あらすじ
「インフラエンジニアって、結局何をする仕事?」そんな疑問に答える、未経験者のための確かなガイドブックが登場!
本書は、ベストセラー「インフラエンジニアの教科書」の著者の佐野裕氏が数多くの未経験者をプロへと育成してきた経験談や、仕事の魅力、具体的なキャリアパス、現場で求められる「リアルなスキル」までを徹底解説。
巻末の付録には、実際の現場で頻繁に発生する課題をクイズ形式で紹介。
現代のIT社会を土台から支えるインフラエンジニアは、極めて重要でありながら、その実態が見えにくい職種です。クラウド全盛の今だからこそ、ネットワークやOSといった不変の基礎知識をどう学ぶべきか、技術の本質を丁寧に解き明かします。
インフラエンジニアを目指している学生や社会人、企業の採用担当者や、学校の就職支援担当者にもおすすめの1冊。エンジニアとしての一歩を踏み出すための、最高の地図がここにあります。
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Posted by ブクログ
インフラエンジニアという仕事への入口
本書は、インフラ技術を深く掘り下げる技術書というより、IT業界を目指す人に「インフラエンジニアという仕事は何なのか」を理解してもらうための地図だと感じた。「用語がわかる!」「概念をつかむ!」「挫折をしない!」という表紙の言葉も、その位置づけで読むと腑に落ちる。特に、インフラエンジニアになったきっかけを四人の経験から紹介する章は、最初から明確な志望を持っていなくても、この職種にたどり着くことがあるという現実的なキャリア像を示している。
自分はインフラエンジニアだったのか
面白かったのは、本書を読んでいるうちに、自分自身のキャリアを別の角度から見直すことになったことだ。私は1992年に社会人になり、当時からEthernetやIP、Internet、Web、ネットワーク管理などに触れてきた。ただ、自分を「インフラエンジニア」と考えたことはなかった。むしろ会社に入った頃には、運用保守だけは絶対に担当したくないと公言していた。それでも本書の職種説明と自分の経験を照合すると、専門分野のすべてを知っているわけではないものの、自分も長い間、インフラという問題領域の中で仕事をしてきたのだと気づかされた。
技術は変わっても問題は変わらない
1990年代から現在までを振り返ると、CMIPからSNMP、X.400からRFC 822系のメール、ATMからEthernet+IP+TCP、X.500からLDAP、そしてSGMLからXML、JSONへと、複雑な仕組みがより実装・運用しやすい仕組みに置き換えられてきた。現在はクラウドやAIが加わり、技術はさらに巨大化している。しかし、ITで繰り返し現れる「つながらない」「遅い」「落ちる」「原因がわからない」「どう復旧するか」といった問題の骨格は、それほど変わっていないように思う。
結果から原因を逆算する
だから、ITを学ぶときに重要なのは、現在存在する技術を覚えるだけではない。その技術が「何の問題を解くために生まれたのか」を考えることだと思う。現在は結果として存在する技術が並んでいるため、なぜそこに至ったのかが見えにくい。目の前の結果から、どのような原因や制約があったのかを逆算する。これはシャーロック・ホームズ的な「逆説的に考える」姿勢であり、インフラのトラブルシューティングにも通じる。
詰将棋としてのインフラ
インフラの仕事には、制約の中で次の一手を考える、詰将棋のような面白さがある。定石を知り、状況に応じて使い分け、定石が通用しなければ別の手を考える。さらに熟練すると、問題を解くだけではなく、監視や手順、構成を設計して、そもそも難しい局面が発生しにくい「問題そのものを解きやすくする」ことまで考えるようになる。これは、パズルを解く能力から、パズルを作る能力への発展ともいえる。
本書を読んで見えてきたもの
本書は、その意味では「インフラエンジニアになるための最初の一冊」であると同時に、読者自身が自分の適性を考えるための一冊でもあると思う。私自身は本書の想定する初学者ではない。それでも、本書をきっかけに、自分はインフラエンジニアではないと思っていたが、実はインフラの設計、構築、運用、保守という世界を長く経験してきたことに気づいた。そして、避けたかったはずの運用保守をよく知っていることが、現在、仕組みや問題を構造的に捉えるコンサルタントとしての自分を支えているのかもしれない。
技術の名前が変わっても、問題を見つけ、原因を考え、制約の中で一手を選ぶという営みは残る。本書を入口として、その先にあるこの面白さまで見えてくると、インフラエンジニアという仕事は、また違った姿を見せてくれる。