あらすじ
吹かれたいときに吹いてくれる風のないことには心おぼえがある。百子は黙って、窓を閉める。全4篇が描き出す、人生の物憂さと微光。『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』著者の初小説集。
『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』で話題の著者、初の小説集!
ゆきはひとりになって働きはじめ、私は水浴びする男を見つめ、雨の夜に三人は出会い、百子は絶望を抱えたまま暮らしている。
全四編が映し出す、人生のもの憂さと微光。
装幀=岡本太玖斗
【収録作品】
●「けだるいわあ」
唐揚げ弁当ひとつくださいと口に出す。真っ赤なエプロンの女のひとは「はあい」と愛想なく、しかし不機嫌そうでもなく、どちらかというとぽかんとした感じで返事をした。
●「水浴び」
ルーフバルコニーではおじさんが水浴びをしていた。パンツ一丁の姿で、青いホースから水をどんどんあふれさせ、頭の上からきもちよさそうに水を浴びている。
●「カリフラワー」
あの夜は小雨で、傘をささなくてもよいほどの小雨で、というより雨は、わたしが家を出たときにはまだ雨は降っていなかった。気配はあったが、気にしなかった。
●「風を飼う方法」
吹かれたいときに吹いてくれる風のないことには心おぼえがある。百子は黙って、窓を閉める。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
文体がユニークな気がして好き。登場人物もどこか浮世離れしていて不思議。あけぼのアイディンティティ、とかどこか少し引っかかる言葉を使う。水浴びをするおじさんの背中を眺めたり、雨宿りをしていたらみんなでお酒を飲むことになったり。緩やかと流れる時間。喪服が似合いますね、と褒められると言うのはいかがなものか、と思ったがそのような女性がいたら素敵だろう。
表題作、風を飼う方法は序盤からどこか不穏。ゆるく自分自身の時間を楽しんでいるようだけれど、彼女はやはりトラウマを軸として生きてしまっている気がしてかなしい。1人でコアラを見たい気分、と言って恋人の元から去るし山彦さんにも会わないことにする。彼女は自分を取り戻せるのかな、取り戻してほしい
Posted by ブクログ
けだるいわあ が好きだった。交わらない2人が交わるときに過去は過去になって、傷も癒えるのかなって。すべての商店街にあるちいさなお弁当屋さんにどんな生活があるんだろう…とつい歩きながら、凝視してしまったり。(田舎だからまだ個人のお弁当屋さん結構ある)
風を飼う方法 があんまりだったかな…。恋愛でどうしようもなくなったことがないからなのかな?自分が。たぶんこの主人公に必要な時間は、何人もの人間の男じゃなくて、もっと1人でコアラを見る時間だと思う。途中にあった、母親に長生きしてほしいな、と思う瞬間と、だからこそ憎くなる瞬間がある描写がどきっとした。感情のバランスの均等をとるのは難しい。
Posted by ブクログ
文章自体は好みだった。
内容は、3人の女性の日常についてなのかな。
全4節中3節目までは、離婚とかがあった彼女たちの鬱屈とした、しかしどこかに灯りを感じる描写を楽しむことができた。
問題は4節目、妙に倫理観に欠けたことをしているなぁと思っていたら過去に彼女が受けたであろう仕打ちが仄めかされた。内容は気持ちの良いものでは全くない。この節でも確かにほんのり光を感じないでもない。でも生憎と私にはそんな内容に対する耐性なんてない。そんな描写が背景にあるとわかっただけで不快感が顔を出してしまう。相性が悪かった。
とはいえやはり文章や表現は好きだった。『風を飼う方法』が自由を手に入れるための方法を暗喩しているのかなと4節目で思った。吹いて欲しいときには吹かない風。思い通りにならないものを象徴していたのかな。好い言葉だ。