あらすじ
日本人の著者が綴った、広義のキリスト教入門は数多く、ベストセラーやロングセラーも散見される。
他方、日本人のクリスチャンの数は一向に増えない……。
本書は、これまで多く出されてきた書籍をたどることで、この国の文化的背景、読者が何を求めてきたのかといった受容の変化などを掘り下げて論じる。
賀川豊彦、片山哲、矢内原忠雄、南原繁、山本七平、小室直樹、曽野綾子、三浦綾子、『ふしぎなキリスト教』、人気のYouTubeチャンネルなどは、何を語ろうとしてきたのか――。
目 次
はじめに
序 章 内村鑑三の戦いと予言――読むキリスト教の始まり
1 十字架の戦士――内村鑑三の無教会主義
2 ファン以上信者未満の読者たち
3 キリスト教を阻む不思議な力
第1章 この宗教文学がすごい!――煩悶青年たちの爆発的ベストセラー
1 反逆のベストセラー作家ができるまで――江原小弥太の彷徨
2 キリスト教を突き抜けた男
3 幽霊屋敷の聖者――賀川豊彦『死線を越えて』
4 メディアスターの悲劇
第2章 生まれ変わる聖書と日本人――占領期のキリスト教ブーム
1 推しの神の子――黒崎幸吉『聖書の読み方』
2 クリスチャン総理の挫折――片山哲の青い鳥
3 言論ギャングの逆襲と困惑――野依秀市vs.亀谷凌雲
4 皇室御用達のキリスト教――ヴァイニング夫人と光の子
第3章 聖書はファンタジーなのか――学知と信仰のシーソーゲーム
1 東大総長たちの戦中戦後――南原繁と矢内原忠雄
2 赤い牧師の逆回心――赤岩栄『キリスト教脱出記』
3 信と不信の共存――椎名麟三『私の聖書物語』
4 売れっ子作家たちの契約論――山本七平と小室直樹
第4章 暁の星の司祭二人――カトリック知識人の登場
1 正邪の番人――聖人への道
2 真なる教会の守護者――岩下壮一
3 聖女を見た外科医――戸塚文卿
第5章 日本人は神を愛せるか――裁きの神と赦しの神の相剋
1 あの方に捧げた日本国――志村辰弥と秋田の貴婦人
2 語られなかった弱虫たちへ――遠藤周作と母なる神
3 メイド・イン・ジャパンの救世主――井上洋治の南無アッバ
第6章 善き神はなぜ残酷な世界を創ったのか――苦難への彼女たちの応答
1 女と男と男の聖愛――三浦綾子の絶望と再生
2 奇跡は本当に起きたのか――曽野綾子の諦めと回生
3 受け入れるしかないこの世界――渡辺和子の孤独と覚醒
終 章 キリスト教入門のゆくえ
1 入門書の四類型
2 ハイブリッド化の進展
3 紙上の教会は永遠に
おわりに
主要参考文献
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Posted by ブクログ
日本の近現代のキリスト教の歴史がまとまっていて、とても分かりやすかった。内村鑑三の無教会主義を軸に捉えることで、そこに入門する者、入門したが離れる者、破門される者、正反対に位置するカトリック…など整理されやすいのだと思った。一人一教会、一般信徒が聖書と向き合い、主観でその言葉を捉え直し、儀式や秘跡を廃し、一信徒である内村から受洗した人さえいる。それに対し、聖書に述べられたようにペトロの上に建てられた教会=カトリック教会こそ正統であり、個人の主観に基づいた解釈で小教皇が乱立した状態の無教会主義など正統とはとても認められないという圧倒的な権威に統べられているカトリックの批判は尤もだなと思う。日本になぜキリスト教が根付かないのか。日本は日本教であり、行動規範は空気であるから、絶対的な一神教は相性が悪いのだ、とか、厳しい砂漠のような自然の中で生まれた父性的な裁きの神に対して豊かな森と水に恵まれた日本人は馴染めず、母なる神を探し求めるからだ、とか、そういう考察はとても面白い。遠藤周作が異端とされているのは聞いていたけど、たしかに日本人の心性とか現実に即して考えると、遠藤周作的な理解が受け入れられやすいだろうなと思う。
日本教論の山本七平が面白そうで、『「空気」の研究』を読んでみたいと思った。その後を受けた小室直樹の、マルクス主義はユダヤ教と酷似するという指摘も面白い。
遠藤周作や三浦綾子はもちろんだけれど、橋爪大三郎と大澤真幸の『ふしぎなキリスト教』や若松英輔の『内村鑑三 悲しみの使徒』をはじめ、読んだことのある本がたくさん紹介されていて嬉しい。
Posted by ブクログ
面白かった。
岡本先生は話すのも文章を書くのも上手い。
単なる入門書の紹介ではなく、どうして多くのキリスト教入門者の筆者たちがその本を書くことになったか、という経緯を社会の情勢と個人の出来事から細かく分析していた。(もちろん初心者向けに。)
キリスト教を信じておらず、終章におけるカテゴリでは3つ目にこの本は当たるだろう、と想像して読み始めた私からすると、数人の筆者たちのキリスト教への向き合い方自体には理解が及ばない点が多く、読み進めるのがしんどい部分もあった。
本書では内村鑑三から続く、日本におけるキリスト教の流れを(入門書とその筆者の境遇という限定された視点ではあるが)大まかに捉えることができたように思う。
新渡戸稲造が帝大にいた頃はかなり教授と学生の距離が近かったのだなあ。とかどうでもいいことを考えたりした。
小見出しも面白い。このミスとか子が2人を分つまでとか。推しの神の子は推しの子かな?
Posted by ブクログ
プロテスタント、カトリックともに近代の日本でどのように発展して来たかを解説した本。
なので「キリスト教入門の系譜」というよりも、「キリスト教 日本の受容と発展」といった方がしっくりくる。
内村鑑三らへんから近年のインターネット教会などまでを網羅しています。
ただ人物の紹介文がを並べているだけのような構成ですが、自分のような日本のクリスチャン作家や思想家などを知りたい人にはちょうどよかったです。
Posted by ブクログ
中公新書にしてはジャンキーな…というか、内村鑑三から始まるクリスチャン怪人列伝!って内容でこのタイトルは謎ではある。
戦後のキリスト教ブームは皇室と国民の米国への忖度だったのでは、という話に我々は昔からどうしようもないな、と思った。
ネットでは一神教が日本で受け入れられない理由を賢しげにあれこれ書き立てている人がいるが、本書の「日本の仏教神道と比べてキリスト教は高コストで広がらない」という指摘は妥当。しかし信仰とは、自分の行いを振り返ったり社会の理不尽や世界の不条理に対して何かできないかと日々神と向き合い考えることであり、面倒なのは当然なのではないか。そうした内省なくして個人のモラルは保ちようがないのではないか…などとキリスト教徒なのでモヤモヤした
Posted by ブクログ
『キリスト教入門の系譜』というタイトルだが、実際には内村鑑三に近い世代の人物伝という印象。少し昔の著名なキリスト教信者にまつわる雑学が知りたい人向き。
Posted by ブクログ
言われてみれば自分の本棚にも数冊程度の”キリスト教入門”的な本がある。
漠然とした興味はあるんですけどね・・・。
データに寄ると日本のキリスト教は信者数的には
「停滞」から「衰退」局面に入っているそうである。
内村鑑三は日本におけるキリスト者の偉人、というイメージしかなかったが、
それ故に?中々に難しい人wだったのだなあ。