【感想・ネタバレ】楽隊のうさぎのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

青春小説と呼ぶにはあまりに生々しい一冊。
中学校の吹奏楽部が全国大会を目指す日々を、中学で初めて楽器に触れた克久を中心に描く物語。音楽回りの描写は圧巻の一言に尽きるが、この物語の主眼はどこにあったのだろうと思ってしまう。部活が主眼であれば、全国大会の結果を見せずに終わる結末はどこか煮え切らない。
学に上がって世界が広がり、いじめられていた小学生時代から一転、全国大会で重要なパートを任されるまでになった克久の成長物語であるのは間違いないだろう。ただ、物語のラスト一行で示唆されるのは、この物語における克久と両親の関係の重要性である。
はっきり言うが、克久の母親の百合子、ちょっと気持ち悪い。いや、これは私が子供を持たないからそう思うのであって、息子を持つ母親なら共感できるのかもしれない。というか、共感できてしまうことを拒否したくなるかもしれないが。
百合子はどこか子供っぽいところがある母親として描かれる。なんなら克久の側が、百合子の機嫌を損ねないようにするシーンがあるくらいだ。特に福岡旅行に至るまでの顛末が顕著で、今の克久に対する自分の執着から、百合子は克久の反対を押しきって旅行を決定してしまう。また、私はこの小説をセンター試験で知ったのだが、センターで抜粋されていたシーンには、克久と百合子の心情を百合子の側から「初めて会った恋人同士のような」と評するシーンがある。
母親として息子を見る百合子の視線の根底に、女として男を見る視線があるように思えてならないのだ。
無論それは劣情を催す云々の話ではない。子供から大人へと羽化していく息子の克久を前に、相対的に百合子が「母」から「女」に戻っているのではないかということだ。もし克久が女の子だったらこんな描写はしないだろう、と思える百合子の心情の数々がそれを示している。
そして作者は、その心情を至って冷静に、客観的に見つめている。百合子の心情が、息子にとっては煩わしいものである可能性を容赦なく示唆しているのがその証拠。要するに、息子に対する女親の「気持ち悪さ」を「分かって書いている」のだ。
百合子はいわゆる「毒親」ではない。親としては普通の人間だ。そんな普通の母親でさえ、根底にこういう「気持ち悪さ」を持っている。
性別の話をするのはこのご時世ナンセンスかもしれないが、それでもこの描写は女にしか書けないだろうと思う。それも、子供を持つ母親にしか。

「部活モノ」として読めば展開は良くも悪くも王道中の王道。だが、他の部活モノとこの小説を差別化するポイント、この小説で一番光るポイントは、百合子まわりの描写なのではないかと思う。
克久と同い年くらいの子供が読めば青春小説として楽しめるが、子を持つ親が百合子の感情をつきつけられたらどういう心情になるのだろうか。そう思ってしまう一冊だった。

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2021年07月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

同じ吹奏楽の話、「ハルチカシリーズ」が弱小校のお話だったんだけど、こちらは強豪校のお話。「青春小説」なのかもしれないけど、終始主人公がひとりでうじうじ悩んでる感が否めない…。ラストシーンの、音楽の壮大さが伝わってくるシーンは、心打たれた。

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2014年10月09日

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