【感想・ネタバレ】相馬眼が見た夢 岡田繁幸がサンデーサイレンスに刃向かった日々のレビュー

あらすじ

なぜダービーを勝てなかったのか。
なぜこんなにも愛されたのか。
“マイネル軍団総帥” 岡田繁幸、反骨の71年。
競走馬に狂う人たちの魂に届くノンフィクション。

〈2021年3月19日、71回目の誕生日を迎えた朝、繁幸は牧場敷地内の池に身を投じた。(中略)生前、勝利への渇望を隠そうとしなかった日本ダービーのタイトルはまだ手にできていなかった。積年の悲願達成に向けて、牧場のさらなる発展に向けて、サンデーサイレンスを超える世界的種牡馬の発掘に向けて、死の直前まで強い意欲を見せていただけに、どうして……と私は戸惑った。〉(本文より)

内容紹介
●「日本のいびつな競馬制度を変える」コスモバルクに課された使命
●吉田善哉・照哉・勝己「社台との因縁」が始まったとき
●もしサイレンススズカの事故がなければ…岡田繁幸との知られざる秘話
●「ナリタブライアンを10億円で売ってほしい」最強馬獲得プラン
●なぜステイゴールド、ゴールドシップを種牡馬として手に入れることができたのか
●日本ダービー2着・グランパズドリームの想像を絶する悲劇
●ラフィアンとニジンスキー…修行先のアメリカで名馬から受けた衝撃
●弟・牧雄から期待馬を強奪、兄弟ゲンカで救急車…明らかになった岡田兄弟の物語
●藤沢和雄「次はオレの馬で負かしにいく」…立ちはだかった馬
●一目惚れした妻・美佐子と出会った日に言った「信じられない言葉」
●スーパークリーク「武豊G1初制覇」の舞台裏で巻き起こっていた騒動
●松岡正海、柴田大知、丹内祐次を重用した理由
●「家にもう銀行が来てる」セール史上最高額“カーム”落札後のドラマ
●岡田繁幸にとっての最強馬、自身が手がけた最高傑作、理想とした馬体とは
●71歳の誕生日に自死…その日にあったこと

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Posted by ブクログ

ネタバレ

岡田繁幸さんのことを「凄い人」だと思っている競馬ファン、マスコミ含め、競馬の生産、血統絡みの仕事をしている人には必読の本だと思います。

「マイネル軍団の総帥」としてだけでなく、地方競馬、HBAなど、競馬界全体を良くしようと尽力されていたことが改めてわかります。

仕事で成し遂げたことだけでなく、自ら率先して草むしりをするところなど、仕事への意識などは参考になる点が多々ありました。

これほどのホースマンが、ダービーも勝てず、悲しい最後になってしまったのは辛いですね。

グループからダービー馬を出すことが、岡田さんへの最大の供養となると思うので、残された人には頑張って欲しいです。

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2025年11月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

切ない
ただひたすら切ない
総帥が追いかけて、求めて、届かなかったクラシック、ダービー
最期の章は読むのも辛くて・・・・
さぞかし無念だったろうな
色々書きたいけど胸が一杯で書けない
武田牧場、トウショウ牧場・・・
作中に出てくる名だたる名牧場が今は廃業となってしまっている現実もショックだ
明和牧場を買収した経緯を知ることができたのは良かった


一時、ラフィアン会員として同じ夢を見させてもらいました
毎年じゃがいもやカボチャが箱入りで送られてきて、毎月スタッフのコメント付きの出資馬ポートレートが送られてきて、会員思いのいいクラブでした。
ゲストハウスも何度か泊まったけれど、行くたびにきれいに拡充されていく牧場の様子を見るのが楽しみでした。
朝霧の中、鹿なんだか馬なんだかわからない子たちが放牧地に佇むのを見るのは得難い経験でした。

総帥が見た夢がこれから現実のものとなりますように
私も見守っていきたい

0
2025年11月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ビッグレッド、ラフィアン等、マイネル軍団を設立した岡田繁幸さんの伝記的な本。
筆者との長い付き合いの中での何気ない会話に滲む繁幸さんの馬への強い思い、周囲の関係者の繁幸さんへの印象や記憶が記されていてとても読み応えがあってあっという間に読み終えた。

日曜夜にドラマ化やNHKの連ドラになっても良いくらい。
昔ながらのブン殴るご家庭なので、現代では一部再現不可かもしれないけれど。
殴り怒鳴り合い、追い出したりしつつも援助したり、引退した父を喧嘩もしたけど引き受けたり…特に男性陣については、なんかもう“熊のボス争い”を見ているような家族関係(笑)

印象に残った逸話を何点か。

社台の吉田照哉さんとの出会いがお互いの印象を表しているようで面白い。
二人の初対面の想い出が食い違っていて、照哉さんは繁幸さんについて“『日本で一番馬を見られる』と吹いている奴がいるから見に行った”と言っているけれど、繁幸さんは“ボーリング場へ遊びに行ったら日本語ではしゃいでいる人がいたので話しかけたら照哉さんだった”との事。
なんかそれぞれ相手に思う所ありそう。

東京からやって来た娘さん(世話になっている会社の従業員で他の牧場に遊びにきたのを案内するよう頼まれた)に交際期間0日、初対面の夜の車内でいきなり結婚を申し込むの普通に怖い。
東京に帰った後も高い電話代を掛けて(月23万)毎晩電話して、わざわざ友達に電話を代わり「岡田くんはいい奴だよ」「静内は良いところだよ」(ただしその後、奥さんになってからめちゃくちゃ働かせる)とPRさせるの面白い。

ビッグレッドとラフィアンを設立。
「狡猾でないとやっていけない商売はおかしい、騙してでも儲けようとする姿勢はおかしい。ごまかさず王道を進めばきっと大きくなれると信じていました。社台以外にもまともなところがあるんだぞって、ファンに訴えたかったんです」
ラ、ラフィアンで一口買いたい!
と思ったけれど、弟の牧雄さんが目をつけていた小馬を強奪したり、牧雄さんが育てた馬を私が育てました風に広告したり…牧雄さん曰く「ろくでもない(笑」事をしてもいるので、ノルマンディーの方が良いかな…とも思った(笑)

マイネル軍団のお抱え騎手についても触れていて
丹内さんは今、大活躍だけど昔は「マイネルの奴隷」だなんて悪口を言う同僚ジョッキーがいたんやなぁ
コツコツ調教に参加したり良いじゃない。
マメに顔を出してキチンと指示を守る。それだって営業努力だよ。

外厩的な仕組みによって地方の競馬を盛り上げようとしたり、美しく設えられた牧場や競りの場や飲食、馬券の楽しさでファン増やそうとしたり。
人を動かす時に、喜怒哀楽のうち「楽」(楽しさ)を原動力にするのってとても良いと思う。

自社の従業員に対しても、当初は馬の世話だけじゃなく施設工事も自分たちで行って「こんな仕事がしたかったんじゃない!」と辞められてしまったり、従業員の付き合っているお相手の親に「牧夫じゃダメだ」と断られたりと辛い思いをさせてしまう事もあったけれど、ビッグレッドが美しく整備され、敷地も増やして従業員も仕事に誇りを持てる環境が整って来た。
本当に環境も外観も素敵な施設だもんね。ビッグレッド。

岡田繁幸さんの最期の様子が最終章に詳細に書かれていて、“朦朧とした状態で池に落ちてしまったんじゃないか?”とも考えていたけれど、遺書も残し、計画的な準備もされていて、強い意志のもと断行されたのだとわかった。

長男紘和さんへの「お前の代にはG1をいくつも勝てる。本当に良かったよ」の言葉が印象深い。
ダービーを獲る事に執念を燃やして、馬を見極める事に人生を費やして来た繁幸さんが、“自分の代では取れない”と自覚してしまったようで少し悲しいけれど、馬の血が続いていくのと同じように、馬を育てる岡田一族の努力が実を結ぶ未来が見えるくらい立派な基盤を作り上げた事は繁幸さんの偉業。

自分たち一族だけではなく、日高や地方競馬、ファンへの競馬を盛り上げていこうという意識を持って行動されていて、亡くなってしまったのが本当に悲しい。
岡田さんの馬の解説企画、自信満々にズバッと評価して聞いていて楽しくて好きだった。
当たり外れがあるのは競馬では馬の能力だけじゃ決まらないから仕方がない。

繁幸さんの描かれた馬の絵などもビッグレッドに飾られているだろうか?
いつか必ず、施設や育てている馬や絵を見学したいな。

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2025年10月19日

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