【感想・ネタバレ】日本はなぜ敗れるのか 敗因21ヵ条のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

日本が第二次世界大戦でなぜ負けたのか?
戦前・戦中・戦後を生きた著者山本氏(戦時中軍人→捕虜→帰国)が、戦後からの視点・思い出で語られた分析・批評ではない、一国民・一文官(陸軍付き)として戦争を体験した小松真一氏(戦時中軍属文官→捕虜→帰国)の記した「虜人日記」(山本氏曰く現地性・同時性をもった目撃者の記録)を元に、日本の敗因について記述。

小松氏の挙げた敗因21ヶ条や山本氏の解説分析する出来事(バシー海峡の悲惨であまりに知られていない出来事、員数と実数、ルソンでの日本軍・軍属の出来事、山での出来事、pw・収容所での出来事、現実と虚構等々)は、現在の日本でも当てはまることが多いと痛感。

・・・戦争を経ても真の意味の反省ができておらず、あまり変わっていないかも。。。

あとがきより・・・
 兵士であるのに戦場にも着けず、海の中に消え、餓死し、住民に虐殺され、人肉を喰らうところまで追いつめられ、また食われた人々。
 彼らに「安らかに眠れ」とは言えない。・・略・・
敗戦の、原因と責任者の究明は、いまだ終わっていない。しかしそれをしなければ、また地獄を見る日が来るのではないか。・・・平成16年イラク報道に接しながら・・横山氏

明るい希望もある。「無一物中無尽蔵」

1
2014年11月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

故小松真一氏の『虜人日記』を現地性と同時性がある目撃者の記録としてとらえて太平洋戦争の敗因21ヶ条について解説している。

太平洋戦争の敗因分析は、野中郁次郎氏らの『失敗の本質』が有名であるが、それとはまた違った生々しい記録に基づいているのが本書の特徴である。

冒頭の「バシー海峡」の例からガツンと頭を叩かれた感じがする。
米軍はあの手がだめならこれ、この手がだめならあれと、常に方法を変えて来た。
一方日本軍は、50万を送ってだめなら100万を送り、100万を送ってだめなら200万を送る。そして極限まで来て自滅する。「やるだけのことはやった、思い残すことはない」と言う。

何が恐ろしいかと言うと、日本軍の話ではなく現代社会の会社においても同じ事が行われていると感じるときがあることだ。

この本の帯には、『奥田碩前会長が「せひ読むように」とトヨタ幹部に薦めた本!』と書いてある。まさにこれは、マネジメントの本である。『失敗の本質』同様太平洋戦争の敗戦という多大な犠牲から何も学ばないでは、太平洋戦争の英霊に申し訳が無い。

1
2013年10月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1.精兵主義の軍隊に精兵がいなかったこと、2.物量・物資・資源、3.日本の不合理性・米国の合理性、4.将兵の素質低下、5.精神的に弱かった、6.日本の学問は実用化せず、7.基礎科学の研究をしなかった、8.電波兵器の劣等、9.克己心の欠如、10.反省力なきこと、11.個人としての修養をしていない、12.陸海軍の不協力、13.一人よがりで同情心がない、14.兵器の劣悪を自覚し、負け癖がついた、15.バアーシー海峡の損害と、戦意喪失、16.思想的に徹底したものがなかった、17.厭戦気分、18.日本文化の確立なきこと、19.日本は人命を粗末にしたこと、20.日本文化に普遍性なきこと、21.指導者に生物学的常識がなかったこと
以上が敗因21箇条であり、一見すると戦争の敗因を示しているようであるが、現代にも共通する貴重な教訓を含んでいる。とりわけ反省力がないこと、文化の確立がない、不合理性、思想的に徹底したものがない、といった点は現在の政治の混迷を見ていて納得できる。日本人としてどこへ向かい、何をすべきなのか、考えさせられる一冊です。

1
2012年05月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

トヨタ自動車元会長が「ぜひ読むように」とトヨタ幹部に薦めた本。マネー、外交、政治・・・このままでは日本は再び敗れる。キャッチコピーに惹きつけられて。
2004年初版、ちょっと古い気もしたがキャッチコピー補足をみて共感をもった。
~山本七平氏は戦時中フィリピンで生死を彷徨い捕虜となった。戦後三十年、かつての敗因と同じ行動パターンが社会の隅々まで覆っていることを危惧した山本七平が、戦争体験を踏まえ冷徹な眼差しで書き綴った日本人への処方箋が本書である。現在、長期の不況に喘ぐ中、イラクへの自衛隊を派遣し、国際的緊張の中に放り込まれた日本は生き残れるのだろうか・・・?執筆三十年にして初めて書籍化される、日本人論の決定版。~
本書は最初に敗因を簡潔に述べている。なぜ負けたか。「それははじめから無理な戦いをしたから」とそれにつきるとしている。そして、日本人には大東亜を治める力も文化もなかった。敗因21か条をもとに日本人の本質を分析している。
なにも変わらない日本人の思考的本質。今も昔も変わりない。
失われた30年からさらに20年も前の出版物である。
日本人の生まれながらの“気質”は変わらない。あとがきの短い文に再思三考する。歴史を通して現在位置を知り、この先の羅針盤となるヒント、アイディアがちりばめられている。

0
2022年07月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

山本七平氏は『空気の研究』『日本人とユダヤ人』などで独
自の日本人論を展開し、多方面に多大な影響を与えてきた偉大な評
論家。副題に「敗因21カ条」とある通り、本書は、第二次世界大戦
で何故日本が敗れたのかを21の視点から語り下ろしたものです。

もっとも「敗因21カ条」は山本氏のオリジナルでなく、小松真一と
いう方のものです。小松氏は発酵の技術者で、戦時中はブタノール
(燃料)の生産・技術指導でフィリピン等の外地に赴任されていま
す。その当時の体験を振り返った『虜人日記』(死後に出版。ちく
ま学芸文庫で入手可能)で提唱されたのが「敗因21カ条」でした。

技術者ならではの科学的・実践的知見に満ちた、的確で痛烈な21の
分析は山本氏を魅了します。そこで『虜人日記』を底本にしながら、
山本氏自身の戦争体験や日本人観も踏まえて改めて日本の敗因につ
いた語ろうというのが本書です。

本書を読んだきっかけは、今回の原発事故を巡る一連の電力会社や
政府の対応とそれに対する一般の反応に、戦時中に起きていたこと
と同じ匂いを感じたからです。実際、読んでみたら、あまりにも旧
日本軍の言動と電力会社や政府のそれとが似ていることに慄然とし
ました。実は読んだのは震災後すぐだったのですが、それからの二
ヶ月間に起きたことは、本書で指摘されたことの真実性と普遍性を
次々に明らかにしているようで本当に恐くなります。

なぜこうやって色々なところで分析・批判されながらも、日本人は
同じ過ちを繰り返してしまうのでしょうか。「わかっててもやめら
れない」のが人間のサガかもしれませんが、それにしてもやるせな
い気分になります。結局、本書が指摘する日本人の精神や行動の癖
を一人一人がきちんと認識することから始めるほかないのでしょう。
軍や政府や電力会社等、一部の「悪者」のせいにするのではなく、
まさに自分の中に潜むものの問題として受け止める。そういう態度
からしか何も生まれないのは当時も今も一緒だと思うからです。

印象的だったのは、日本人は長期間の戦闘には慣れておらず、大多
数の国民は太平洋戦争の頃には既に戦争に飽き、疲れていたという
指摘でした。確かに日清・日露も満州事変も皆、短期決戦でした。
日本人は短期的には頑張れるけれど、だらだら続くものには耐えき
れずに「底無しの退廃」を生む。そう本書は指摘しています。

これから長期間続くであろう原発問題を考えると本当に恐ろしい予
言ですね。電力会社は来年の三月までに収束などと言っていますが、
そんなことはないでしょう。恐らくこれから何年も続くと思います。
その長期間の責め苦に日本人は耐えられるのか。厭戦気分を抱えな
がらも、「今更ひけない」という空気に支配され、玉砕、原爆、そ
して敗戦へと泥縄式に悪夢に引きずり込まれていった70年前の愚を
繰り返してはならないのは明らかです。

震災から2ヶ月以上が経過し、腰を据えてこれからのことを考え、
対処していかなければならない今だからこそ、読んでおきたい一冊
です。是非、読んでみてください。

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▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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断末魔の大本営が、無我夢中で投げつけているものは、ものでなく
人間であった。そしてそれが現出したものは、結局、アウシュヴィ
ッツのガス室よりはるかに高能率の、溺殺型大量殺人機構の創出で
あった。このことはだれも語らない。

軍人たちは、威張ることと居眠りすることと精神訓話で聴者のねむ
気を誘発し、それらの結果、実務を妨害する以外に能がない存在で
あった。だがそれだけではない。その軍人たるや、自らの専門であ
る軍事知識さえまことにあやしげで、アメリカ軍の装備や編成につ
いてすら、何も知らなかったのが実情であった。そしてこの奇妙な
現象は、常に日本に発生するのである。

日華事変の当初から、明確な意図などは、どこにも存在していなか
った。ただ常に、相手に触発されてヒステリカルに反応するという
「出たとこ勝負」をくりかえしているにすぎなかった。意図がない
から、それを達成するための方法論なぞ、はじめからあるはずはな
い。従ってそれに応ずる組織ももちろんない。そして、ある現象が
現れれば、常にそれに触発され、あわてて対処するだけである。

ある一つの主義に基づき、ある対象が在ることにする。奇妙なこと
に、これが、歴史的にも同時代的にも、そして昔も今も日本で行わ
れてきたことであった。精兵主義は確かにあった。しかしその主義
があったということは、精兵がいたことではない。全日本をおおう
強烈な軍国主義があった。だがその主義があったということは、強
大な軍事力があったということではない。

問題は常に、個人としてはそれができるという伝統がなぜ、全体の
指導原理とはなりえないのかという問題であろう。

戦争という概念が「月で計算するもの」であって「年で計算するも
の」でなかったことは、明らかである。(…)
せいぜい二年ぐらいしか、戦争という緊張には耐えられない国民性
をもっており、それは、当時の新聞や株式市場の記録を見れば明ら
かである。
それが、そういった「国民の決心・決意」を求めることもなく、
「三ヶ月ぐらいで片付づく」「警察力では鎮定し得ぬ程度の擾乱」
でほ対処であったはずのものが、ずるずると、わけのわからぬ一大
戦争に発展していっては、何ともいえぬやり切れない気持ちになり、
同時に、先行きに強い不安をもつのが当然である。そして、それを
自らの手でどうもできないこと、さらに、否応なく自分がそれに巻
き込まれていくことが、底無しの退廃を生む。

人という「生物」がいる。それは絶対に強い生物ではない。あらゆ
る生物が、環境の激変で死滅するように、人間という生物も、ちょ
っとした変化であるいは死に、あるいは狂い出し、飢えれば「とも
ぐい」をはじめる。そして、「人間この弱き者」を常に自覚し、自
らをその環境におとさないため不断の努力をしつづける者だけが、
人間として存在しうるのである。

徹底的に考え抜くことをしない思想的不徹底さは精神的な弱さとな
り、同時に、思考の基礎を検討せずにあいまいにしておくことにな
り、その結果、基礎なき妄想があらゆる面で「思想」の如くに振舞
う結果にもなった。それは、さまざまな面で基礎なき空中楼閣を作
り出し、その空中楼閣を事実と信ずることは、基礎科学への無関心
を招来するという悪循環になった。そのため学問は、日本という現
実にそくして実用化することができず、一見実用化されているよう
に見えるものも、基礎体系的に積み上げた成果でないため、ちょっ
とした障害でスクラップと化した。

敗戦が、戦争という異常性に基づく崩壊でなく、明治以来の日本の
通常性が生み出した一つの結末にすぎないことの暗示にもなるであ
ろう。崩壊は一つの通常性として進行していた。(…)「日本の敗
因、それは初めから無理な戦いをしたからだといえばそれにつきる」
のであって、結局、問題の根本は、「なぜ、はじめから無理な戦い
をする」結果になったか、という問題にもどって来る。

いわば自分のもつ本当の基準は口にしてはならず、みな、心にもな
い虚構しか口にしない。これは実に、戦前・戦後を通じている原則
である。

一言でいえば、「日本にはまだ自由はない」ということであり、日
本軍を貫いていたあの力が、未だにわれわれを拘束しているという
ことである。

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●[2]編集後記

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ここ二週間ほど、妊娠中の妻が体調を崩していて色々と大変です。
先週は義母に来てもらって家事を手伝って頂きましたが、夫婦だけ
の子育てというのは、有事の時に色々と難儀するなあと改めて思い
ます。お一人で育てていらっしゃる方のご苦労の比ではないですが。

娘も妻のことを気遣って、健気に頑張ってくれていますが、それで
もやっぱりストレスは溜まっている様子。この週末は、普段は泣か
ないようなことで大声をあげて泣いていました。泣くのが子どもの
一番のストレス発散のようで、腹の底から声をあげて泣ける娘を見
ていると、たまに羨ましくなります。もう何十年もそんな泣き方を
していないけれど、泣けないことで貯め込んでいるものって、やっ
ぱり相当にあるんでしょうね。

自宅と職場が近いこと、自分の裁量で働く時間を調整できること、
近所にいざと言う時に頼める気のおけない友人・親族がいること。
これらが子育てをしていくためには必要不可欠なことだと改めて思
います。そして、それは子育てだけでなく、地震などの災害から家
族を守る上でも重要なことなのでしょう。何かことが起きても柔軟
に受け流せるような暮し方・働き方・付き合い方ををしておくこと
が何よりも大事ですね。どれも今の東京では簡単に手に入らないも
のばかりですが…。

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2011年05月23日

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