あらすじ
父は共産党活動家、母は玉井組組長の娘。15歳で自らの意思で洗礼を受け、学生運動で検挙された青春時代・・・・・・戦乱と大旱魃のアフガニスタンで90万人以上の命を救い、2019年12月、正体不明の武装集団の凶弾によって命を落とした医師・中村哲とは、いったいどんな人間だったのか。その生涯にわたり中村が巡り合い、深く関わった様々な人びと100人以上に著者はインタビューする。福岡、鹿児島、岡山、静岡、神奈川、東京、パキスタン、そしてアフガニスタンと約5年に及ぶ取材を敢行。群像のなかから鮮やかな「人間・中村哲」の姿を立ち上がらせる。大勢の人生を巻き込み、滔々と流れる大河のような中村哲を源流までさかのぼり、生い立ちから死まで描いた驚くべき本格的評伝、圧巻の452ページ。今こそ読まれるべき「人間・中村」の真実。
【目次】
プロローグ 水が天に昇る谷
第一章 革命の炎
第二章 同志
第三章 浸礼――永遠の別れ
第四章 青春漂流
第五章 失われた世代
第六章 空爆とナン
第七章 冬の陣
第八章 口紅
第九章 カカムラ!
第一〇章 帰還
あとがき 神と出会った人、神になりたかった人
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Posted by ブクログ
【炎と水】 山岡 淳一郎 著
本書は、著者による現地や関係者へのインタビューをもとに、外部から中村哲を浮かび上がらせたノンフィクションです。中村哲の考え・活動に加え、当時の経済・政治動向、関係者の経歴や証言などが多数盛り込まれ、多角的に見ることができます。
医療から井戸掘り、そしてクナール川の灌漑活動と、後半に向けて盛り上がってきます。クナール川の水をガンペリ砂漠に引き込み、人口は3万人から15万人に増え、ここでとれる食料は今や65万人の生活を支えるに至ります。因みに、並行して見たドキュメンタリー映画「良心の実弾~医師・中村哲が遺したもの」では、このビフォー・アフターが映し出されますがこれは圧巻。さらに、「百鬼夜行の街」で身の危険を感じながら事業に邁進したにも拘らず、凶弾に倒れる本書の最終章も圧巻です。
中村哲は、村民が意見を出し合いながら長老が差配する「民主的な」現地事情をわきまえずに多くの混乱を生じさせる「三つのU(USA、UK、UN)が嫌い」だったと言います。一方、JICA理事長だった緒方貞子とは意見を戦わせる相手ながら、JICAとの共同事業は良好で、国ごとに異なる状況に合わせる重要性を知らされました。
最終章では、日本に戻った元メンバーが、「こんなに水と緑があふれた国ってないですよ」と呟きますが、ここまで読むと納得できます。また、ガンペリ砂漠の灌漑工事には、江戸時代に構築された中村哲の地元・山田堰を参考にしたそうですが、中村哲の事績のみならず、先人の知恵や日本とは異なる現地事情など、さまざまに考えさせられた一冊です。