あらすじ
オーラル・ヒストリーと一言でいっても、実際の現場で行われている行為はさまざまだ。本書は、「話し手の口述によること」「共有可能にしようとしていること」「話し手が歴史的事実を語り残そうとしていること」の三点を実現するための具体的な手順を示したうえで、それぞれの実践における困難と実践を紹介する。聞き取りの初心者にも、経験者にもおすすめのガイドブックである。
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Posted by ブクログ
佐藤信「オーラル・ヒストリー入門」(ちくま新書)
オーラル・ヒストリーは、聞き書きにより歴史を描いていく方法。本書はどのように「聞いて書くこと」を実践するか、その手法や注意点について記載した教科書的な本でした。①聞く相手と出会う方法、②ヒヤリング前に行う質問などの準備、③場所や録音機材などの準備、④ヒヤリングに臨む際の心構え、⑤ヒヤリング後の文字起こし、文章の整理、⑥ヒヤリング相手に確認をとる、⑦製本や出版、の各段階について記載されています。
またヒヤリング相手が、①市井の人や親族、地域の人の場合は、主にその人がどう生き・どう感じてきたのかという、その人にとっての主観的な歴史を描くことになる。あまり細かく事実確認を行うより、自然な語りを引き出すことが大切。②一方、相手が政治家・官僚・外交官など公的生活を送ってきた人の場合は、客観的な現代史を作っていく作業ともなるので事実確認が重要で、思い違いなどで誤りが生じないよう年表や組織・人事なども事前に準備する必要があるし、本人の著作やインタビュー、関連する新聞記事なども十分に読み込んでおくことが必要。
Posted by ブクログ
オーラルヒストリーの方法についてのもっともわかりやすい入門書である。1000円以内なので、学生も手に取りやすい。しかし、実例について、自分の祖父母や家族についての朴さんの例は在日の人の例であるし、美術家、政治家、官僚、外交官については学部生では難しいであろう。ましてや教師についてのオーラルヒストリーを行なう場合には、また違ったことがあると思われるので、教員養成系大学の学生が直接教師に話しを聞く場合に役立つのは前半だけかもしれない。