【感想・ネタバレ】韓国のグローバル人材育成力 超競争社会の真実のレビュー

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Posted by ブクログ 2021年01月10日

韓国好きの端くれとして10年強韓国に行ったり韓国人とつき合っていて思うのは、かの国のほうがグローバルナイズされているのではないかってこと。ガラパゴス化した日本の人々が何となく後進だと思っている韓国だけど、日本が「韓国はまだ追いつけない」と思っている横を進み、別の道を先へ先へと進んでいるんじゃないかと...続きを読む感じることがある。そんな感覚が現実的であることを示すような一冊。
韓国を評する本って、「この面では進んでいるけど、全体から見ると日本には、あるいは世界標準にはまだ至っていない」的な論調のものが多い感じがするんだけど、その点この本はひとまず率直に人材育成に向けた取り組みにおける韓国の先進性を認め、受け入れたり倣うことを説いている点で、漢江……判官びいきの自分としては胸の空く読後感。
実は自分も「韓国人は一人ひとりは高学歴でパフォーマンスも高いけど、個人主義的傾向が強く集団になると力が発揮できない」といった、いわばステレオタイプな見方が半ばうなずけると思ってきたんだけど、「韓国の人材の特徴として、リーダーシップを尊重し、戦略性を強く志向することは特記してよいだろう。」(p.74)といった記述をはじめ、この本を読むと、かつてはともかく今の韓国はそうではないみたい。その転換点となったのは、1997年のIMF危機を受けてのこと。昇り調子をくじかれた韓国はこのときやその後のワールドカップを通して一体化することを身につけたと。つまり、ほんの20数年ほどの蓄積であり、もともとの国民性とかでなく後天的に取り入れ適応しつつあるものだというのは、認識があらためられた点。これを知ったことで、ステレオタイプ的な国民性にも変遷があるという認識になるし、たとえばノーベル賞受賞者の輩出のように、成果が目に見えるかたちで出るにはもう少し時間が必要だろう。
一方で、古来の韓国的な文化が人材育成や発展を障害してきたという見方も述べていて、これも面白い。それは儒教的精神に基づく朱子学の発達で性理学が重視される一方、実学は賤視されてきたというもの。実学軽視はおそらく近代発展のなかで改められてきただろうし、一方で性理学的な物事の理を突き詰める考えの伝統があるということは、考えようによっては物事を根源から生み出すことができるということでは。それはつまり革新・イノベーション向きともいえる。古来からの理を重視する考え方と、ここ20数年の変革が組み合わせれば、韓国のパフォーマンスってかなりすごいことになりそうな気がする。
この本では、人材育成の実践の数々も紹介されていて、特に小学校から大学・大学院までの教育機関を舞台に数々の取り組みがなされているのが印象的。ときどきの施策に振り回される弊害もあるだろうけど、果敢に新しいものに取り組み実行していくダイナミックさは韓国の強み。若者の就業難や中高年の名誉退職のような過酷さもあり、書中でも自殺率の高さが指摘されていたりするが、とにかく手を打とうとしているのはこの国のおかれた立場(国内市場が狭いこととか)が反映された必死ともいえるもので、自分は好感をもつ。この本は2013年の本なので、現代といいながら韓国的な感覚ではだいぶ昔。きっとその後7~8年でだいぶ進んでいることだろう。
この本では、かつて日本が隆盛を誇った1980年代に、アメリカが日本を見習って様々な取り組みをしたことも紹介している。かつての敗戦国で自分たちが援助した国から学ばないといけないって屈辱的だけど、それを乗り越えないと未来はないとアメリカは判断したってこと。翻って、嫌韓的な発言がそこかしこで見聞され、しかも近年その程度が増しているような日本はそういう振る舞いができるかな。できないでガラパゴスのまま退化していったりして。

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Posted by ブクログ 2017年08月20日

近年の韓国の大躍進の背景がわかる良書。韓国は努力して勉強して結果を出せば報われるという考え方の下、教育熱がとても高い。高学歴で修士号、博士号の取得者も多くて、留学経験者も多くて英語が堪能。だからこそ、世界的な韓国企業が増えていて、世界で活躍している韓国人も増えているのだと思います。それに比べて、日本...続きを読むの教育は良いところもあるけれど、問題点も多い。

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Posted by ブクログ 2013年06月09日

積極的な海外展開を行っている韓国の、教育と人材育成についての本。
著者の体験と、報道や研究書の紹介、インタビューなど、多様な情報源から1冊の本になっている。

韓国はもともと教育熱心な国で、小学生から深夜11時くらいまで勉強し(クラブ活動のようなものはあまりないらしい)、現在の大学進学率は8割を超え...続きを読む、大卒のTOEICスコアは900点を越えるのが普通なようだ。
「箔付け」のための海外留学も盛んで、中高生からの早期留学では、母親が子供と一緒に渡航して父親は韓国から仕送り、そのまま家庭崩壊するのが社会問題になっているらしい。

韓国が教育に熱心なのには、儒教の影響があるという。これは日本にも当てはまるが、日本は陽明学の影響により実学が重視され明治から昭和にかけて産業が盛んだったのに対し、韓国は理学が長い間重視されてきたという。これは科挙の名残もあるらしく、そういった「知性」を携えた人間像を韓国では「ソンビ」というそうだ。

そういった背景もあり、韓国では企業の採用でも大学の成績(GPAに相当する「学点」)や、履歴書に記載される学力が重視されるという。
特に履歴書は、「スペック」と呼ばれるTOEIC・ボランティア活動などの「記載できる能力や体験」が重視され、スペックを「積み上げ」るために大学在学中に課外活動・ボランティア活動を行うらしい(これは日本でも見られるが)。また、企業が大学2年次以降のカリキュラムを奨学金付で提供し、事業のための教育を施した上で入社させるというルートもあるそうだ。

韓国企業の躍進の理由としては、共同体を重視する韓国文化を挙げている。それによって国と国民が一丸となって戦略的に展開することが可能になっているという。
これは高度成長時代の日本にも言えたことで、日本はそれで一定の成功を得たわけだけれど、日本はその後に個人主義化し、その一方で当時の日本から学んだ韓国が、特定の分野で日本を追い抜きつつある、という構図が語られている。

本書は主に韓国の躍進について紹介されているが、第6章では課題・問題も紹介されている。僕は、それぞれかなり深刻だと思う。

超競争社会、格差拡大(ソウル大の学生の63%は所得者層の上位2割で占められている)、低い就業率(63%。日本70%、アメリカ66%)、1000人あたりの自殺者数(世界2位)。
子供の「主観的幸福度」の調査においては調査対象の23か国中で4年連続最下位だそうだ。高校生への調査でも「幸せ」は12%で、日本の32%、中国の39%を大きく下回るという。また、日本がノーベル賞受賞者を多数輩出しているのに対し、韓国はいまだ受賞者がいない。

しかし、本書では、そういった問題に対して韓国が行おうとしていることも紹介されていて、大学進学率の「低減」と高卒就職率の向上のための施策であるマイスター高校制度や、創造力を高めるための新たな取り組みなどが紹介されている。

また、EUが一体となって交流をしているように、日本・韓国・中国も、産学官連携で、より高度な発達を目指すべきだ、という主張がされていて興味深い。

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Posted by ブクログ 2013年06月10日

とにかく受験も就職も超競争社会の韓国。なにもかも極端で、国のマーケットが小さいからとにかく外へ外へって感じ。でも筆者はこんな社会のひずみを認めつつ、なんか共感している。
個人的に感じるのは、なんか余裕がないのが韓国。常に走り続けているイメージだなあ。かごの中のハツカネズミみたい。ある意味、サブカルチ...続きを読むャーが生まれにくいのかなって気がする。ピッチャーで言うとひたすら直球勝負でストレートに磨きをかけている。いやまあ、カーブとフォークくらいはありそうだけど配球とかは適当そうだ。
韓国の勢いを認めつつも、なんか違うだろうって思ってしまうなあ。社会がまだ落ち着いていないというか、形になっていない気がするけど、日本が逆に落ち着き過ぎたのだろうか。

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Posted by ブクログ 2013年02月26日

なぜ韓国は急成長をとげているのか?その鍵は「人材育成力」にある、と筆者は指摘している。

韓国は、国家と企業がタッグを組んで人材を育てている。その様子が非常にシステマティックであることを、筆者は明らかにした。民族性・国民性による説明もついていて、(読み物としても)面白かった。

私は、帯に惚れて本書...続きを読むを選んだ。ちょうど韓国企業のことを知りたかったからだ。ところが、財閥群それ自体は、本文中にあまり出てこない。帯に勢ぞろいしてたビッグネームは何だったのか…。あ、そうか、本書は「韓国」の教育がテーマだったのか。

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Posted by ブクログ 2013年08月03日

今まで日本でのテレビとかによる韓国人と、実際に出会った韓国人の印象が違いすぎてびっくりして興味持ったから読んでみた本!
韓国の教育や、その根本となる儒教に基づく信念、国民性などについてよくわかった。ふむふむってかんじ。
韓国人の勉強への熱は見習わなくてはならない部分があると思った。

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