【感想・ネタバレ】それでも日本に原発は必要なのか? 潰される再生可能エネルギーのレビュー

あらすじ

記者職を外されても、私は書き続ける!

なぜ高市早苗政権は再エネを捨て、原発に回帰するのか?
被災者たちの物語と原発利権の闇を描くノンフィクション!

2011年の福島原発事故以降、急ピッチで再生可能エネルギーの導入が進められた。太陽光パネルや風力発電所の設置が進み、いまや再エネの発電力は日本の電力の23%を担っている(原発は約9%に過ぎない)。
しかし今、再エネに逆風が吹いている。固定価格買取制度が引き下げられたためだ。2024年、再エネ関連の倒産は過去最多の52件となった。新電力会社の約17%が事業から撤退している。無策のために各地で自然破壊が問題化し、逆風に拍車をかける。
そして、じわじわと原発回帰の動きが始まっている。
「原発優先ルール」があり、電気が余りそうな日は再エネの発電が先に止められる。
再エネの予算は減る一方だが、原子力関連予算は増え続けている。原発事故のあった2011年でさえ、原子力の研究予算は再エネの倍だった。
日本政府はかつて「ニューサンシャイン計画」という新エネルギー開発計画を進め、太陽光発電システムの開発で日本は世界をリードしてきた。日本の太陽光パネルは、つい20年ほど前までは世界シェアの5割以上を占めていたほどだ。
ところが、長期的な戦略がなかった日本は、中国にシェアを奪われてしまう。
世界最大の電力源が再エネとなり、世界各国が再エネを拡大しているのに、日本だけが再エネを妨げられ、原発回帰しているのだ。

安全保障の上からも原発回帰には懸念がある。世界各地で戦争が起きる中、原発や核施設は攻撃のターゲットになる。エネルギー自給率を高めるには再エネに注力する必要があるが、原発の燃料となるウランは100%輸入に頼っている。
安全保障を重視するはずの高市政権は、真逆のことをしているのである。
なぜ、日本は原発に回帰するのか?――この謎を突き詰めていくと、巨大な利権、場当たり的な日本政府の無策が浮かび上がってくる。

本書では、原発事故に遭って故郷を追われながらも再エネ事業で第二の人生を歩み始めた被災者の感動的な人生ストーリー、農家と共同で再エネ事業に乗り出した女性の成功と挫折など、さまざまな人間ドラマも紹介される。
そうしたドラマと並行して、原発利権の闇にも迫る。
理不尽な圧力を受けて記者職を外されながらも、必死で現場を取材し続けた著者の執念が光る作品だ。

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Posted by ブクログ

原発については様々な書籍が出ているが、本書は最近の状況を踏まえてコンパクトにまとめられた良書。
・近年の国際情勢を鑑みると原発は安全保障上の大きなリスクであること
・原発被災者を追ったルポ
・予算や制度から再エネより原発を優先する現状
・再エネ推進のドイツと原発重視の韓国の取材
・政治献金と票による原発利権の構造
・「おわりに」では、筆者に対する朝日新聞社内での圧力が述べられている
【目次】
はじめに 「原発優先ルール」こそ日本の安全保障リスク
第一章 原発から再エネに転じた男性の死
第二章 抑圧される日本の再生可能エネルギー
第三章 なぜ日本の再エネは中国に負けたのか?
第四章 再エネ6割のドイツ、1割の勧告をゆく
第五章 日本型の再エネを探る
第六章 原発回帰 権力の舞台裏
第七章 絶望を超えて歩みはじめた被災者たち
おわりに それでも私は書き続ける

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2026年04月13日

Posted by ブクログ

電力会社から政治家への献金を違法としない限り、原発優先の構造は変わらないということがよくわかった。それは自民党が政権をとり続ける限り不可能だろう。原子力規制委員会も電力会社からの出向社員が大勢入っていて、政府の答弁書もここが書いているとは驚きだ。この国はまた大きな被害が出ないと変われないのか。
勤務先の朝日新聞社から圧力を受けながら取材を続け、出版までこぎつけた著者に感謝。最近の朝日の政権への迎合ぶりは情けない限りだが、社内で心ある人たちが煮湯を飲まされていることがよくわかった。権力に抗わずにメディアをなのるなと思う。

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2026年04月04日

Posted by ブクログ

15年前の東日本大震災で、あれほど酷い目にあったのに、どうして今原発回帰の流れなのか。日本のエネルギー政策がいかにゆがめられてきたか。再生可能エネルギーにはまだまだ可能性があるのに、どうして政府は原発ばかりを推すのか。
悲しいくらいによくわかりました。

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2026年03月17日

Posted by ブクログ

日本で再生可能エネルギーがなかなか伸びず、2011年の東日本大震災から15年経過して、今では原発回帰へと進もうとしています。なぜ外国と比べて再生可能エネルギーが伸びないのか、気になって本書を手に取りました。
本書で紹介されている興味深い内容をいくつか箇条書きで書き出します。

1)世界的には2025年上半期の世界の発電量の34.3%が再エネで発電され、割合として他の発電を抑えて最大になった。日本は2023年度で22.9%(意外と多い印象でした)。
2)太陽光パネルの生産では1999年から9年間日本は世界1位で、2004年、2005年では世界シェアの約50%を占めていたが、2020年代にはシェア1%に落ち込み、2022年は0.2%にまで下落。世界首位の座を中国に譲った
3)2010年代には浮体式風力発電の技術は世界一のレベルにあったが、2020年代では大部分のメーカーが撤退した。
4)石油代替エネルギーの位置づけとして日本は核分裂の原発をメインに据えたため、開発予算の振分けが圧倒的に原子力関連に大きくなった。政府が上記の太陽光、風力等を産業として支援する姿勢に欠けたため、民間の投資が継続せず、折角の優れた技術が再エネ産業として根付かなかった
5)日本では”原発優先”の施策のため、再エネは折角発電しても発電抑制等で電力供給に寄与できないしくみになっている。
6)日本の”原発優先”施策の原動力は大手電力会社と自民党との強力な結びつきで、企業献金等の協力とそれに対する見返りとして機能している。

東日本大震災直後、日本中の原発が止まりました。普通ならそんな事は不可能だったはずなのですが、その機会こそ再エネに一気に軸足を振り切るチャンスだったともいえたはず。それを実現するに足る十分な技術も持っていたのに。その後の15年の迷走が、今またホルムズ海峡の問題であたふたするという事態を招いている今、”やっぱり原発が必要なのかなぁ”と短絡的に考える前に立ち止まる勇気が必要なのでは、と思わされました。

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2026年04月05日

Posted by ブクログ

著者の青木さんは,とある全国紙(具体名は伏せられていますが,調べればすぐにわかります)に勤務しながら,勤務社からの妨害を受け,休みの日などを使って取材し,本書を執筆した.
要するに,大手マスコミも「原子力ムラ」の構成員なのである.
おそらく,一般家庭用の電力は,著者の言う通り,再生可能エネルギーで賄えるのであろう.工業用にどうしても安定して供給する必要な分だけを,従来型の大型発電所での発電分を当てらば良いのではないか,そんなことを思いながら本書を読んだ.

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2026年03月22日

Posted by ブクログ

 「原発優先ルール」という、「(前略)電気が余りそうな日には、原発は止めずに再エネのほうの発電を止めるように各大手電力が再エネ事業者に指示する、日本独特のルール(後略)」(p7)があることを初めて知った。希望を失わず再生可能エネルギーに取り組む人々と、それを打ち砕く人々との国内国外のせめぎ合いが紹介される。「第七章 絶望を超えて歩みはじめた被災者たち」(pp217-243)は確かにそういう内容が書かれているのだが、自死していった人々の遺した言葉の数々を読むにつれ、絶望的な気持ちにもなってしまう。「おわりに それでも私は書き続ける」(pp244-254)では、著者が所属する新聞社から処分を繰り返し受けてきたことと、でもそれに屈するつもりはないという気持ちが吐露される。

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2026年03月21日

Posted by ブクログ

検出されたセシウム。余儀なくされる廃業。全てを失し、死を選ぶ農家もいた中、営農型ソーラーで再起を目指す。自然破壊との批判もある太陽光パネル。農作物にもよい影響をもたらす工夫。農業に加え、発電でも収入。再び燈り始めた希望の光だったが…事故から15年。世界の潮流が再エネにシフトする中、日本はまた原発推進の道を歩み始めた。電力という集金システム。巨額なお金が政策を左右する。予算は原子力優先。この強固な仕組みは、あの未曾有の事故でも崩れることはなかった。存続が危ういのはこの国そのもの。今この瞬間にも再びあの悪夢が…

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2026年03月08日

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