【感想・ネタバレ】顎十郎捕物帳(上)のレビュー

あらすじ

ヘチマなりの顎をぶらさげた、北町奉行所例繰方見習・仙波阿古十郎。難解な怪事件に鮮やかな推理で大活躍。探偵小説史に残る、本格ミステリ捕物帳。上巻に12話、異稿1篇を収録。
*目次
捨公方/稲荷の使/都鳥/鎌いたち/ねずみ/三人目/紙凧/氷献上/丹頂の鶴/野伏大名/御代参の乗物/咸臨丸受取/猫屋敷(「都鳥」の異稿)/三一書房版全集解説(都筑道夫)

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Posted by ブクログ

十二代将軍家慶の時代。旗本次男坊三男坊は江戸では食いっぱぐれ。風来坊の仙波阿古十郎(せんば あこじゅうろう)は、目鼻口は顔の上半分に固まって下半分は巨大な顎という異相の持ち主。しかし彼の前で「あご」なんて言おうもんなら斬り付けてくるもんだから、皆は面と向かっては「あ こ 十郎さん」と呼び、だが密かに「顎」と呼んでいる。
親戚の叔父さんっていうのは北町奉行所の取締役与力の森川庄兵衛。南町奉行所に比べたら地味だし実績も上がらん。この叔父さんは頑固一徹なんだが、顎十郎はひょうひょうと訪れてはサラッと事件解決して叔父さんからも小遣いせしめるちゃっかりっぷり。庄兵衛も「こやつ、案外目の付け所が良いぞ?」ってことで奉行所の「例繰方(れいくりかた)」という、判例やら刑律を調べる案外高いお役目を与えてやった。さらに江戸のお屋敷の中元達が彼の吉風に惚れてるもんだから、寝転がってりゃいくらでも情報は入ってくるし、ちょいと出かければ茶だの食事だのにありつける。
庄兵衛叔父の一人娘で従妹に当たる花世、捕物の腕をライバル視してくる南町奉行所の花形同心の藤波友衛、顎十郎の推理力を頼りにしている北町奉行所の御用聞きのひょろ松。
お江戸の難事件、怪事件を緩やかに鮮やかに解決するが「盗人の肩に手を置くような真似はしねえ」という根っからの風来坊顎十郎の捕物帳や如何に。

久生十蘭は華やかな言い回し(口述筆記なので本当に言い回し)に漢字の多い文章なので、ページを捲るたびに漢字・漢字・漢字が飛び込んでくる・笑。顎十郎の説明がこんな感じ。
<生得、いっこう纏まりつかぬ風来坊。二十八にもなるというのに、なんら、なすこともなく方々の中間部屋でとぐろを巻いて陸尺、馬丁などという輩とばかり交流っているので、叔父の庄右衛門がもてあまし、甲府勤番の株を買ってやったが、なにしろ、甲府というところは山ばかり。勤番衆といえば名だけはいかめしいが、徳川もそろそろ末世でいずれも江戸を喰い詰めた旗本の次男三男。端唄や河東節は玄人跣足だが、刀の裏表も知らないようなやくざ侍ばかり。やくざの方では負は取らないが、その連中、気障で薄っぺらで鼻持ちがならない。すっかり嫌気が差して甲府を飛び出し、笹子峠を越えて江戸へ帰ろうとする途中…(後略)(P7〜)>
編集者さんが振り仮名振ってくれてるからいいけど、目に漢字が飛び込んでくるし、「ベベン」って音入れたくなるし・笑

『捨公方』
今の公方様家慶公のお世継ぎ、家定様には双子の弟の政之助がいた。生まれてすぐに寺に預けられたが、出家を嫌がって出奔した。老中水野はこの政之助を要して幕府乗っ取りを企み!?
推理というより、軽いスパイ冒険物語って感じです。
最後、政之助様はちょっと可愛そうな気もする。

『稲荷の使』
連続毒殺事件の証拠が森川庄兵衛の座敷から消えてしまった!?このままでは責任を取っての切腹も免れない。青くなる庄左衛門だが、顎十郎はひと目見ただけで真相を見抜いた。

『都鳥』
近頃馬の尻尾が来られるという怪事件が勃発している。犯人としてあげられた男は切腹してしまった。だが辞世の句がどうにも怪しい。
そのころ顎十郎は、近頃江戸で大流行の舶来物の反物に、日本で織ったとしか思えない印を見つけて…。
勇気ある兄妹。しかし全員が助かるわけではないというのがこの時代のリアルなんだろうなあ。

『鎌いたち』
江戸に流行る辻斬りの鎌鼬。顎十郎は現場にあった釣り針から犯人を探り当てる!


『ねずみ』
ある店の夕食後に三人の死人が出た。南町奉行所(藤波たち)はコロリと診断したが、北町奉行所(庄左衛門、顎十郎たち)は毒殺だとして取り調べを続ける。腹が収まらない藤波は顎十郎のやり方を探り…。


『三人目』
清元(三味線、浄瑠璃の流派)の千代春が死んでいた。南町奉行所と北町奉行所の取り調べ競争だ。だが男を思いのままに操っていた千代春の死に対して、二人の男が「たしかに私がやりました」と吐いたのだ。顎十郎は、さらに事件の真相を当てる。



『紙凧(たこ)』
勘定屋敷に送る御用金を船で運ぶ途中にちょっとしたトラブルが。勘定屋敷についてから中を改めるといくつかの金箱の中身が古鉄やら古釘やらにすり替えられている!あの一瞬のトラブルの隙に盗まれたのか?
江戸時代の造幣局である「金座」の仕組みや、小判や銀を鋳造するシステムの解説もあります。

『氷献上』
江戸の夏の行事である「加賀様の雪振舞い」。冬の雪を氷室で保管し、夏に徳川将軍家へ献上する。その時に一部を庶民にも配っている。重大な将軍への献上品であるこの氷が盗まれた!?
人情物語。

『丹頂の鶴』
徳川将軍鷹狩の一つである「鶴御成(つるおなり)」。鶴御飼場で最初に狩った鶴は将軍に献上される。しかし鶴御飼場の鶴が不審死をした。老中は、南町奉行所の藤波友衛と、北町奉行所の顎十郎に、将軍の御前にて事件解明を行う「捕物御前試合」を命じた!
真面目で堅物の藤波に、のほ〜んと構えたような顎十郎は口八丁手八丁で「皆損しない解決☆」へと導くのだった。

『野伏大名』
顎十郎は、訪ねてきた侍にお屋敷の跡取り若君が行方不明になったので助けてほしい…と頼まれる。まさにお家の一大事どころか、天下をひっくり返す大事件にも繋がりそうな出来事だ。
身元を隠した依頼人を顎十郎がシャーロック・ホームズ並の観察眼で、身元も、事件も言い当てる。

『御代参の乗物』
大名の愛妾とその腰元たちが芝居見物に行った。その帰り、腰元たちが乗った籠が消えてしまった!


『咸臨丸受取』
近頃江戸での小犯罪がピタッと止まっている。本来なら善いことなんだが、あまりの静けさに奉行所は不気味さを感じている。顎十郎は大きな事件の匂いを嗅ぎ取った!


『猫屋敷』(「都鳥」の異稿)
『都鳥』の馬を猫にしたもの。『都鳥』のほうが凝ってたが、ラストの哀しみはこっちのほうが余韻がある。

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2026年08月20日

Posted by ブクログ

先月4月に、神保町・東京堂書店をふらついてたら、新刊文庫で見かけた。

創元推理文庫版で大昔読んだ。めっぽう面白かった。十蘭というと、これ。

橋本治さんがよく十蘭のことを書いていた。
それで、他の著作も読もうとしたのだけど、どうもシリアスそうで、億劫で....

その点、顎十郎はいいや。

探偵小説としてまず面白い。
次に、ゲラゲラ笑えるのがいい。

湯気を立てる庄兵衛老
その娘・花世
南番のライバル・藤浪
御用聞のひょろ松。。。

顎十との会話が、いちいち面白い。

都筑道夫の解説も示唆に富んでいて、読ませる。
※1970年と古い解説だがすばらしい。

下巻も買わねば

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2026年05月14日

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