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Posted by ブクログ
物語はそこにリアリティが無ければ没入することができません。では、虚構の物語をリアリティを高く創りだすためにはどうしたらよいのでしょう。
本作品は江戸伸介という男が特殊な能力を持った指を持つというたったひとつの偽を真とすることだけを読者に要求し、その先は非常に論理的に全ての虚構が真になる(リアリティがある)ように描かれています。「AならばB」で、Aが偽だったらどんな命題Bも真にできるというやつです。もちろんそれは、その構造を取れば誰にでもできる技術ではなく、弓月光という天才ストーリーテラーならではがなせる技術です。
たとえば本巻でも「見た目がA定食で食べると涙が出てしまうほど美味な食事を作る老人ホームの食堂のおばさん」が出てきますが、江戸伸介の指の存在を認めた読者ならすんなり受け入れることができます。
さて本作品は、今進行しているビルの完成とショウの成功をもって完結するのか、それともその先も描かれるのか。
弓月光の他の作品からすると完結してしまうのだろうと思うのですが、それでは大坂城を築城したところで終わる太閤記のようなものなので、その先も描いてほしいなあと思います。