あらすじ
――樟脳の匂い。それは僕にとって、大事な死者の忘れ形見だった。
その村では人が死ぬと、霊は徐々に若返り、やがて赤子に戻る。死者が女なら「初髪下ろし」の儀式を行い、成仏を促すという。
将来に悩む美大生・洞口航は、漆掻きのアルバイトの面接を受けた。謎めいた女性に採用されて山村に向かったものの、到着するなり思いもかけぬ事態に遭遇する。集落の長に「初髪下ろし」の役目を押しつけられたその夜から、不穏な影が身辺に忍び寄る。
「お前、このままだと死ぬぞ」
怯える航を見かねた漆掻きの親方が明かしたのは、村が隠してきた想像を絶する闇だった。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
すっごくおもしろかった!
「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」の大賞と読者賞をダブル受賞しただけはあります。
みなさんにも読んでいただきたいです!おすすめです。
2作目作るのは難しいって、ちょっと前のXでプチバズりしてましたけど、著者の2作目はかなり期待しています!
と、ここで業務連絡です。
感想を書いてたらかなり長くなってしまいました…。
気になる方のみ、以降をお読みください…。
(ネタバレは書いてませんのでご安心を)
私には、『100ページ以内になにかしら引き込まれるイベントなどが起きないと「おもしろくない」と判定しちゃうセンサー』が搭載されているのですが、この作品は1ページ目から引き込まれてしまいました。
作品の冒頭って、主人公の属性や時代設定などなにも分からないから、そこを探りながら読むんですよね。そのあたりが掴めてくると読むスピードも上がっていくのですが、そうなるまでは結構ストレスを感じてしまいます。
しかし本作は、この手探りな時間が楽しく読めたんですよね。
文章がわかりやすいし、なにより情報が明かされる順番が巧妙だったと感じています。
書き出しも良かったんですよね。
「え、なになに?どういうこと?教えて教えて!」という感じでウキウキで読めました。
そして、怖いところはしっかり怖い。
めちゃくちゃ怖いということではないのですが、結構細かい間隔でゾクっとさせられる感じでした。
さらに、全体的に漂う妖艶さもあって、主人公と一緒にドキドキしてしまいました。
あと、結構重要なことだと思ったのですが、「幽霊の存在を頑なに信じない人がちょっとずつ信じていく過程」がなかったのが良かった!この件もう読み飽きたんですよね…。
本作は、幽霊の存在をみんな信じてるし、むしろ幽霊を見たことがある人が複数人います。主人公もすぐに幽霊の存在を認知するので、このストレスがないだけでだいぶ気持ちよく読めました。
もう一つ言及させてください!
本作で行われる儀式の手順や禁忌が、よくある因習ものより細かい印象でした。
よくよく考えてみると、神社で行う和式の結婚式とかお葬式とか、細かい手順や禁忌などの決まりごとが多いですよね。使う道具とかも、それ専用だったり。
本作の儀式もそれに通ずるものがあって、リアリティを感じました。
それに、冥婚ってありますよね。本作の儀式が冥婚にも通じているように感じたので、なんの違和感もなくすんなり受け入れられました。
とにかく読みやすかったです。
読み味が軽いというか、ついつい先を読んでしまって手が止まらない感じ。
そして、登場人物の言動に違和感がない。
これらの作用により、突っかかることなくイメージがスッと浮かぶ。
なんともストレスフリーな読み心地でした。
こんな作品なら何冊でも読みたいです!
長文にもかかわらず、ここまで読んでいただいてありがとうございました!