あらすじ
2021年ノーベル文学賞受賞! 初期代表作
舞台は20世紀初頭、現在のタンザニアの架空の町。主人公ユスフの12歳から18歳までの成長の過程が辿られ、東アフリカ沿岸地域の歴史的な大転換期が、少年の目から語られる。
宿を経営するユスフの父親は借金に行き詰まり、裕福な商人アズィズに借金の形に息子を差し出す。ユスフは使用人(奴隷)として働き、内陸への隊商で莫大な富を得ているアズィズの旅に加わる。
互いに争うアラブ人、インド人、アフリカ人、ヨーロッパ人のいくつもの勢力を目撃し、さまざまな経験を積んだユスフは次第に自らの隷属状態について疑問を抱きはじめる……。
作家は1948年ザンジバル(現在のタンザニア)生まれ。革命の混乱を受けて67年にイギリスに渡る。ケント大学で博士号を取得。ポストコロニアル文学を教えながら執筆活動を続け、現在、同大学名誉教授。これまでに長篇10作を発表し、1994年に刊行した4作目となる本書『楽園』はブッカー賞およびウィットブレッド賞の最終候補となる。2021年にノーベル文学賞を受賞する。
巻末に「ノーベル文学賞受賞記念講演」を収録。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
主人公の境遇の変化に従って、19世紀後半のアフリカにおけるさまざまな階層を描く。
親との生活は内陸の貧しい町、周囲のさらに貧しい奴隷たちの尊厳、子供より彼らへの喜捨を優先する親。親の借金の質に取られ、大商人の使用人に。そこでも奴隷との交流に、奴隷であっても心の強さを描く。商隊の遠征で奥地で罠にはまり、窮地での大商人の態度、命からがら戻ってからも奴隷や出資者との誠実な交渉で、正しい人物像。アフリカの人々は、貧しくも気高い精神を持つことを訴えているように見える。
少年は抜群に美しいらしく、大人の男女の美少年への視線、少年自身の、何人かの少女への淡い思い、これらと当時の宗教観、社会規範を描く。主人の「お気に入り」の使用人として、奴隷より恵まれた生活ではあるが、奴隷のほうが自由や尊厳を持てるような表現。
最後、大商人の第2婦人への思いを大商人に告白する。追放を覚悟したが、逆に勇気があると褒められる。その直後に奴隷狩りのドイツ人の隊列を追って終わるのは、自分は「気高い」奴隷として生き残る決心、と読んだがどうか。
Posted by ブクログ
歴史背景が違いすぎて正直ピンとくるところが少なく理解できていないところも多いように思う
ヨーロッパがどのように植民地支配していったのか、何もかも根絶やしにするような方法で根こそぎ持っていって、簡単に人を殺すし使えそうなら奴隷にしてしまうとかゾッとする
7歳ですでに奥さんのいる人と結婚させられたり
コーランや宗教的な部分での価値感などイスラムの文化など垣間見た気はした
奴隷として生きていても心だけは誰のものにもならない、自分のものというメッセージは残った
Posted by ブクログ
ノーベル文学賞受賞の小説である。受賞によってアフリカの文学が知られるようになるのは望ましい。フィールドワークだけではなく、こうした小説で、タンザニアや東アフリカの生活を感じることができるので、学生にはおすすめであろう。
Posted by ブクログ
アフリカ文学を読むの流れで手に取った作品。この本の前に読んだアチェべの「崩れゆく絆」と似て、作者が自らのルーツである文化を再構築して描いた作品。
まずは東アフリカの人種や文化の多様さに驚かされる。
しかし、人物の外見や情景があまり具体的に描かれない(みんなから美しいと言われるユフス、しかしスワヒリ人の美しさとは?)ので、読んでいてイメージが湧きにくいという難点はある。
それでもユフスと人々のやりとりが面白く、特にアズィズおじさんの隊商とともに様々な困難に遭いながら、先へと進んでいく様子は冒険譚のようでもあってワクワクした。
Posted by ブクログ
「まずは少年。名はユスフ。」
この1行目から物語への期待が高まる。
ストーリーは簡単に言えばユスフの成長物語だけど、著者が植民地支配や迫害の跡に目が向けられる前のアフリカを描きたかったと言うように、複雑な要素を含むアフリカを知れる歴史認識本だと感じた。
「楽園」はただアズィズおじさんの庭の意味だけではなく、作中に複数の人が自分の描く「楽園」について語る。
ラストのユスフの選択には驚かされたが、庭師のムゼー・ハムダニの自由、カラシンガの信仰などの話の他、父と母がもういないと知ったことも大きかったのだと思う。
ユスフは隷属状態に徐々に疑問を抱くようになっていたし、気付かぬうちにどん底に落ちている糞に群がる犬の姿を見た瞬間に何かがパチンと弾けたということだろう。
だけど、ユスフの選択もまた隷属状態という意味では変わりはなく、「楽園」なんて存在するように思えない見えない未来を自分で手で人生を切り開くことがいかに困難か。
ハリルが受けるであろう衝撃、アズィズおじさんの落胆、ユスフの絶望を予想して悲しく胸が痛くなる結末だった。
奥行きが深くサクサクは読めない文章だけど、読み終えた後の満足度も大きい。
Posted by ブクログ
20世紀初頭、東アフリカで生きる少年の成長とその時代の生活、ヨーロッパ人に征服されつつある様子を描いた作品。騙されたり、暴力に訴えたり、大国の脅威になすすべがない様子が描かれている。このような書籍を読むと、生まれてくる時代や場所が異なるだけで自分もそうなったかもしれない、などと考えるのは浅はかか・・。どんなふうに自分の中に取り入れられるのか考えていきたい。
Posted by ブクログ
2021年度ノーベル文学賞受賞作品。
読後は不穏感で終わり、
中々に解釈が多そうな作品という印象、、でしたが、
後書き読めば、舞台は二十世紀初頭のドイツ領東アフリカであり、ドイツ帝国から支配されているという歴史的背景や、イスラム教の聖典を題材としている所もあり、もしかしたら伝えたい事はそんなに難しいことでは無いのかな…と思いました。
作者自身、書くことに対して強い思いがあると書かれてあり、色んな経験されてます。
私たちの日常では中々知る機会が多くない、理解することがもしかしたら大事なのかなとも思いました。
歴史がとんでもなくポンコツ、、な私ですが、何とか情景描写や、登場人物の心情、場面はどんな事が起こってるのかを頼りに読めていけたので、(途中で挫折しかけたけど。。)、100%理解した!とは言いきれませんが、、
今回初めて、グルナさんの作品に触れることが出来て良かったなと思います。