【感想・ネタバレ】決断力のレビュー

あらすじ

決断するときは、たとえ危険でも単純で、簡単な方法を選ぶ。勝負の分かれ目にある集中力と決断力。勝負師はいかにして直感力を磨いているのか? 「決断とリスクはワンセットである」「欠点は裏返すと長所でもある」「直感の七割は正しい」「ミスには面白い法則がある」「情報は“選ぶ”より“いかに捨てるか”」など、数多くの勝負のドラマを実体験してきた天才棋士が「決断力」の極意を大公開! 「勝つ頭脳」は、こうして決断する。

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『決断力』
将棋界の頂点に長年君臨してきた羽生善治氏が綴った『決断力』は、単なる将棋の勝ち方を語る本ではなく、「どう生きるか」「どう選ぶか」を深く考えさせられる一冊でした。

ビジネスにも人生にも通じる普遍的な示唆に満ちており、読むほどに羽生氏の思考の深さと柔軟性に驚かされます。

この読書体験を通じて私が最も印象に残ったのは、以下の3つのポイントです。

1. 完璧を求めず、最善を尽くすという姿勢
羽生氏は将棋において「常に最善の一手を指すことはできない」と語ります。

将棋は一局で平均120手ほど、そのすべてに正解があるとは限りません。しかも、正解がわかるのは後になってからのことが多く、対局中に「完璧な一手」を求めすぎることは、逆に思考を狭めてしまうといいます。



この考え方は、日常生活や仕事における意思決定にも通じるものがあります。私たちはしばしば「失敗しない選択」を探そうとしますが、現実にはどの選択肢も一長一短があり、完璧な答えは存在しません。その中で、自分が持ちうる情報と経験を元に「その時点での最善」を選び、潔く腹をくくる。その姿勢こそが本当の「決断力」だと羽生氏は教えてくれます。



私自身も、完璧を求めるがゆえに行動が遅れたり、選択に迷い続けていたことが多々あります。けれど、本書を読んでからは「不完全でも、今できるベストを尽くす」ことが未来の正解に繋がるという確信を持てるようになりました。

2. 変化を恐れず、柔軟に考えることの大切さ
羽生氏は、変化を拒むことの危うさについて繰り返し言及しています。将棋界は一見、伝統と格式を重んじる世界のように見えますが、実際には新しい戦法や戦略が次々と登場し、それに対応できない棋士は取り残されていく世界です。羽生氏は、だからこそ「昨日までの常識が、明日も通用するとは限らない」と述べています。



この柔軟性こそが、長きにわたって第一線に居続ける羽生氏の強さの源であり、私たち一般人にも必要なマインドセットです。特に現代は、技術革新や価値観の多様化により、変化のスピードがかつてないほど加速しています。そんな時代においては、既存のルールや成功体験に執着するのではなく、「常にゼロベースで考え直す」くらいの柔軟性が求められます。



この考え方は、日々の仕事や人間関係でも有効です。たとえば「前はこれでうまくいったから今回も同じようにやろう」と思っても、状況が変わっていれば通用しないこともあります。羽生氏のように、常に新しい視点を取り入れ、変化を歓迎する姿勢は、どんな分野でも活躍するための基本姿勢なのだと感じました。

3. 失敗を恐れず、経験から学ぶ力
羽生氏は、失敗を恐れるあまり挑戦を避けることが、最も大きな損失だと述べています。将棋の世界でも、負けることでしか得られない気づきがあり、羽生氏自身も敗北を通して多くを学んできたと語っています。「成功よりも、失敗からの学びの方が深い」と断言する姿勢には、非常に勇気づけられました。



現代社会では「失敗=悪」と捉えられがちですが、羽生氏はそれを「成長の種」として捉えています。失敗を避けるのではなく、どう受け止め、次に活かすか。まさに「決断力」の本質は、失敗を引き受ける覚悟と、そこから何かを得ようとする意志にあるのだと思います。



この考え方は、私にとって非常に励ましになりました。過去の自分は失敗を恐れ、行動する前にブレーキをかけてしまうことが多くありました。しかし、羽生氏の言葉を通して、「失敗しない人生」ではなく「失敗から学び続ける人生」を目指したいと思えるようになったのです。

おわりに
『決断力』というタイトルは、一見すると「即断即決」や「非情な判断力」といった印象を与えるかもしれません。けれど、羽生善治氏が本書で伝えているのは、もっと人間味のある、深い知恵に満ちた「決断力」です。

それは、完璧を求めず、柔軟に思考し、失敗を糧に進んでいくという、人としての強さとしなやかさの象徴です。

本書を読み終えた今、私は「決断とは選ぶことではなく、自分の選択に責任を持ち、次に進む力である」という真意を理解しました。そして、羽生氏のように、静かなる強さと広い視野を持って日々を生きていきたいと強く思います。人生において何度も読み返したくなる、そんな一冊でした。

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2025年04月25日

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将棋のプロに対して誤った見方をしていたことに気付かされる本でしたね。
羽生善治さんの他分野にわたるたとえもすんなり入ってきました。

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2024年07月14日

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将棋をしている人だけじゃなく、全ての人に通ずる思考や決断に際してとても参考になる話。何度も読み返したい

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2023年06月23日

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知識は、実践できるように変えて知恵として発揮できる。得た知識は実践することが大切。

新手一生は、今や新手一回。苦労して創り出したものが、極めて短期間で陳腐化する時代になった。それでも尚、腐ることなく再びの創造へ血の滲む努力を続けること。諦めないこと。

名声や権威、お金を目標にしてはいけない。それによって態度が変わってもいけない。それはそもそも達成した後に、その後がない。

報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続してやれることは大変なことであり、それこそが才能。

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2023年03月19日

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選択肢が増えれば増えるほど、その選択肢を選ぶ際に迷いが生じてくる、その際に後ろ向きな心にならないために膨大な量の練習にうらずけられた努力があるのだろう。
著者は長年将棋の勝負の世界にいた、一見計算ずくめに見える将棋の一手も、直感といったものに頼ることがあるそうだ、しかし直感といってもなげやりではなく、これまでの練習にうらずけられた感覚であり、無意識下で膨大な計算を行っているのだ。
著者の実感にうらずけられた考えがこの本にはつまっている、真剣勝負の中で培ってきた考え方をこの本でぜひなぞってみてはいかがだろうか?

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2022年11月09日

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「決断力」というタイトルながら、テーマは決断力に限らず、筆者の将棋師・勝負師としての人生論が語られている。個人的には、次の一節を心がけたい。
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一つのことに打ち込んで続けるには、好きだということが根幹だが、そういう努力をしている人の側にいると、自然に良い影響が受けられるだろう。さらに、ペースを落としてでも続けることだ。無理矢理詰め込んだり、「絶対にやらなきゃ」というのではなく、一回、一回の集中力や速度、費やす時間などを落としても、毎日、少しずつ続けることが大切だ。無理をして途中でやめてしまうくらいなら、「牛歩の歩み」にギアチェンジしたほうがいいと思っている。

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2025年04月12日

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羽生さんの文章を読んでいると、この一文を書くに至るまでにどれだけの経験を積み、思考を深め、血反吐を吐いてきたかを想像させられる。一言一言の密度が濃い。将棋の一手もきっとこの文章と同じで、背景に膨大な思考があるのだと思う。将棋のことは全くわからないけれど、羽生さんがとても大変そうに、かつとても楽しそうに将棋を語るので、体験してみたくなった。
羽生さんはプロの棋士だけれど、会社員のわたしの日常にすぐにでも生きる考え方がたくさんある。トップレベルの人の視座は、業界に限られることなくどこにでも通用するのだ。

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2025年04月04日

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将棋というテーマを語る中で、羽生さんの考え方や将棋の特徴から、様々なことに通ずる見方・考え方を発見できた。

著者は最後まで、『自らで行動や実践を繰り返し経験を積む』ことの重要性を説いている。
また、それを自身の対局の心構えやイメージに照らし合わせ、新しい発見の喜びや出会いの奥深さを説得力をともなって読者に投げかけている。

全体的に、不利な状況や嫌なこと等の『ネガティブ』な要素を、発想の転換によって『ポジティブ』な考え方にしていることも本書の特徴である。
「純粋に好き」・「楽しい」・「嬉しい」・「やってみたい」・「やる気」・「絶好調」等の『ポジティブ』な言葉をキーワードとして、物事を捉え直し、人生で大切なことまでも示していると感じる。

粋で、寛容で、まっすぐで、柔軟な羽生さんの将棋に対する思いと生き方は、読者にポジティブな刺激をもたらしてくれる。
とてもいい本でした。

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2025年02月28日

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やり続ける、フラットな気持ちでいつまでも将棋をさす、これが羽生善治氏の強さだと思われる
凡事徹底なんかな?簡単そうでシンプルに思われるが実は1番難しい

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2025年01月27日

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余白を持って行動するところに特に感銘を受けた。人との会話、ジム、散歩、なんでも良いからそれらをできる心の余白を持つことは非常に大事であると再認識させられた。

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2024年09月29日

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羽生善治さんが当時最強の騎士だった理由がよくわかる一冊。約二十年前に書かれた本だけれど、普遍的な内容で今にも十分通ずることが多かった。彼の考え方や姿勢は将棋だけでなく、様々な仕事やスポーツ、スキルの根幹にある大事なものなので、将棋に興味がない人にもハッとさせられる一節が見つかるはず。

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2024年08月31日

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ネタバレ

大量の情報を仕入れる
自分でモチベーションを上げる
常識を疑うところから新しい発見がある
自分の頭で考える
初心者がなにかを学ぶときはどうしてその人がその航路をたどったのかその過程を理解すること。真似から理解へのステップが創造力を培う基礎となる。
生活の中でぼんやりする時間を持つ。

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2024年04月28日

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2005年に出版された羽生善治の本

中原誠や米長邦雄などの逸話
加藤一二三の継続力などの話題もある

他には若い頃の振り返り
今の自分との違い


将棋だけでなく、他の業界の人にとっても有用な考えが沢山

目先の一勝ではなく、将来のために考える

集中するには余白が必要
これは、ジョン・ハンター「小学四年生の世界平和」で語られてたエンプティスペースの考えにも通じる
余白がないと目の前の事に集中するのもなかなか難しいですからね

熱意を持って将棋に向き合い続けられるのがプロ
瞬間的な力ではなく継続力こそが必要


出版された当時は三冠だったか四冠だったか?
今や無冠で九段と呼ばれている現状ですけど
先の藤井六冠とのタイトル戦にしても未だトップレベルであるのを感じたし
以前の棋風とも違う現代の流れを踏襲しつつ、他の人が指すようなコンピュータの評価値にとらわれない戦法を選んでいるあたり、まだまだ熱意は失われていないのだなぁと感じる
そんな羽生さんを跳ね除ける藤井七冠がものすごい別格という事なんだよなぁと改めて思う

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2023年06月25日

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かなり自己啓発本のような内容でした。
「教え→将棋における体験談→他の例え」といった構成が基本ですが、教えに対する体験談が正確で確かにと思いながら読み進めることができます。そして何より他の例えが適切すぎて驚きました。
内容としては一般的なのかもしれませんが、ところどころ2005年に書かれたとは思えないほどの先見性、或いは大切なことは今も昔も変わらないことを感じます。

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2022年08月05日

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決断力の無さ、という課題意識を持ってこの本を手に取った。

羽生さんの考える決断、そしてその付け方について、自信の経験に基づいて書いてあった。

何よりも経験することは本質的であるが、これまで圧倒的な成績を残してきた羽生さんが述べる言葉は重みが違うと感じた。

オーソドックスな学びではあったが、心に深く刻まれた。

とにかくやってみる、失敗を多くする、信じてやってみようと思う

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2022年05月01日

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15年以上前の本だが読んでみた。物事の本質は変わらないなと改めて感じた。日本が誇る最高のプロ棋士でも、難しいことばかり考えるのではなく、物事の本質的な部分を考えている。

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2022年01月31日

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10S-Talk
勝機は誰にでもある。そのHowToは、知識を知恵に替え、直感を信じる裏付け情報を得ておくこと。そして、ポジティブに攻めることだ!
って事が書いてあったような気がする。

メモ
•才能とは継続できる情熱である
•玲瓏-大局観

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2022年02月11日

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全体として羽生さんは情熱を持ち挑戦し続けている人なのだと思う。論理的思考を極められている方なのでシビアな見方をしている面もあるが、楽観的だな〜と思えるところも多々あり、そのギャップが息抜きになっているのかなと。
「少しずつでいいから毎日前進する」ということをこの一冊で教わったような気がします。
私も小さなことでいいから毎日挑戦して少しずつ前進していきたいです。

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2024年10月22日

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再読

将棋棋士 羽生善治 決断力
タイトルだけで非常に説得力がありそうだと思っ
て読んでみた。

将棋において最も大事な要素である決断力。
実際の対局の中では、想像以上に先手を読んでいること、常に完璧な判断を行っているわけではないこと、がよくわかった。
情報・知識→知恵に昇華し、思考を整理しておくことで、適切な決断が素早く出来る。
直感の7割は正しいには共感できるが、そこもまた言語化されている。

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2024年09月21日

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悩むと考えるは別
常に冷静でないとベストな決断はできない
長考してもあまり意味ない
好奇心が人生を豊かにする

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2024年01月18日

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全て感情をコントロールすることの大切さに繋がってるくるような気がした。

常に平常心、逆境をチャンスだと思えるかどうかなど、野球だったり仕事だったり、将棋と繋がる部分があって面白かった。

学び続けることも大切に牛歩の1歩でやっていきたい

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2023年08月14日

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将棋を母体に話が構築されては居るけど、ビジネスや実生活に落とし込んで考察してくれてるのでわかりやすい。

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2023年06月03日

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大量の情報で溢れるこの時代、人から教えられることに甘えるのではなく、自分の力で考え、決める(捨てることも含め)ことが大事。

覚えるだけでなく、実際に試してみて理解し自分のものにする、「知識を知恵にする」その過程が最も大事なこと。

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2023年03月16日

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将棋のプロ、羽生善治さんの考えが記載されている。決断するために、直感を鍛え、よりシンプルに判断し、リスクを負って、突き進むこと。将棋に限らず、人生においての教訓となりえる。才能とは、継続できる情熱を持ち続けることということ言葉には、不変な真実であると感じた。

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2023年02月05日

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昔羽生先生はこういうことを考えてたんだなーという歴史書みたいな感じだった
今はAIの発展や藤井聡太先生の活躍で時代が変わったなぁとつくづく思う

何人か森内先生や大山先生、加藤先生など棋士の話が出てくるが、羽生先生はそんなふうに捉えてるんだなーというのが貴重

特に森内先生と佐藤先生は羽生先生にとってライバルというより仲間というのは、なるほどなと思った

森内先生はYouTubeで羽生先生のことをライバルと言っては畏れ多いと言っていて、
お互いにお互いを高め合う素晴らしい関係性だなと思った

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2022年07月13日

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ものを極めることに関しては、どの分野でも共通する部分が多くあるのでしょう。将棋全然知りませんが刺激頂きました。

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2022年05月14日

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プロの心構え的な内容で、比較的オーソドックスかつ王道なもの
タイトルはそこまで回収されてない気もする
まあまあ時代を感じる内容もありますが、それもまた味だと思う

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2022年04月12日

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将棋をさしたことがない私からすると、棋士という人たちはさぞかし凡人には理解し得ない思考回路の持ち主に違いないと思っていたが、そんなことはなかった。参考にしたい考え方や心構えが多々あった。複雑な問題に難儀したときは単純に考えることは実生活でも役立ちそう。

若い頃と比べて物忘れが増えたなと感じても、脳に空きのスペースができたと考えるなど、基本的に羽生善治さんは前向きな人だなぁと感じた。意識的にしろ前向きな考え方をすることは、長く続けていく上で大切なことだと思う。

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2022年02月02日

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【フレーズメモ帳】
人間には2通りあると思っている。不利な状況を喜べる人間と、喜べない人間だ。将棋界にも、最初からピンチを招こうと思っている人はいないが、ピンチに陥って奮い立ち、知恵を出せる人と怯んでしまう人がいる。不利な局面でも諦めずに、粘り強く淡々と指していくことが、勝負のツボを見出すポイントになり、逆転に必要な直感や閃きを導き出す道筋になると私は信じている。

一般に経験は人を強くするという固定観念があるが、いろいろと考え過ぎてしまい、一番いい方法にたどり着くのに時間がかかってしまったり…ネガティブな選択をしているときもあるのだ。そういうマイナス面に打ち勝てる理性、自分自身をコントロールする力を同時に成長させていかないと、経験を活かし切るのは難しくなってしまう。

「じっと見ていてもすぐには状況は変わりません。しかし、間違いなく腐ります。どうしてか?時の経過が状況を変えてしまうからです。だから今は最善だけど、それは今の時点であって、今はすでに過去なのです」米長先生

趣向には思想がなくてはならない。やたら目新しさで度肝を抜こうとするのではなく、その奇手が新たな地平を開拓する一歩でなければ、ただのこけおどしに過ぎないだろう。

物事を進めようとするときに、「まだその時期じゃない」「環境が整っていない」とリスクばかりを強調する人がいるが、環境が整っていないことは、逆説的に言えば、非常にいい環境だと言える。リスクを強調すると、新しいことに挑戦することに尻込みしてしまう。リスクの大きさはその価値や表しているのだと思えば、それだけやりがいが大きい。リスクを避けていては、その対局に買ったとしてもいい将棋は残すことはできない。次のステップにもならない。それこそ、私にとっては大いなるリスクである。いい結果は生まれない。私は、積極的にリスクを負うことは未来のリスクを最小限にすると、いつも自分に言い聞かせている。

何事においても事前の研究は大切であろう。大局観と事前研究があるからこそ、最善の戦略も生まれるのだ。

つまり、置かれている状況がその人にとって乗り越えられるか、乗り越えられないかの瀬戸際のときに感じるのがプレッシャーなのだ。簡単に、楽々と乗り越えられるハードルであれば、ほとんど感じないはずだ。プレッシャーを感じるのは、自分自身がそのレベルに到達していないからだ。プレッシャーを克服するには、経験が大きく役に立つ。机上の勉強や練習では養えない。実戦の中でいろいろな曲面にぶつかり、乗り越えることでしかみにつかないものなのだ。

将棋は勝つことが目的だが、勝とうとすることはある意味で、欲である。その欲が考えを鈍くしたり、度胸を鈍くするからだ。勝負に一番影響をするのは「怒」の感情だ。私は、プロになる前から、どんなに形勢が不利になっても感情を表情に表さないように訓練してきたつもりだ。

私が、日頃気にかけているのは、勝負の結果を次の日に引きずらないことだ。私は、対局が終わったら、その日のうちに勝因、敗因の結論を出す。そして、翌日には真っ白な状態でいたいと思っている。

集中力の基盤になるのは根気であり、その根気を支えるためには体力が必要。体力がないと苛立ちに負けて、考える力はまだ残っているのに、結論を急ぎたがり、最後まで集中して頑張り切れない。

私は、年齢にかかわらず、常に、その時、その時でベストを尽くせる、そういう環境に身を置いている。それが自分の人生を豊かにする最大のポイントだと思っている。

つまり、情報をいくら分類、整理しても、どこが問題かをしっかりとらえないと正しく分析できない。さらにいうなら、山ほどある情報から自分に必要な情報を得るには、「選ぶ」より「いかに捨てるか」のほうが重要なのである。生きた情報。学ぶのにもっとも有効なのは、進行している将棋をそばで皮膚に感じ、対戦者と同時進行で考えることだ。

新しい技術を開発するのに、ぎの解説書を読むことはプロセスとして大切だ。しかし、文献に書いてあることはすでに常識である。問題はそのあとだ。その先を目指すには、自分で手を動かすことが知識に血肉を通わせることになる。現場で、あちらの方向、こちらの方向と試行錯誤を重ねるうちに、生きた知識が積み重なり、ステップアップする土台ができるのではないだろうか。

どんなに読みの力や経験があっても、立ち合いで負けてしまうと、力を発揮する場面にならないで勝負がついてしまう。あっという間に土俵の外に放り出されてしまうわけである。そのため、大部分の棋士たちは、そういう知識とか情報に重きを置いて研究し、練習しているのが現状だ。その土俵は誰も避けては通れない。最先端で争っていると、そこを避けることは、逃げることでもある。勝負を逃げてしまうと、気持ち的にも逃げることになってしまう。そして、段々と消極的な作戦しか選べなくなってしまうのだ。

オールラウンドプレヤーであるため、「自分の得意な形に逃げない」ということを心がけている。自分の得意な形に持っていくと楽だし、私にも楽をしたいという気持ちはある。しかし、それを続けてばかりいると飽きが来て、世界が狭くなってしまう。息苦しくなって、アイデアも限られてしまうのだ。棋士の中には、「俺はこれしかやらん!」といって、一つの形ばかりやっている人もいる。それはそれで、その人の信念だからいい。

情報の量が増えすぎ、それへの依存度がどうしても高くなってしまう。
そんな中で、自分なりのスタイルや信念を持つことが、非常に大事になってきているのではないだろうか。それがないと根無し草と同じ、流されるだけになる。自分なりの信念やスタイルを持つことは、物事を推し進め、深めていくためのキーなのだ。

私が、将棋を上達するためにしてきた勉強法は、初心者のころも今も変わらない。基本のプロセスは次の4つだ。⑴アイデアを思い浮かべる、⑵それがうまくいくか細かく調べる、⑶実戦で実行する、⑷検証、反省する。

今は近道が他にたくさんできている。わざわざ一番遠い道を選んで行くのは損だという思いにかられる。その横では近道で通り過ぎてゆく人がたくさんいるのだから。自分自身で、「何をやってきるのだ」と思うそともあるだろう。逆に、昔よりも選択が難しいじだいなのかもしれない。しかし、遠回りをすると目標に達するのに時間はかかるだろうが、歩みの過程で思わぬ発見やであいがあったりする。私は、自ら努力せずに効率的にやろうとすると、身につくことが少ない気がしてきる。近道思考で、簡単に手に入れたものは、もしかしたらめっきかもしれない。基本は、自分の力で一から考え、自分で結論を出す。それが必要不可欠であり、前に進む力もそこからしか生まれないと、私は考えている。

私は、ロジカルに考えて判断を積み上げる力も必要であると思うが、見切りをつけ、捨てることを決断する力も大事だと思っている。

以前、私は、才能は一瞬のきらめきだと思っていた。しかし今は、十年とか二十年、三十年を同じ姿勢で、同じ情熱を傾けられることが才能だと思っている。直感でどういう手が浮かぶとか、ある手をぱっと切り捨てることができるとか、確かに個人の能力に差はある。しかし、そういうことより、継続できる情熱を持てる人の方が、長い目で見ると伸びるのだ。

やっても、やっても結果が出ないからと諦めてしまうと、そこからの進歩は絶対ない。周りのトップ棋士たちを見ても、目に見えて進歩はしていないが、少しでも前に進む意欲を持ち続けている人は、たとえ人より時間がかかっても、いい結果を残しているのである。

ペースを落としてでも続けることだ。無理やり詰め込んだり、「絶対ひやらなきゃ」というのではなく、一回、一回の集中力や速度、費やす時間などを、落としても、毎日、少しずつ続けることが大切だ。無理をして途中でやめてしまうくらいなら、「牛歩の歩み」にギアチェンジしたほえがいいと思っている。

「天才とは一パーセントの閃きと99パーセントの努力である」というエジソンの言葉は、どの世界にも共通する真理をついた言葉である。

個人のアイデアは限られている。何かをベースにして、あるいは、何かをきっかけにしてこそ新しい考えがいろいろと浮かぶ。「真似」から「理解」へのステップは、創造力を培う基礎力になるのだ。

取り残されないためには油断は禁物だ。今はこれがいいという勉強法でも、時間とともに通じなくなる。変えていかなければならない。私は、年齢とともに勉強法を変えることは、自分を前に進めるための必須条件だと考えている。

プロらしさとは何か?と問われれば
、私は、明らかにアマチュアとは違う特別なものを持っており、その力を、瞬間的ではなく持続できることだと思っている。私が大事にしているのは、年間を通しての成績である。どの世界においても、大切なのは実力を持続することである。そよためにモチベーションを持ち続けられる。地位や肩書は、その結果としてあとについてくるものだ。逆に考えてしまうと、どこかで行き詰まったり、いつか迷路にはまり込んでしまうのではないだろうか。

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2025年01月24日

Posted by ブクログ

将棋の有名な棋士の羽生さんが書かれた本です。
前人未到の7冠独占をやった人ですね。
若い頃からずば抜けて強かったらしく、
長いこと話題にもなって、もっともよく知られる棋士の方ですよね。

そんな羽生さんはどのような考え方、価値観を持った人なのか。
やはり天才なのか。天才の思考とはどういうものなのか。
そういった興味を持って読んでみましたが、
まったくもって突飛な考えを持った人ではなかったです。
論理的思考と勘というもののどちらも大事にしているようです。
僕が見た感じだと、その彼の「勘」という部分がブラックボックスといいますか、
そこが一般人との差を生んでいる部分だと思いました。
勘がはじきだす選択は非凡であっても、そのほかの部分については、
一般人と変わらない。変わらないながらも精度と追及の度合いが高く、
いろいろな経験から得たものというのもあって、
それらで構築されているやっぱりオリジナルな「羽生さん」という一人の人が
見えてくる次第でした。
変な事は言ってません。
どの考え方も、読者それぞれの生活に結びつけて考えてみても
役に立つものになるでしょう。

一番印象に残ったのは、「直感の7割は正しい」というところでした。
7割っていえば、イチロー選手の打率をはるかにしのぐ割合です。
ともすれば社会において、論理ばかりがもてはやされる中で、
直感の大事さを説いてくれたのは嬉しいです。
だけど、「その直感で出た答えを論理的に説明せい」とかって言われたりもするのよね、社会では。
とはいえ、40万部突破で、経営者の人も読んでいる本だと帯に書かれていました。
起業するような人は頭の柔らかい人が多いのだと思いますけれど、
そうやって経営者になる人みんなが、羽生さんに代表される考え方を持っているわけではないです。
それはそれで残念なことなんですが、そこから学んで変わっていこうとしてくれると面白くなります。
何が理想かって、こういう羽生さんの考え方に触れて、「そんなこと考えてもみなかった!」と
驚くよりも、「そうそう、その通りです!」と共感を持って受け入れる人が多くなることですねー。
まぁ、でも、既存の考え方にはそれなりの理論というか、安全性みたいなのが
あるでしょうから、丸ごと批判するわけにもいかないでしょうが…。

そして、直感というものを鋭くして精度を高めバリエーションを増やすには、
感性を鍛えることだとおっしゃっています。
そこはね、僕もそうだと昔から考えてきたことなので(よく忘れるけれど)、
大きくうなずいた次第です。

人間、感性とか人間性とかがすごく大事ですよねぇ。
人間性が好いということで、ちゃんと仕事になるっていうのがあったらいいですねぇ。
芸能人の人にはそういう人がいるのかな?
…戦場カメラマン???

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2025年06月17日

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