あらすじ
婚約者の両親と初めての顔合わせで緊張する美里は、自分が苦手なもののせいで、両親を嫌な気持ちにさせていないかと不安になってしまう。どうすれば自分らしくいられるのかと悩む美里は、東京タワーを写真に撮ろうとしているのか、四苦八苦している青年に出会って言葉を交わす。彼が敬愛するレーモンドさんという建築家が手掛けた「ここにいていいよ」と言ってくれるような場所と聞いて、聖オルバン教会に足を踏み入れた美里は、張り詰めていた気持ちがふっとやわらぐのを感じる(「風が見える教会」)。ピアニストの道を諦めた良治は、娘が楽しくピアノを弾くのをいつも見守っていた。娘のコンクールの下見のため、娘とその友人を連れて音楽センターを訪れた良治は、娘の思いがけない言葉を耳にしてしまう。そんな中、建物そのものに感激している不思議な青年に出会って――(「ホールに満ちる生命の息吹」)。自然との調和を大切にした建築家アントニン・レーモンドの造った場所は、時間を超えて人々の「居場所」となっている。本当に大切なものに気づかせてくれる温かな短編集。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
プロローグに出てきた彼女が主人公なのかなと思っていたら、全く違った件。
各話で主役は入れ替わり、性別も年齢も職業も様々な人が、アントニン・レーモンドの造った建築を通して、自分のことを見つめ直したり、ありのままの自分を受け入れていく物語。
その各話には、レーモンドのことを「レーモンドさん」と呼ぶレーモンド好きの青年が出てくる仕様。
やっぱりプロローグに出てくる彼女ではないという。
彼女の登場は最終盤である。
予想外。
最終的には、レーモンド好きな彼に話は集約。
主役は彼だったということでいいのかな。
仕事で大きな挫折(何しろ他人の命に関わる大きな挫折)を経験した彼もまた、レーモンドの建設を通して、「自分のままでそこにいていい」「そのままの自分でいていい」ということに気付いていく。
作中の登場人物の中ではダントツでしんどい経験をしていた彼が救われる展開で本当によかった。
そして、そう思わせてくれる建築がどんなものなのか、俄然興味を持ちました。
作中に出てくる建物は、実際にある建物ばかりなので、検索して、写真を見ながら読むとより浸れるかと。
読んでいるこちらも癒される物語でした。