あらすじ
|普通の夫・一児の父が尊厳をかけて闘った実話|
罵詈雑言を浴びせられる57時間の取調べ、 家族や友人に会えない250日間の勾留に、
あなたは耐えられますか?
弁護士だった江口大和さんは、2018年10月、交通事故を起こした男にうその供述をさせたとして、犯人隠避教唆の疑いで横浜地検に逮捕された。任意の取調べでは一貫して事実無根を主張し、逮捕後の取調べでは黙秘に徹した。黙秘する江口さんに、検事は驚くべきふるまいに出た!!
検事は「ガキ」「お子ちゃま」と子ども扱いをし、江口さんの中学生時代の成績表を取り寄せて数学と理科の成績を揶揄。その他にも罵詈雑言のオンパレード。勾留は250日に及び、家族や友人との面会はおろか、手紙のやりとりも禁止されていた。幾度となく接見禁止の解除や保釈を求めても、裁判所の壁が立ちはだかる……。
本書は江口さんの獄中メモを下敷きに、逮捕から今なお続く国家賠償訴訟の行方まで、約7年にわたる闘いをつぶさに記録したノンフィクション。黙秘権のあり方や人質司法の問題点を世に問う1冊です。
※横浜拘置支所での出来事は、二〇一八年一〇月から二〇一九年六月当時のものです。
※本書の印税は、違法な取調べや人質司法をなくすための活動または団体に寄付します。
[本書目次]
プロローグ それはある日、突然に
任意同行は妻との別れ
なぜかメディアが知っている
「中の人」になる瞬間
弁護人・宮村啓太の視点① 逮捕の前日
妻の視点① 捜索はある日突然に
第1章 しゃべらなければ、終わらない
私が黙秘をした理由
想像以上の大変さ
川村検事の崩しのテクニック
準備 人となりの把握
手法① 人格否定法
手法② 能力否定
手法③ 証拠をちらつかせる
手法④ 責任をあおる
手法⑤ 別の生き方を勧める
第2章 時間と名前が消える部屋
独房に閉じこめられて知ったこと
独房の中には音が響かない
検事ひとりがしゃべる部屋
普通の暮らしが奪われる
スマホなし、パソコンもなし、テレビなし
マイナス思考が止まらない
そこでは名前が奪われる
アイデンティティが消えてゆく
弁護人と妻の言葉で生きかえる
差入品の雄弁さ
COLUMN1 独房のアメニティ
第3章 再スタートの甘い誘惑
罪悪感をあおられる
娘の写真に涙する
「初心に戻れ」の危険性
堂々めぐりが止まらない
妻の視点②相いれない人たち
第4章 見えない敵に悩む日々
言葉にならない緊張感
見えない敵の気味悪さ
他人の逮捕が胸を打つ
ラジオニュースに勇気をもらう
自己暗示の重要性に気づく
自己との対話をくり返す
プリズンでひとりぼっちの大みそか
弁護人・宮村啓太の視点② 取調べが行われた当時の接見
第5章 思い出ぶかい隣人たち
ベテランぞろい
誰もいなくならない
印象ぶかい隣人① 夜中に徘徊し、壁に糞尿を塗りつけた人
印象ぶかい隣人② 幻覚が見える人
印象ぶかい隣人③ 重い吃音を抱えた人
COLUMN2 拘置所あるある
第6章 再会までの長い道
戦友を見送る
すっぱいブドウ
カリオストロの城
ふたたび、プリズンひとり
戦友、帰る
恩師と妻の言葉
季節はめぐる
てんとう虫と蜘蛛の糸
楽観
現実
保釈のとき
ほろ苦い再会
妻の視点③ 勾留中の差入れ
第7章 負けてもふたたび立ちあがる
自由の象徴を楽しむ
芝浜におびえる
罪滅ぼしと恩返し
少しずつ、父になる
刑事裁判が始まる
まさかの一審判決
恩師と食べるやけラーメン
不安と安堵
コロナ禍の副産物
遺族にふり回された控訴審
徒労感から立ちなおる
最高裁に訴えたこと
八か月後の三行半
妻の視点④保釈された日
終章 やられっぱなしじゃいられない
娘にいつ・どう伝えるか
反撃開始――国家賠償訴訟
取調べを公開する
公開前の不安
公開と反響
踏みこみきらない一審判決
何も応えない控訴審判決
弁護人・宮村啓太の視点③ 想像をはるかに超えていた精神的拷問
補論 人質司法とは何か
1 容疑を争うほど身体拘束が長びく勾留実務
2 不安をあおり、尊厳を損なう取調べと処遇
3 気分転換のできない閉鎖的な環境
4 システム化の完成――相互補強と相互無責任
Ⅰ 相互補強
Ⅱ 相互無責任
5 人質司法をなくすには
おわりに
筆者年表
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
予期せぬ罪名で被告となり250日間勾留された弁護士、塀の中のリアルな体験と検事による過酷な取り調べの記録。
取り調べ、自白のために必要な過程なのだろうが、冤罪が発生するメカニズムが良く分かる。誰もが意図しては入らない塀の中の世界。弁護士ならではの視点と家族の視点から再現。
誰もが冤罪で勾留される可能性は常にある。黙秘権の行使がこんなにも精神的に追い詰められると考えると恐ろしい。
Posted by ブクログ
取調べを受けるひとが、黙秘をしようとしているひとが、どんな取調べ時間を過ごしているか、プリズンに戻ってからどんな状況下に置かれているか、どんな気持ちか、非常に克明に記されている。
弁護人や、家族の視点を織り交ぜながら。
日々丹念に記録を残し、制度を駆使して客観的記録を入手して、洞察を重ねたからこその類い稀なる書だと思いました。
Posted by ブクログ
読みやすい文体で、最初から「この本で訴えたいこと」が分かった。それにしても、「日本では、捕まったら終わり」なんだな、と感じた。弁護士として知識もあり、30代の男性という強さもある作者ですら、心が折れそうになる取り調べに、いったいどれだけの人間が耐えられるだろうか。大川原化工機の事件や、官僚の村木厚子さんの事などを考えながら読んだ。
そして、この本では元の事件については、そこまで深く掘り下げていなかったけれど、「社長が社員に無免許運転をさせていた。もし捕まっても、社長の命令ではないと、口裏を合わせるよう言った。それは、弁護士からのアドバイスだった。だから、作者は有罪」という判決に、ずっと違和感しかなかった。あとで、他のサイトを読んだら、「社長や社員の言った事を成立させるために、作者を有罪にしなければならなかったのではないか」と書かれていて、腹落ちした。検察とか裁判官とかの「わかりやすいストーリー」に乗せるためには、人権とか個人の有罪など、どうでも良いのかと暗澹たる気持ちになった。
裁判官も検察も、多くの事件を取り扱い、起訴された人全員が素直に白状するわけはないだろう。だから、そっち側の気持ちも分からなくはないけれど、無罪と有罪は比喩なく天国と地獄だ。そんな軽い気持ちで人の人生を左右させないでほしい。
これを読んだ日に、16歳女性が違法な取り調べのせいで心を病み、餓死で亡くなったというニュースが流れた。作者は、人質司法について国家賠償請求を起こしている。作者のおかげで、人質司法に光が差したとも思える。どうか、冤罪の人が苦しまない社会になるよう願うばかり。
最後に、作者は「塞翁が馬」の故事を引いていた。勾留される前は、彼は仕事に明け暮れて、お子さんの顔を見るのは寝顔だけだったけれど、保釈されてから、保育園のお迎えにも行って、お嬢さんとの時間を過ごしていた。その優しい時間を描いたシーンに、ほっとした。
作者は、自身の体験を何か意味のあるものにしようとしている、と感じた。
Posted by ブクログ
【目次】
プロローグ それはある日、突然に
第1章 しゃべらなければ、終わらない
第2章 時間と名前が消える部屋
COLUMN1 独房のアメニティ
第3章 再スタートの甘い誘惑
第4章 見えない敵に悩む日々
第5章 思い出ぶかい隣人たち
COLUMN2 拘置所あるある
第6章 再会までの長い道
第7章 負けてもふたたび立ちあがる
終章 やられっぱなしじゃいられない
補論 人質司法とは何か
Posted by ブクログ
冤罪事件で耳にするのは、厳しい取り調べで、やってもいない罪を認めてしまったというコメントです。その厳しい取り調べがどんなものだかを本書で知ることができます。刑事事件で検察が起訴した裁判での有罪となる確率は99%を超えています。そのカラクリの一つが密室での長時間に及ぶ取り調べなのでしょう。認めるまで閉じ込めて、精神的に追い詰め、この場所から逃れるために嘘もつくという環境を作り上げること。
一方、本当に罪を犯しているにもかかわらず黙秘をする人もいるので、任意にしろ逮捕して取り調べるわけで、警察機関は慎重であるべきです。
警察機関は、多くの凶悪犯を検挙している素晴らしい組織でもあります。
やってもいない罪に問われる人をなくすためには、どうあれば良いのかを思いながら本書を読み進めました。著者である弁護士のおかげで、取り調べの様子を知ることができたわけです。一読にあたいする記録だと思いました。
Posted by ブクログ
いたたまれなかった。無罪を主張して闘うと、人間じゃない扱いが延々と続く。よく精神を病まずに耐え抜いて闘ったなと思う。
逮捕、起訴されたら、無罪を勝ち取るのはほぼ不可能というのがよくわかった。有罪が前提で、誰も主張を聞いてくれない世界。江口さんを貶めるために仕組まれたのではとすら思ってしまう。
Posted by ブクログ
弁護士の立場から、拘置所に拘留された250日!の心理状態と、人権を踏みにじられる取り調べを詳らかにしたノンフィクション。
読みやすいので、サクッと読める。ちょっと軽すぎ?とも思えるが、そうでなくては多くの人に知ってもらえないという著者の考えがあってのことでしょう。
実名がたくさん出てくるのも、作者の妻が評するところの「好戦的な」性格がでてるのかも。なので、書かれた人たちはヒヤヒヤするだろうし、さぞかしはらわたが煮えくりかえることだろう。それも著者の意図するところだろう。
取り調べの動画がみられるのもお得。
検事ってホント、品がないのが許されちゃうヒエラルキーのトップなのですね。なんか、圧の強いやな検事でした。誰も注意する人がいないのですね。
Posted by ブクログ
おもしろかった。本当に大変で辛くて、思い出すのも嫌な体験と思うのに、ここまで詳しく振り返ってもらえて、笑わしてくれるところもあって、本当に尊敬する。
動画もすごい。録画されてるの分かってるのにあんな風になっちゃうのが本当にすごい。万能感なのかなー。何としても変わってほしいけれども。
Posted by ブクログ
取り調べの様子を心情織り交ぜながら、かつ淡々と記されており貴重な本で読みごたえがあった。
確かに悪事を働いたものは取り調べ罪を償う必要がある。しかし、本書に記載されているような取り調べ方法では事実を明らかにするどころか国家権力でもって犯人を作り上げるようなものではないか。検察は猛省すべきだ。
大川原化工機事件で保釈を却下した検察、そして裁判官に対しても国家賠償の裁判が起こされた。検察の言いなりになる裁判官も力に巻かれるのではなく、事実を冷静に見極め判断するきっかけになればと願っている。
Posted by ブクログ
頼まれて調書を無報酬で作成しただけで犯人隠避の罪を着せられた弁護士が日本の人質司法の取調べを受け、最終的には有罪になってしまった裁判の記録。本件や大川原化工機事件、村木さんの事件など、検察は人の人生を軽視していて感覚がずれている(・・人がいる)。それを承認する裁判官もその立場の意味を理解できていないんじゃないかなと思う。このように書籍でもなんでも声を上げて高い壁を壊し国民の目がちゃんと届くことを示して、互いに良い方向にいくことが健全な社会になるんだろうと思った。
Posted by ブクログ
拘置所での検察官の取り調べの実態は思った以上に過酷だったか、よく分かりました。
残念ながら、半分ほどは読めましたが、後はパラパラ読み(^_^;)
ごめんなさい。
事件自体もハッキリとは分かりませんでした。
戦友としてゴーン氏のことを結構話題にされていたり、反社の人たちを差別しているような物言いだったり。。拘置所を親愛を込めてだそうですが「プリズン」「横プリ」と言われているのもちょっと・・・
弁護士さんだったんですよね。
6歳の娘さんに自分のことを話してどれだけ理解出来るか、それでイジメに合わずにすめばいいけれど。
★2.5かな。
Posted by ブクログ
「人質司法」がいかに逮捕された人の尊厳を奪い、「自白」するまで精神を追い詰めるシステムなのかがよく分かる。
著者が受けたひどい扱い(取調べの時に受ける罵詈雑言、まだ罪が確定していないのに罪人のように扱われること)は目を覆いたくなるけれど、著者は感情的になりすぎず、あくまで淡々と事実とその効果を分析する。
その筆致のおかげで、私も冷静に事実を見つめることができた。
令和の現代でもこのような、人を人と扱わない行為が合法的に行われているということが信じられない。
著者の戦いは2025年12月時点で、まだ続いている。その事実がさらに、いま現実に起きていることだと思い知らされる。