【感想・ネタバレ】傭兵の二千年史のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

学者が日本語で書いた文章は形式張っていたり賢く見せたいだったりで読みにくいことがあるが、本書は読みやすい文章でスラスラ読めた。
著者の専門は中世から近世のようで、古代や現代の情報は薄い印象(というより中世〜近世がかなり厚い)。
私は「傭兵と言えば三十年戦争」と思っていたのでその様子が詳しく記述され、そして思っていた以上に酷い有様で書いてあったので満足している。

同時期に読んでいるフォン=クラウゼヴィッツの『戦争論』が軍人の立場から書かれたものなら、本書は戦争経験も徴兵経験も無い純粋な学者の側面から書かれたもので、その対比は面白かった。
特に、クラウゼヴィッツが著書のところどころで絶賛しているフリードリッヒ大王を、したたかで冷酷(サイコパス的にも読める)な人物として書いているのは面白い。
「傭兵=食い詰めの厄介者」のイメージだったが、イメージよりももっと酷く、平時には即座に野盗化するので定期的に戦争をしたり、十字軍で外へ吐き出したりしているのも歴史の裏側を見ているようで、新たな知見となった。第4回の十字軍全体が盗賊化したのを不思議に思っていたが納得である。

非常にあっさりとしたあとがき(;平易な文章と合わせても自分を飾るためではなく、読者を考えて本書を執筆したのだろうなと思わせる、彼の講義を聴いてみたかったと思うような内容だった)で、傭兵についての資料の少なさや日本語翻訳がなされていない物が多いこともわかった。
これは傭兵が一般的では無くなったが故に研究対象として遠い存在となってしまったためなのか、倫理観に許されない行為のオンパレードだから研究の対象に適さないのか。どっちなのだろうか。

0
2024年04月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

傭兵史を俯瞰する形でコンパクトにまとまっていてよい。
ファンタジーで傭兵や傭兵団を出す人は、自分の書くものが
どの辺に近いのかを把握するとよいと思う。

私の書いているアレクトー傭兵団は、「血の輸出」と言われたスイスが
モデルですが、うん、傭兵史という流れの中で、どういうものだったのか
位置づけられているのを読むと、なかなか興味深かった。

スイスに時計産業が発達した一つの理由が、傭兵史に見えて来るとは
なかなか事実は小説よりも…。

0
2012年02月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 『傭兵ピエール』を読むついでに参考になるかと思いつつ読んでみた一冊。ヨーロッパにおける「傭兵」の歴史上の影響について論じる。

 傭兵は娼婦に続いて世界で2番目に古い職業。ローマ帝国滅亡の要因の1つに、ゲルマン人傭兵の増加があったことは有名である。また、中世の宗教勢力と王侯勢力の対立、ルネサンスと宗教改革の時代、近代国民国家の成立といった歴史の転換期には必ずと言っていいほど傭兵が絡んでいたこと。

 興味深かったのは「ランツクネヒト」という主に貧農の次男以降から構成される傭兵部隊について。兵士集会と呼ばれる現在の労働組合に似た民主主義的な傭兵の組織があること、現在のベンチャー起業家のような感覚でランツクネヒトを立ち上げる者が多かったこと、酒保商人という食糧だけでなく、武具や雑貨、女に至るまで提供する御用達商人が存在したというのは知らなかったので驚きである。

 他にも興味深い記述はある。また、三十年戦争による中間層(領主、諸侯層)の没落で王権の絶対化が進んだ頃にも傭兵は深く時代に関わりを持っていた。

 有名なボヘミアの傭兵隊長・ヴァレンシュタインが神聖ローマ帝国皇帝から徴税権を獲得し、略奪の合法化と効率化を進めた上に、ユダヤ人金融資本家から融資を受けて15万人の傭兵隊を組織する。また、ヴァレンシュタインと戦ったスウェーデン王であるグスタフ・アドルフも自国の人口100万人の内、13万人を徴兵しようしたところ、欠員が出たためにそれを外国人傭兵で補った。三十年戦争は傭兵同士の戦争でもあったのだ。

 近代になると国家の一体化という観点から徴兵制を導入する国が増加する。一方で傭兵の出番が減り、20世紀以降、組織や兵器の専門化が進むと志願兵制の国が増えて、活躍する傭兵が再び出てくるなど、軍隊を取り巻く環境も目まぐるしく変化する。今後どうなるやら…

 著者は日本史と対比させて語るのが好きなようで、わかりやすく解説してくれている。なかなか勉強になった一冊。

0
2011年06月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一昔前、柘植久慶という元フランス傭兵部隊の人のノンフィク本を結構読んでいて、そんなイメージを持って読んだのですが……。あ、あと、新潮文庫で出ていたA.J.クィネルの『燃える男』とか。
2000年前のギリシア時代の傭兵とか、ローマ時代の傭兵とかの殺伐とした背景をざっくり切り取った内容で、大まかすぎて面白いやら何やら今ひとつな印象です。近世に入ったら、面白くなることを期待。

0
2012年06月08日

「学術・語学」ランキング