感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
題名のごとく、ひと所で落ち着いて暮らすこと、働くことがない。
それは放浪癖があるわけではなく、働いても貧しい賃金でそのまま働き続けることへの失望から
よりよい場所を求めてのさすらいであり
沈む気持ちを奮い立たせての場所も気持ちもリセットする意味があったのでは無いかと思われる。
途中で関東大震災が起こったと思われる辺りがあるのだけど
そこに大きく触れずに、ちょっと場面に触れて後はいつものような生活になるところが
どれだけ普段の生活から苦しく貧しいものかを思わせる。
第三部の終わりの方で母親が本音をもらすかのように
娘を「むごい子」と言うのがやるせない。
女郎屋に売らなかっただけマシとでも思っていたのだろうか。
自分の暮らしも余裕がないのに、仕送りをしてきた娘に対して「むごい」のはどちらだろう。
せめてもの救いは、今私たちがこれを読めている事だろう。
Posted by ブクログ
林芙美子の若いころの自伝的小説。
もがいてももがいても脱け出せない極貧生活の中で、
「なにくそ!」と前を向いて生きて行く姿が痛快。
「ぐだぐだ言っている奴の横っ面を引っ叩いてやりたい」
殺伐とした芙美子の言葉を読んでいると、
食うに困らぬ人の「生きる悩み」というのは、
結局は「心配は道楽のうち」なのだと思います。
泣きっ面に蜂、な状態で、やけくそでも口笛を吹きながら、
やりきれない日頃の鬱憤を割り切ることが出来ている。
決して「いい人」ではないし、
男に裏切られたり女に騙されたりしつつも、
人情にもろい芙美子は強烈な存在感を放っています。
くよくよしている時に読むとすっきりします。
無人島生活することになったら、この本はもっていきたい(笑)
Posted by ブクログ
大正時代、極貧状態にあった女性の日記。金、飯、男、家族、周囲の人間の話と、詩が主。半ば呪いめいた愚痴と、その日に何かあったかを書き連ねた内容。3つの本をまとめた内容になっているが、そのうち1巻目にあたる部分の内容は中々悲惨である。セルロイド工場で人形に永遠と色付けを行っている辺りは特に印象に残った。あまりに生々しかったためか、戦時中発禁処分になった様子。それも仕方ないように思う。金品の貸し借りや人間関係などは随分現代と違うように感じるので、その辺りは興味深かった。しかし、こんな状態でもどうにか暮らしている作者の方のバイタルは現代人には無いものだと思った。