【感想・ネタバレ】房思琪の初恋の楽園のレビュー

あらすじ

今の日本で読まれるべき、台湾の実話にもとづく不滅の傑作
「記憶に傷がつくほどの衝撃を受けた」――綿矢りさ

「性暴力被害で自分を責めてしまう仕組みを理解できる本」――小川たまか

芸能界における未成年者への性虐待、学習塾や学校の教員など、権力者や教育者による子どもへの性虐待の報道が後を絶たない。本書に綴られているような出来事が次々と明るみになり、大人はどのように子どもを守っていけばいいのか、社会の構造的な問題について、様々なところで議論されている今こそ必読の書としてUブックス版で緊急出版する。
文学好きな房思琪と劉怡婷は、台湾・高雄の高級マンションに暮らす幼なじみ。美しい房思琪は、13歳のとき、下の階に住む憧れの妻子ある五十代の国語教師に作文を見てあげると誘われ、部屋に行くと強姦される。異常な愛を強いられる関係から抜け出せなくなった房思琪の心身はしだいに壊れていく……。房思琪が記した日記を見つけた劉怡婷は、5年に及ぶ愛と苦しみの日々の全貌を知り、ある決意をする。
解説:小川たまか

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Posted by ブクログ

ネタバレ

これだけの密度のある小説だと、一読で理解するのは難しいので、大抵はもう一度読みたくなる。ただ、この小説は、もう一度この文章を目にすることが本当に嫌になる、そんな辛い小説だった。この本が唯一の著作で、出版から二ヶ月後に亡くなったという著者の言葉を借りる以外に説明のしようがないが、「誘惑された、あるいは強姦された女の子の物語」ではなく、「強姦犯を愛した女の子の物語」である。

13歳の頃から、尊敬していた塾講師「李国華」によって強姦され続けた少女「房思琪」は、大学生となったとき、ついに発狂し、正常な精神を失ってしまう。李国華によって縄で縛られ、強姦されようとしているとき、彼女が、正常な精神を失ったそのときの描写が、一番印象に残っている。

よかった。魂が身体から離れようとしている。いまこの屈辱を、忘れられる。また戻って来たときには、わたしはまた元通り。
<中略>
今回、房思琪はしくじった。魂が離れてのち、彼女は二度と戻ってくることはなかった。
(p237)

被害者がなぜ助けを求めることができなかったのか。その微妙な心が痛々しく描かれ続ける一方で、加害者の考え方が描かれる。本当に腹が立ってきて、本当に、辛くなってくる。
本文を読んでもらいたい。どこまでも説明のしようがない小説だった。

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2024年07月22日

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