【感想・ネタバレ】クラシック名盤100のレビュー

あらすじ

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迷うあなたに、この100枚。

サブスクで世界中の名曲・名演に触れられる。だからこそ、何から聴けばいいか分からない。
クラシックの入門書の名手が、名盤100を選定。
作品の聴きどころ、作曲家や指揮者のエピソードを手がかりに、“分かる→好きになる”へ導きます。

【目次】
第1章 ハゲてなくてもかつらの時代 音楽家がサービス業だったころ 中世~18世紀末
バッハ|ヴィヴァルディ|ヘンデル|ハイドン|モーツァルトなど
第2章 髪を振り乱せ、自分流儀を貫徹しろ 19世紀全般
ベートーヴェン|シューベルト|ショパン|リスト|ワーグナー|マーラー|ブラームスなど
第3章 洗練の味 19世紀後半~20世紀初頭
ビゼー|サン=サーンス|ショーソン|ドビュッシー|ラヴェル|サティなど
第4章 田舎者だと馬鹿にされてたまるか 19世紀末~20世紀
スメタナ|ドヴォルザーク|チャイコフスキー|ムソルグスキー|ラフマニノフ|ガーシュウィンなど
第5章 20世紀はテクノロジーの時代 20世紀~現代
R.シュトラウス|シェーンベルク|ストラヴィンスキー|ショスタコーヴィチ|プロコフィエフ|オルフなど
第6章 演奏家から聴く 20世紀~現代の演奏家から
ケーゲル|グルダ|シャフランなど

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Posted by ブクログ

本書の対象読者層は、クラシック音楽の門外漢向けだと書いてある。その部分を引用しよう。

なので、本書は手っ取り早く、いい曲のいい演奏を紹介する本です。クラシックに興味があって、とりあえず何か聴いてみたいという人を読者として想定しています。とはいえ、ある程度のマニア君、マニア嬢が参考にしてくれても、もちろんいい。また、それに応える内容になっています。(p2、はじめに)

この文章から推測すると、入門者向けの名曲名盤を中心に選んであり、所々に著者好みのマニアック盤を入れているのであろうと思った。しかし、実際には逆だった。大多数は著者好みの盤が選ばれており、所々に入門者向けの名曲名盤を入れてあった。

クラシック音楽の名盤を紹介する本では、一般的に、まず曲を選んで、それからその曲の推薦盤を選ぶという工程を取る。名盤から選ぶとあまりに偏ってしまい、本として収拾がつかなくなるからだ。

本書は曲のセレクトが、どう見ても入門者向けではない。100曲しかないのに、なぜこの曲を選ぶのだと思われるのが半分くらいある。たとえば、声楽曲・オペラは本書の対象ではないとしながらも、ワーグナーは序曲を中心に6曲も選んでいる。序曲や前奏曲、ジークフリート牧歌は、ディスクでいえば、「ワーグナー:管弦楽曲集」1枚で事足りる。一方で、バッハはたったの1曲。「ゴルトベルク変奏曲」のみである。モーツァルトも3曲だけ。これでは明らかに入門者向けとは言えない。

演奏家は、この著者らしく、毎度おなじみのチェリビダッケやケーゲルの盤が多く選ばれている。一方で、カラヤンも多く選ばれている。カラヤンを多く選んだあたりが、入門者向けということなのだろう。

ビギナー向けの本であれば、名曲中の名曲、つまり世間で人気の高い曲(同曲異演の枚数が多い曲)には、定評のある名盤を選ぶのが定石ではないだろうか。チャイコフスキーの「悲愴」交響曲は、人気曲の上位に入る曲だ。この曲には、バーンスタイン&ニューヨーク・フィルの1986年盤が選ばれている。はじめてこの曲を聴くのが、この盤というのは妥当ではない。全体的に個性的に過ぎ、終楽章は超スローテンポで特殊な演奏だからだ。すでに何種類かの盤を聴いている人にお勧めするのならいい。だが、入門者であれば、定評のあるカラヤン盤(BPO、VPOどちらでも)、あるいは昔から名盤の誉れ高い、ムラヴィンスキー盤あたりが妥当であろう。1986年録音のバーンスタイン&NYP盤から入ったら、この曲の評価を誤る可能性が高い。

文体は軽薄である。ネットに書かれた文章の様だ。語尾が、「なので。みたいな。ですが。」を多用している。ひとつ具体例を挙げよう。

で、次はモーツァルトのピアノ曲を聴きますか。ピアノ・ソナタ第11番。<トルコ行進曲つき>というサブタイトルがついている。変じゃない、「つき」って。オマケみたい。でもそうではないので。(P38)

書き出だしが、「で、」というのは、かなり変である。そして、「でもそうではないので。」という終わり方も相当に違和感がある。著者としては、くだけた感じを出したかったのだろう。だが、親しい友人に話しているのではないのだ。さらに口語体と文語体は違うということを忘れてはいけない。このような文章を読んでいると、すぐに飽きてくる。特に前半はその傾向が強く、後半は少しマシになる。過去の著者に見られるように、1冊の中で文体が統一されていない。

書かれている内容は、先ほど挙げたモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番を見てもわかるように、入門者向けになっている部分が多い。曲の解説とは全く関係のない無駄な記述もある。クラシック音楽の中級者以上であれば、読んでもほとんど役に立つことはないだろう。

文章の内容を見ると初心者向けといえるが、これまで述べてきたとおり、セレクトされた盤は門外漢向けではない。初級者から中級者、つまり、クラシック音楽にすでに入門していて、ある程度、名曲名盤は知っているという人にちょうどいいのではないだろうか。

レイアウトは、開き2ページに1枚という構成になっている。名盤として選んでいる100枚のほかに、「関連盤」として末尾に100枚選ばれている。つまり、掲載されている盤の枚数は合計200枚である。
文字のサイズは小さい。文庫本より小さいくらいだが、横書きで、ゴシック体、行間は広く取られているので、思ったよりは読みにくくはなかった。関連盤のコメントは、さらに小さい文字サイズだが数行なので、許容範囲か。老眼の人にはつらそうだ。

本としての出来は、許氏の近著である『決定版 交響曲の名曲・名演奏』 (講談社、2025年)、『はじめてのクラシック音楽』 (講談社、2023年)よりは評価できる。巻末には索引(主要人名索引)があり、演奏者のフルネーム、録音年、CDジャケット写真が載っており、クラシック音楽のディスクガイドとしての最低限のマナーは守られているからだ。全体の出来は、決して良いわけではないので、誰かにお勧めしたい本ではない。

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2026年04月25日

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