あらすじ
彼女の心の拠りどころ、「トーマス」と慕う小児科医の戸増は、4年前の事件との共通点を示唆。現場に残された指紋からも、同一犯による犯行と見られ……
志緒は友人たちとともに、事件の深部へと介入していく。
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Posted by ブクログ
主人公の翡川志緒は、小学六年のときの事件がトラウマとなり、成長が止まってしまい、適応障害になっている。
幼馴染で親友だった希絵が、小学校の温室内で殺されたのだ。
それ以来友達を作る事さえできなくなってしまい、保健室登校を続ける志緒
彼女の洞察力はとても深く、小さな違和感に納得できない性格。
北高一年となったある日、同じクラスの共田が飛び降り自殺する。その原因について、二年の西杵万里と、一年の位坂雪真と共に調査を始める
過去にトラウマがあり適応障害を抱える3人が、次第に心を通わせていく前半は、学生の頃の懐かしいような気持ちで読んだ。
親友希絵の母からの
『もう先に進んでいくあなたを見ているのがつらい』というセリフ
真意は後になってわかってくるのだけど、このセリフが結構辛い。
親にとって、亡くなってしまった我が子は、亡くなった時のまま、ずっと姿は変わらない。でも、同級生達は当たり前だけど、どんどん成長して大人になっていく。
その姿を見るたびに
あの子が高校生になっていたら…
あの子が20歳になっていたら…
あの子が結婚していたら…
と、想いを馳せてしまう姿が想像できてしまうから。
亡くなってしまった我が子の時計は、二度と動くことがないのだから
物語的には、前半の共田の自殺の理由を探る『動機』が、やや不自然に小さい気もしたけれど、洞察力がとても深いという設定なら納得できるかな。
それにしても、適応障害の話や、トラウマの話が多い割に優しい文体になっていて良かった。
志緒を生後六ヶ月から診ている小児科医のトーマス(戸増)先生。志緒の初恋の人で父親代わりでもある先生。この先生がとても良いキャラクター
死者のために生きてはいけない
痛みや苦しみなしに育つ強さなんてない。
傷ついたらどうすればいいかを知っておくべきだ。受け入れてくれる人がいるってこともね。というセリフ
いつだって、何があったって、自分を受け入れてくれる人がいる安心感はとても大きい。
母の恋人であり、小学校の担任だった芳岡先生との会話
子どもが選びたいと言っても、それが傷つく結果になると分かってる選択を許すのは、大人として正しいことじゃない。
この、トーマスと芳岡先生の両極的な考えも深い。
なんでも自分に選ばせてくれるトーマスと、傷つく結果になるのが見えているなら選ばせない方がいい、という芳岡。
どちらも大切な事だからこそ。
追い込まれたときに、バカなことをするのは子どもより大人だ。
これにも思い当たることがあって心が苦しくなる。
頭でわかっていることなのに、気持ちというか心がどうしようもなく受け入れられないこと、人間にはあるから…
共田の自殺の本質を見抜き、新たな友達(位坂と万里)を得た志緒の時計は再び動き出す。止まっていた身長が伸び始めたのだ。
それなのに再び起きる事件。
親友希絵の妹、美璃が行方不明に。
そしてその背景に不審者として浮かび上がる、希絵を殺した犯人、道井蓮士
自分のために事件を調べろというトーマス。
友達と親友との違い。
どこまで相手に介入しても許されるのか…
ここも本当に難しい。何を伝えるか以上に、どう伝えるかが大切。
人を追い詰めるような話し方は、逃げ道を塞がれるようで辛い。正義感を振り翳すことの影響と危うさ。
大宮刑事との話も興味深い。
親は単純だから、子どもから『ありがとう』の一言があれば、それだけでまた明日からも頑張れる。親孝行なんてそんな程度でいい、というセリフ。
そうなんだよなあ、と思う
本当に親なんて子どもから何をして欲しいとか、何を買ってもらいたい、とかはない。
生まれてきて良かった、と思ってくれて、自分の力で生きて行ってくれたら、それだけでいいんだと思う。
今はそれすら難しい世の中なのかもしれないけど…
こうして書いてみると、事件を解決するメイン部分よりも、その背景というか細かいところにとても心に突き刺さる部分が多かった作品だと思う
それなのに…
あの結末は…
ちょっとしばらくしんどくてトラウマになりそう…
Posted by ブクログ
親友が殺された事件のトラウマで、体の成長が止まってしまった志緒。
それから4年、高校生になった志緒のもとに、親友の妹が何者かに連れ去られたとの知らせが届く。
彼女の心の拠りどころ、「トーマス」と慕う小児科医の戸増は、4年前の事件との共通点を示唆。
現場に残された指紋からも、同一犯による犯行と見られ……
志緒は友人たちとともに、事件の深部へと介入していく。
Posted by ブクログ
親友の事件の記憶を抱え、その時から成長が止まってしまうほど苦しんでいる、というのはとてつもなく悲しいことだ。それでも、自分がすべきだと感じたことには立ち向かい、真実と向き合う姿はとても強くみえる。
第二章からはさらに重い話になる。私が志緒の立場であれば、耐えられないと思う。母親が心配するほどの危険を冒してでも命を救い出そうとし、真実を見つけるために何でもする。そこまでするのか、とすら思ってしまうけれど、心強い友人や信頼できる医者がいるからこそ、そしてもう二度と同じ結末を迎えたくないからだろう。どんな状況であっても、震えるほど怖くても、いつだって冷静に判断する志緒はやはり強い。それは戸増が志緒の人生に多くのものを与えたからであろう。そして、それは一方的ではなく、戸増自身も志緒のおかげで成長することができた。
読みながら犯人は何となく分かったものの、想像以上に酷い結末だった。自分の欲のためなら、何の罪悪感もなく何でもしてしまう、そして仮面を被り難なくこなせてしまう人間はとてつもなく恐ろしい。