あらすじ
あの人と見た桜。時を超え、わたしは曾祖母の秘密と出会った。
高校生の雅美は、亡くなった曾祖母の遺品である鏡台から、自分宛と思しき手紙と一冊の歌集を見つける。手紙に記されていたのは一首の短歌で、かつて雅美が大切な人と見た情景を彷彿とさせるものだった。冊子は作者不明の手製の歌集のようだ。なぜ曾祖母は、自分にこの手紙と歌集を残したのか? 雅美は友人の凜とともに、曾祖母の歌集の秘密を探り始めるが――。短歌を通じて人生が交錯する、切なく優しい記憶の物語。(特別収録:「ベッドひとつぶんの私たち」)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
短歌を通して人の心の温かさが見えて、同時に大きな歴史のうねりに翻弄された人々の切ない過去も見えてくる。名作だった。短歌を手がかりに手紙のミステリーを解き明かすという謎解き要素もあり、最後まで面白く読めた。ベテラン作家さんなので作品にハズレがなく安心感がある。
Posted by ブクログ
短歌が重要なキーとなる中編がふたつ。
『彼の空のユンカース』
高校生の雅美は亡くなった曾祖母の鏡台に隠されていた自分宛ての手紙と、一冊の手書きの歌集をみつける。字は曾祖母のもの。しかも曾祖母は短歌結社に属していたらしい。しかし、歌集には消しゴムで消した跡のある聞いたことのないひとの名前が記されていた。この人は誰なの?そして曾祖母との関係は?
一冊の本から辿り、謎を解いてゆく。
曾祖母と「この人」の人生をひもとき、追体験をする。
NHKの『ファミリーヒストリー』のようなお話だった。
そこに思春期ならではの主人公の悩みも絡む。
上質なヤングアダルト小説のような小説。
***
『ベッドひとつぶんのわたしたち』
主人公・梓は出産の近い妊婦。毎月の定期検診を受けると医師から低置胎盤と診断される。そのままでは母体にも赤ちゃんにも危険なため、出産まで入院することに。
梓には歌人の友人がいて、お見舞いのときに歌集を持ってきてくれる。その歌集を読んでいたら同室の妊婦たちも興味を持ちはじめ……。
こちらも短歌への愛、ひいては書物への愛がたっぷり詰まった一編。
うんうんと頷きながら泣いた。
どちらも、短歌好きでも、短歌にそんなに興味がなくても楽しめると思う。
詠む者にとってはあるあるもあって、ふふふと思う。
あとがきは、ちゃんと本編を読んでから読むのがおすすめ。
Posted by ブクログ
亡くなった曽祖母の遺品の鏡台から出てきた手紙。そこから雅美は友人の凜と一緒にその宛名の主を探すことに…
戦争に徴兵され、それでも短歌を詠み続けた正三(まさみ)。一冊の書き写された歌集が当時の悲惨さを物語っていました。
それでも懸命に生きようとする短歌がとても素敵でした。
友達の凛にも色々と思う所がありつつ、とても良い関係だと思いました。
もう一つの産婦人科病棟で同室になったのをキッカケにやり始めたオンライン短歌会。
散り散りになってもどこかで繋がってたのが嬉しかったです。
Posted by ブクログ
短歌を中心に持ってきたお話し。
曾祖母が亡くなったので荷物を片付けていたら隠すように保管されていた短歌集と短歌が記された手紙が出てきた。
時を遡る恋文?と、ロマンティックだな…なんて思っていたのですが、その手紙の謎を短歌集をもとに調べていくと戦争に行ったのだという悲しいことがわかってきました。
あとがきによると短歌集の歌人は実在の人物だそう。
半分くらいは本当にあったことなのだな…と思うと切ないです。
この本には2話掲載されていました。
体調に問題ありの妊婦さんたちが入院していて、そのメンバーで短歌の歌会を行い仲良くなる。
こちらはほほえましいお話しでした。
短歌を作ったことはないけれど、いいものだなと思いました。