも、これはもったいな...続きを読むい。是非、手にとってほしい。読んでほしい。

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Posted by ブクログ 2023年08月15日

昭和16年から原爆投下の日まで、女学生珠紀の何気ない日常を、彼女を慕う4歳年下の従弟との交流を織り交ぜながら描いていく。

戦時下の市井の人々がただ凄惨な日々を過ごしたのではなく、不自由ながら小さな喜びを見つけて一生懸命生きていたんだとつくづく思う。

だからこそ、一瞬でその日常を奪った空襲や原子爆...続きを読む弾の理不尽さが際立つ。
鹿屋から(鹿屋へではなく)出発する市岡や、広島市内で原爆の犠牲となったであろう史郎が最期に珠紀に会いにきたことが切ない。

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Posted by ブクログ 2012年10月06日

従姉弟同士のかけがえのない、優しくて切ない時間にうっとりしました。
原爆がテーマとのことで最初は敬遠していたのですが、勧められ読みました。結果、読んで良かったと思います。
最初は原爆ではお馴染みの「ピカドン」で終わりだろうと高をくくっていのですが、原爆に関する記述はなくそれ以前の戦争中ながら優しさと...続きを読む慈しみにあふれた日常で始まり終わります。
原爆以前の日常を知らない世代にとっては、驚きなのではないでしょうか。学校では凄惨な戦場風景や戦争後しか教えてはくれないので、まさしく珠玉であり名作。
そう表現するにふさわしいかと。
この一冊に出会えたことが幸せです。
もっと考えが成熟してから読み直してみると、違った感想が持てるのではと思い、しばらくこの本な寝かせます。

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Posted by ブクログ 2011年07月17日

面白かったです。タイトルと綺麗な絵表紙に惹かれて手に取ったのですが正解でした。原爆について直接何か書くというのではなく、淡い文章と絶妙な人間模様が魅力ですね。淡々としていて心地よかったです。しかし最後は衝撃ですね。書かない事で書くということでしょうか。確実に心に残りました。

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