あらすじ
誰にも分らぬ天下人の正体とは? 柳生、真田、朝鮮忍者らの死闘! ――16世紀末、豊臣秀吉率いる日本軍が朝鮮半島を侵攻した。朝鮮の義勇軍に参戦していた僧兵・元信(ウォンシン)は日本兵に捕えられるが、処刑されず鉄仮面を被せられ、日本に連行される。捕虜となった元信は身も心も「日本人」になるよう教育を受けて――朝鮮出兵で、関ヶ原の戦い、大坂の陣で何があったのか。透徹した歴史眼と壮大な奇想力で描く傑作時代エンターテインメント!
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Posted by ブクログ
荒山徹の小説は初めて。
徳川家康の影武者を主人公とした小説と言えば、言わずもがなの時代小説傑作中の傑作、隆慶一郎「影武者徳川家康」を思い出すのだが、本作はあの名作に果敢に挑んいる本歌取り的作品。善悪の立場を反対にし、家康の影武者をまさかの文禄の役の捕虜とするという離れ業を放ってくる。
小説自体も、隆慶一郎だけでなく山田風太郎や山岡荘八いや読みようによっては吉川英治や司馬遼太郎までもカバーというかリビルドしているという貪欲さ。
ただその心意気はいいのだが、残念ながら仕上がりの粗さが気にかかる。真田十勇士の末路の乱雑さや、関ヶ原合戦までとそれ以降の秀光の個性の変わりよう…文自体も必要性がないところで文語口語が混ざっていたり、雑味が残るのは仕事の丁寧さに欠けているからではないか?
朝鮮の忍者3人衆のガッチャマンネタはやりすぎで却って興を削ぐと思ったし、オーラスのどんでん返しもあれじゃ落語のサゲやん…と、雑味というか違和感が残ってしまうのだ。
せめて伝奇小説に特化していれば、悪乗りも勢いも味わいになったのだろうが、歴史小説の側面を持たせてしまったがために、荒っぽくかつ軽薄なイメージが残ってしまったのが残念